14 / 91
介護保険拒否編
在宅介護、介護保険拒否編 1話
しおりを挟む
電子書籍で出した介護体験本は食事排泄などカテゴリー分けして書き記した。今回は時系列順に日々の生活を振り返っていきたいと思う。
父は何度も入院した。父の人生は危篤状態を何度も繰り返し、何度も復活する。体が弱いのか強いのかよくわからない人だった。
俺が実家に帰ってからほとんど入院していたので、介護を手伝ってもらった記憶はない。
問題は母が一人暮らしに近い状態だったことだ。
嫌な予感がして実家に帰ってみると冷蔵庫の中に食パンがぎっしり詰まっている。
母は足首を痛め外出を控えていた。偽痛風、ムカデに噛まれることも何度もあった。
異様だった。奥の方の食パンはカビが生えている。
「これでいつまででもいける」
と本人は言っている。カビを取ったら食べられるというのだ。
もちろんだめだ。
俺にも将来があった。俺だけの問題じゃないので詳しくは書けないが、恋愛は全て諦めた。大学については、そこそこ成績が良く研究者の道に誘われることもあった。だが諦めるしかなかった。
大学3年生の頃には、母に対しても介護保険の認定を早めに済ませておく事を何度も勧めていた。だが母は「私にはいらない」と断り続けた。 2013年まで介護認定を断り続ける。トータル10年、実家に戻ってから8年介護保険を断り続けた 。病院で頭の検査もしなかった。
親子喧嘩は絶えなかった。ちょっとしたことで興奮する。カビだらけの食パンを捨てようとしても興奮する。腐った肉を捨てようとしても「まだまだ食べられる! 火をいれたらいける!」焼いてもダメ、煮込んでも臭い灰汁が出続ける。見てないうちに捨てる。
「さっさと病院に行け!!」
こちらも興奮して怒鳴りつけてしまう。
「ああ!!? お前、この年寄りの親に手でもあげるんか!! やれるもんだったらやってみぃ!!」
冷静に話しても、怒鳴っても結果は変わらない。認知症の診断は2010年まで出ていない。
この頃ひどかったのが原付による徘徊だった。年に6回、4時間ぐらい帰ってこれなくなる。帰り道がわからなくなるのだ。そろそろ警察にでも連絡するかと思っていると、傷だらけで帰ってくる。ブレーキレバーが曲がっている。明らかにどこかで転んでいる。
「私は絶対ボケぇへん」
見事にボケていた。専門用語で「病識がない」病気であることを自覚し意識できないのだ。
些細なことで怒る。皿を洗っても泡だらけになる。すすげない。よく見ると蛇口の先に洗剤がついている。すすいでもでも意味がない。
瞬間湯沸かし器を使っても止め方が分からなくなる。水道の蛇口をひねっても止め方がわからなくなる。日常生活動作はだんだんできなくなっていく。家事全般は俺の仕事になる。だが見ている前で本人の仕事をやり直すと不機嫌になる泡だらけの皿を洗い直しても本人が怒り始める。本人が動くたびにこちらの仕事は増えていく。
父は何度も入院した。父の人生は危篤状態を何度も繰り返し、何度も復活する。体が弱いのか強いのかよくわからない人だった。
俺が実家に帰ってからほとんど入院していたので、介護を手伝ってもらった記憶はない。
問題は母が一人暮らしに近い状態だったことだ。
嫌な予感がして実家に帰ってみると冷蔵庫の中に食パンがぎっしり詰まっている。
母は足首を痛め外出を控えていた。偽痛風、ムカデに噛まれることも何度もあった。
異様だった。奥の方の食パンはカビが生えている。
「これでいつまででもいける」
と本人は言っている。カビを取ったら食べられるというのだ。
もちろんだめだ。
俺にも将来があった。俺だけの問題じゃないので詳しくは書けないが、恋愛は全て諦めた。大学については、そこそこ成績が良く研究者の道に誘われることもあった。だが諦めるしかなかった。
大学3年生の頃には、母に対しても介護保険の認定を早めに済ませておく事を何度も勧めていた。だが母は「私にはいらない」と断り続けた。 2013年まで介護認定を断り続ける。トータル10年、実家に戻ってから8年介護保険を断り続けた 。病院で頭の検査もしなかった。
親子喧嘩は絶えなかった。ちょっとしたことで興奮する。カビだらけの食パンを捨てようとしても興奮する。腐った肉を捨てようとしても「まだまだ食べられる! 火をいれたらいける!」焼いてもダメ、煮込んでも臭い灰汁が出続ける。見てないうちに捨てる。
「さっさと病院に行け!!」
こちらも興奮して怒鳴りつけてしまう。
「ああ!!? お前、この年寄りの親に手でもあげるんか!! やれるもんだったらやってみぃ!!」
冷静に話しても、怒鳴っても結果は変わらない。認知症の診断は2010年まで出ていない。
この頃ひどかったのが原付による徘徊だった。年に6回、4時間ぐらい帰ってこれなくなる。帰り道がわからなくなるのだ。そろそろ警察にでも連絡するかと思っていると、傷だらけで帰ってくる。ブレーキレバーが曲がっている。明らかにどこかで転んでいる。
「私は絶対ボケぇへん」
見事にボケていた。専門用語で「病識がない」病気であることを自覚し意識できないのだ。
些細なことで怒る。皿を洗っても泡だらけになる。すすげない。よく見ると蛇口の先に洗剤がついている。すすいでもでも意味がない。
瞬間湯沸かし器を使っても止め方が分からなくなる。水道の蛇口をひねっても止め方がわからなくなる。日常生活動作はだんだんできなくなっていく。家事全般は俺の仕事になる。だが見ている前で本人の仕事をやり直すと不機嫌になる泡だらけの皿を洗い直しても本人が怒り始める。本人が動くたびにこちらの仕事は増えていく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる