実話!親ガチャ大失敗!夜逃げ中に生まれて捨てられ老夫婦に育てられた俺はワンオペ認知症介護で人生詰んでます!転生ざまぁはいつですか!

他山小石

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介護保険拒否編

在宅介護、介護保険拒否編 3話

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 仕事やアルバイトも何度変わっただろう。身バレ回避のために伏せるが。
 肉体労働系の仕事が多かったように思う。仕事を求めて色んな所に行ったが「若いのに」と侮蔑したような視線を向けられ、足元を見られる。「何でもできるでしょ」そして紹介された場所は残業代が出なかったり、床板の一部が腐って穴が開き雨漏りするトラックに乗せられて営業所を回ったり、フロントガラスにヒビが入った軽自動車に乗せられたり。一番ひどかったのは休憩どころか、食事の時間もなかったところだ。各自それぞれ自由に食事を取ればいい、取れなければ「時間管理が悪い」ということだ。無茶苦茶だ。
 マシな部類もあったが、人材の入れ替わりが激しく、まともじゃない職場にはとんでもない人材も集まる。のちに俺のストーカーになるメンヘラのヘラくんだ。知能指数70台、漫画すら読めないそうだ。知能が低いからダメとは言わない。学習できないので、ダメな部分を修正できないのがダメなのだ。

 母の身の回りの生活を毎日する。食事は特に困った。本人の歯茎が悪くなりすぎて固いものが食べられない。毎朝、食パンとジャムを食べるが、卵料理とトマトも食べる。そのトマトの皮が噛みきれないというのだ。仕方がないので毎日湯むきをした。料理をされる方はご存知かもしれないが、湯むきというのは表面に切れ目を入れたトマトを数秒間熱湯にくぐらせて皮を剥く作業だ。毎日はめんどくさい。昼も夜も出来る限り噛み切れるメニューを選んで作る。
 父が入院しているので差し入れ等も持っていく。 「構わんから俺の年金は母ちゃんのために使えよ」父は子供ができなかったことで周囲に責められた母を庇い慰めてきた人だ。昔の写真を見れば二人が旅行中に温泉街で抱き合って写っている。本人は体が思うように動かなくなって母の世話ができないことを悔やんでた。
 おじさんのところにもいった。閉鎖病棟の中で会いに来てくれる人はほとんどいない。「最近兄さんも姉さんもどうしたんや」事情を説明した。

 このおじさんは年々症状がひどくなって1日の7割方頭がおかしくなっていた。訪ねても妄想を延々繰り返す時間の方が長かった。なので近づく人はほとんどいない。「親戚の誰誰に借金がある。返してくれん」などと作り話もするようになっていた。それでも幼い頃にいろんなことを教えてくれた優しい大人の一人だった 。まともな叔父さんと会話できる時は少なかった。叔父さんもすぐに亡くなった。父の兄弟は8人だったか、家族に見放されていた人は何人かいる。葬式、納骨を誰がするのかでもめることもあった。叔父さんが亡くなった頃、我が家には墓がなかったので父方の跡取りさんが仕切ったと聞いている。
「俺の人生なんだったんだろう」
「叔父さんと暮らしてた時は楽しかったですよ」
「そんなん言ってくれるのお前ぐらいや」
「うちの(母方)爺さんと縁側で一緒にソラマメむいて、サイダー飲みながら昔の歌うたってるとき、楽しかったです」
「爺さんええ人やったなぁ」
 涙もろくなっていたようで、思いで話をすると泣いてしまう。年老いても思い返せる思い出になれてよかった。今となっては亡くなって障害者手帳を返納する前にとった写真や我が家で使っていた足につける補装具、尿瓶ぐらいしか叔父さんの生きていた痕跡は残っていない。俺が覚えていなければ叔父さんの思い出は消えてしまう。
 5、6歳ぐらいから11歳ごろまで一緒に過ごした叔父さん。タバコでボヤをおこした後しばらくタバコを禁止されていた。
 小声で「小石」と呼んで指でタバコスパスパのサインする。幼い俺はニヤニヤしながら父のタバコを少し拝借して持って行ったり。共犯になって悪戯する憎めない人だった。
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