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捕まえた
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そう言われ、女将の目線の先を見ると、離れにしては、なかなかの大きさの建物が見えた。
ふわりと香る、慧くんのライラックの香りに誘われるように、足早にその建物へ近づいていく。
だが、その香りは建物の中から香っているわけではないようだ。
コの字型になっている建物の周囲を周り、開けた中庭とでも呼ぶ場所の先を見れば、その見事な庭園にある池の前で、蓮を見る慧くんがいた。
見付けてしまえば、ゆっくり歩くことなどできなかった。
駆け寄って、慧くんが振り向く前に、この腕に閉じ込めた。
一瞬身体を固め、モゾモゾと身をよじる慧くん。少し腕を緩めれば、向きを変え対面で抱き合う。
すぐに顔を上げ、ほっとするような顔をした。
「慧くん・・・どうした?」
「あ、その・・・よかったと思って。須藤さんで。」
「私じゃないかと思ったのかい?」
「あの、なんとなく少し須藤さんの匂いがしたかな、と思ったんですけど・・・まだハッキリとは匂いも分からなくて・・・もし、違ったらと思ってしまって・・・あの、すみません・・・出来損な、--っ。」
慌てて口に指をあて、続く言葉を遮る。
「ごめんね、今のは私が悪いよ。慧くんは悪くない。慧くんに会えた喜びでいっぱいで、慧くんのことまで考えてなかった。今日の会うためのこの場所のこの時間を抑えるのだって、慧くんがやってくれた。秘書に、”ぬけてるα”と言われてしまったよ。ハハハ。こんな私じゃ、嫌かな?」
ぶんぶんと首を振ってくれる。
「一緒だよ。慧くんは、出来損ないなんかじゃないし、後天性Ωの慧くんが好きだ。」
「~~~っ!はいっ!ウグッ・・・」
俺に顔をうずめて泣いている慧くんが可愛い。
やっとやっと捕まえた。
ふわりと香る、慧くんのライラックの香りに誘われるように、足早にその建物へ近づいていく。
だが、その香りは建物の中から香っているわけではないようだ。
コの字型になっている建物の周囲を周り、開けた中庭とでも呼ぶ場所の先を見れば、その見事な庭園にある池の前で、蓮を見る慧くんがいた。
見付けてしまえば、ゆっくり歩くことなどできなかった。
駆け寄って、慧くんが振り向く前に、この腕に閉じ込めた。
一瞬身体を固め、モゾモゾと身をよじる慧くん。少し腕を緩めれば、向きを変え対面で抱き合う。
すぐに顔を上げ、ほっとするような顔をした。
「慧くん・・・どうした?」
「あ、その・・・よかったと思って。須藤さんで。」
「私じゃないかと思ったのかい?」
「あの、なんとなく少し須藤さんの匂いがしたかな、と思ったんですけど・・・まだハッキリとは匂いも分からなくて・・・もし、違ったらと思ってしまって・・・あの、すみません・・・出来損な、--っ。」
慌てて口に指をあて、続く言葉を遮る。
「ごめんね、今のは私が悪いよ。慧くんは悪くない。慧くんに会えた喜びでいっぱいで、慧くんのことまで考えてなかった。今日の会うためのこの場所のこの時間を抑えるのだって、慧くんがやってくれた。秘書に、”ぬけてるα”と言われてしまったよ。ハハハ。こんな私じゃ、嫌かな?」
ぶんぶんと首を振ってくれる。
「一緒だよ。慧くんは、出来損ないなんかじゃないし、後天性Ωの慧くんが好きだ。」
「~~~っ!はいっ!ウグッ・・・」
俺に顔をうずめて泣いている慧くんが可愛い。
やっとやっと捕まえた。
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