1 / 1
いせかいへ
しおりを挟む
暑い。
今日は日曜日。
外に出る予定はない。
タクマはベッドで横になり、前に友達が言っていた話しを思い出す。
「学校のF棟の屋上から飛び降りると異世界へ行ける…………か」
(くだらないなぁ………)
今、学校中がその噂でもちきりだが実際に信じている人なんて誰もいない。
事実、実行した人もいない。
(誰が流した噂だよ……)
横にあった携帯を手に取り、Twitterを開く。
タイムラインもその話題ばかりだ。
他校の生徒もその話に食いついている。
(つまんな。そんなに興味あるなら誰か試してみろよ。まったく)
(……………………………)
「異世界ねぇ………」
無心でTwitterの最終更新をスクロールし続ける。
何か思いついたように画面を見つめる。
Twitterを閉じ、検索可能なアプリを開く。
「異世界………異世界………」
異世界【検索】
ポチッ
《異世界は現実世界にいないモンスターが!》
《異世界に行けば王子様になれる!》
《異世界では魔法を使い放題!》
《Re:ゼロから始める異世界生活》
《異世界では女の子と遊び放題!》
………………
……………
…………
………
永遠とスクロールできそうなほどの記事が出てくる。
「へぇ異世界ねぇ………」
これまでの人生、普通に勉強し、普通に食事をして、普通に友達と学校生活を送ってきたタクマからすれば、なんとも面白く魅了させられるものばかりだ。
スクロールしていると、あるサイトが目に入る。
《異世界へ行けるスポット》
興味が湧き、タップしてみる。
するとそこには自分の通っている高校、J高校の記事があった。
噂されている内容と全く同じだ。
「まったく、このサイトの管理人がJ高校の噂の発信源かよ」
管理人のプロフィールからブログへ飛ぶURLがある。
文句をつけたくなったのでブログのサイトを開く。
画像が多いのかサイトが開くのが遅い。
苛立ちながらも8分待った。
どうしても文句を言ってやりたかったのだろう。
すると急にサイトが軽くなり画像が見れるようになっていく。
そこには現実では見たことない景色が広がっていた。
血の色をした無限に広がる海。
黄金に輝く山々。
マグマの風呂を浴びる人々。
背中に翼を生やし空を飛ぶ者。
タクマは必死に目を凝らし画像をみる。
どれもこれもコラージュされた画像には見えない。
その時タクマは、この世界へ行きたい。、と思ってしまった。
一時間後、私服に着替え、必要になりそうな物を揃え、リュックに入れ家の玄関を出る。
何を思ったか友達にこのことは伝えない。
今思えば独り占めしたかったのかもしれない。
日曜日なので学校には教師はほとんどいない。いても職員室にいる。
バレないように校舎に入る。
素早く廊下を駆け、今までにないくらい急いで階段を上る。
(きた………ここが異世界へ行ける場所…………)
申し訳程度に立ち入り禁止の紙が貼られている。
そんなこと知ったことではない。
ドアを開け、外へ出る。
雲ひとつなくとても暑いはずなのに、あまりストレスも感じない。
「確かここが飛び降りるポイント…………」
日照りを浴びた熱された手すりを持ち、下を覗く。
思っていたよりもずっと高い。
花壇はあるが落ちてしまえば無事ではないだろう。
足がすくむ。
「こえぇ……でも……」
あと一歩で落ちてしまうところに立つ。
携帯を開きもう一度画像を見る。
「よし!」
決心を決めた。
ふぅーーー!!
大きく息を飲む。
「J高校!2年3組!斧坂タクマ!絶対に異世界へ行く!」
大声で叫ぶ。部活動中の生徒に見られたかもしれない。
「頼むぞ俺!頼むぞ俺!」
スッと前のめりになる。
さっきよりも下がよく見える。
花壇が近づいてくる。
もう目の前だ。
あぁ、これ、ダメなやつじゃん。
怖くなり目を閉じた。
グチャッ
すごく痛い。
身体の節々が痛い。
お腹がすごく熱い。
血が出ているのだろう。
目を開くとそこは花壇。
いつも見ている学校の花壇。
立ち上がることができない。
異世界になんて行けていない。
さっきまで見ていた携帯が横に転がっている。
画像より下にまだスクロールできていたみたいだ。
画像に熱中して気づかなかったのか。
朦朧としながら画面を覗き見る。
『異世界なんてものは存在しません。』
『これは僕が頑張って作ったコラ画像です。』
『異世界にいけるだなんて考えないでくださいね』
「なんだよ………くだらないなぁ」
僕は死んだ。
終わり
今日は日曜日。
外に出る予定はない。
タクマはベッドで横になり、前に友達が言っていた話しを思い出す。
「学校のF棟の屋上から飛び降りると異世界へ行ける…………か」
(くだらないなぁ………)
今、学校中がその噂でもちきりだが実際に信じている人なんて誰もいない。
事実、実行した人もいない。
(誰が流した噂だよ……)
横にあった携帯を手に取り、Twitterを開く。
タイムラインもその話題ばかりだ。
他校の生徒もその話に食いついている。
(つまんな。そんなに興味あるなら誰か試してみろよ。まったく)
(……………………………)
「異世界ねぇ………」
無心でTwitterの最終更新をスクロールし続ける。
何か思いついたように画面を見つめる。
Twitterを閉じ、検索可能なアプリを開く。
「異世界………異世界………」
異世界【検索】
ポチッ
《異世界は現実世界にいないモンスターが!》
《異世界に行けば王子様になれる!》
《異世界では魔法を使い放題!》
《Re:ゼロから始める異世界生活》
《異世界では女の子と遊び放題!》
………………
……………
…………
………
永遠とスクロールできそうなほどの記事が出てくる。
「へぇ異世界ねぇ………」
これまでの人生、普通に勉強し、普通に食事をして、普通に友達と学校生活を送ってきたタクマからすれば、なんとも面白く魅了させられるものばかりだ。
スクロールしていると、あるサイトが目に入る。
《異世界へ行けるスポット》
興味が湧き、タップしてみる。
するとそこには自分の通っている高校、J高校の記事があった。
噂されている内容と全く同じだ。
「まったく、このサイトの管理人がJ高校の噂の発信源かよ」
管理人のプロフィールからブログへ飛ぶURLがある。
文句をつけたくなったのでブログのサイトを開く。
画像が多いのかサイトが開くのが遅い。
苛立ちながらも8分待った。
どうしても文句を言ってやりたかったのだろう。
すると急にサイトが軽くなり画像が見れるようになっていく。
そこには現実では見たことない景色が広がっていた。
血の色をした無限に広がる海。
黄金に輝く山々。
マグマの風呂を浴びる人々。
背中に翼を生やし空を飛ぶ者。
タクマは必死に目を凝らし画像をみる。
どれもこれもコラージュされた画像には見えない。
その時タクマは、この世界へ行きたい。、と思ってしまった。
一時間後、私服に着替え、必要になりそうな物を揃え、リュックに入れ家の玄関を出る。
何を思ったか友達にこのことは伝えない。
今思えば独り占めしたかったのかもしれない。
日曜日なので学校には教師はほとんどいない。いても職員室にいる。
バレないように校舎に入る。
素早く廊下を駆け、今までにないくらい急いで階段を上る。
(きた………ここが異世界へ行ける場所…………)
申し訳程度に立ち入り禁止の紙が貼られている。
そんなこと知ったことではない。
ドアを開け、外へ出る。
雲ひとつなくとても暑いはずなのに、あまりストレスも感じない。
「確かここが飛び降りるポイント…………」
日照りを浴びた熱された手すりを持ち、下を覗く。
思っていたよりもずっと高い。
花壇はあるが落ちてしまえば無事ではないだろう。
足がすくむ。
「こえぇ……でも……」
あと一歩で落ちてしまうところに立つ。
携帯を開きもう一度画像を見る。
「よし!」
決心を決めた。
ふぅーーー!!
大きく息を飲む。
「J高校!2年3組!斧坂タクマ!絶対に異世界へ行く!」
大声で叫ぶ。部活動中の生徒に見られたかもしれない。
「頼むぞ俺!頼むぞ俺!」
スッと前のめりになる。
さっきよりも下がよく見える。
花壇が近づいてくる。
もう目の前だ。
あぁ、これ、ダメなやつじゃん。
怖くなり目を閉じた。
グチャッ
すごく痛い。
身体の節々が痛い。
お腹がすごく熱い。
血が出ているのだろう。
目を開くとそこは花壇。
いつも見ている学校の花壇。
立ち上がることができない。
異世界になんて行けていない。
さっきまで見ていた携帯が横に転がっている。
画像より下にまだスクロールできていたみたいだ。
画像に熱中して気づかなかったのか。
朦朧としながら画面を覗き見る。
『異世界なんてものは存在しません。』
『これは僕が頑張って作ったコラ画像です。』
『異世界にいけるだなんて考えないでくださいね』
「なんだよ………くだらないなぁ」
僕は死んだ。
終わり
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる