30 / 34
松川紗希の混沌
貴方の逢瀬の裏
しおりを挟む
それから航と梨奈さんは頻繁に密会を重ねていったのだが、私たちもその情事を確認するたび、暗黙の了解と言わんばかりに互いの身体に快楽を与えあうことが当たり前になっていった。
初めて浩介さんと身体を重ねてしまった日は自責の念が生まれていたが、先に間違いを犯したのは航の方じゃないかと思ってしまうと、罪の意識が遠のいてしまう。しかも、航は梨奈さんと密会を重ねるようになってから、私のことを抱くことがなくなった。この体の疼きを満たしてくれるのは、浩介さんしかいなかったのだ。
最初こそ快楽を感じまいと声をこらえていたが、徐々に行為にも慣れ、行為そのものの快楽を享受することに抵抗がなくなっていった。行為についてはいつも浩介さんが先導してくれていることも相まって、私自身が裏切りをしている感覚が少なかったのも、行為に抵抗がなくなっていった要因なのかもしれない。
私は存外、嘘がうまいようだ。航が私を疑っている様子は見えない。浩介さんもたまにわざと航と同じタイミングを狙って出勤してバレていないか探りを入れているようだが、大丈夫そうだと言っていた。鵜呑みにするのは得策ではないかもしれないが、バレたところでどうせお互い様なのだ。変なところで肝が据わっていた。
「ただいま~」
「おかえり。ご飯できてるよ。紗希が食べたいって言ってたビーフシチュー作ったんだ」
「え、本当に? ありがとう! うれしい。」
今日は航が休みで私は出勤だった。きっと今日も梨奈さんと身体を重ねているはずだ。航は、不貞を働き始めてから少し親切になった。私は、怪訝な顔をせずに、その親切を何も知らないふりで受けとる。しかし、平気なわけではなかった。明日は二人揃っての休日だが、ずっと顔を合わせ平気なふりを続けられる自信がない。急に、泣き出してしまいそうになる時があるのだ。先手を打って、明日の別行動を打診する。
「航、ごめん。明日も仕事手伝ってほしいって言われてて……」
「ああ、気にしないで。サービス業の土日が大変なの、分かってるから」
航が優しく、そして微かに嬉しそうに微笑む。その顔に、胸がチクリと痛んだ。
そして、食事や風呂などの夜の時間を過ごした後の就寝前。航の目を盗んで、浩介さんにメッセージアプリで連絡する。
”明日、一緒に出掛けてくれませんか”
”いいですよ。明日仕事も顔出すくらいで終わりそうなので、会社の近くのホテルにでも行きますか?”
”はい、場所はお任せします。航の会社の周り、めったに行かないからわからないです”
”承知しました。後で場所共有しておきますから。先に行って待っててください。”
浩介さんからすぐに返事が返ってくる。ホテルで会うなんて初めてだ。そもそも、ホテルに行くこと自体が久しぶりで、少しドキドキしてしまう。航にバレないようそっとアプリを閉じ、眠りについた。
初めて浩介さんと身体を重ねてしまった日は自責の念が生まれていたが、先に間違いを犯したのは航の方じゃないかと思ってしまうと、罪の意識が遠のいてしまう。しかも、航は梨奈さんと密会を重ねるようになってから、私のことを抱くことがなくなった。この体の疼きを満たしてくれるのは、浩介さんしかいなかったのだ。
最初こそ快楽を感じまいと声をこらえていたが、徐々に行為にも慣れ、行為そのものの快楽を享受することに抵抗がなくなっていった。行為についてはいつも浩介さんが先導してくれていることも相まって、私自身が裏切りをしている感覚が少なかったのも、行為に抵抗がなくなっていった要因なのかもしれない。
私は存外、嘘がうまいようだ。航が私を疑っている様子は見えない。浩介さんもたまにわざと航と同じタイミングを狙って出勤してバレていないか探りを入れているようだが、大丈夫そうだと言っていた。鵜呑みにするのは得策ではないかもしれないが、バレたところでどうせお互い様なのだ。変なところで肝が据わっていた。
「ただいま~」
「おかえり。ご飯できてるよ。紗希が食べたいって言ってたビーフシチュー作ったんだ」
「え、本当に? ありがとう! うれしい。」
今日は航が休みで私は出勤だった。きっと今日も梨奈さんと身体を重ねているはずだ。航は、不貞を働き始めてから少し親切になった。私は、怪訝な顔をせずに、その親切を何も知らないふりで受けとる。しかし、平気なわけではなかった。明日は二人揃っての休日だが、ずっと顔を合わせ平気なふりを続けられる自信がない。急に、泣き出してしまいそうになる時があるのだ。先手を打って、明日の別行動を打診する。
「航、ごめん。明日も仕事手伝ってほしいって言われてて……」
「ああ、気にしないで。サービス業の土日が大変なの、分かってるから」
航が優しく、そして微かに嬉しそうに微笑む。その顔に、胸がチクリと痛んだ。
そして、食事や風呂などの夜の時間を過ごした後の就寝前。航の目を盗んで、浩介さんにメッセージアプリで連絡する。
”明日、一緒に出掛けてくれませんか”
”いいですよ。明日仕事も顔出すくらいで終わりそうなので、会社の近くのホテルにでも行きますか?”
”はい、場所はお任せします。航の会社の周り、めったに行かないからわからないです”
”承知しました。後で場所共有しておきますから。先に行って待っててください。”
浩介さんからすぐに返事が返ってくる。ホテルで会うなんて初めてだ。そもそも、ホテルに行くこと自体が久しぶりで、少しドキドキしてしまう。航にバレないようそっとアプリを閉じ、眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる