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第2章
明晰夢
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目を開けると、目の前に沢山の人の顔があった。相当驚いていたのだが、固まったまま無意識に涙が溢れてきただけだった。
いつも静かなはずの保健室も、今は教室並みに騒々しかった。さっきまで、物音1つ感じられなかった耳に、騒がしさが飛び込んできた。
「ローラ!大丈夫!?」
プリシラの声が聞こえた。あっちの方には、ディアナもいる。
考え込んでいたら、いつの間にか倒れていたらしい。夢も見たのだが、記憶にもやがかかったように思い出せない。
─夢を見た…?
なぜ夢を見たのだろう。
実際、夢の中での夢というシチュエーションは、この間もあった気がする。
しかし、この間とは訳が違う。今回の場合は、内容が思い出せないのだ。
「大丈夫~?ほら、血圧図るから、皆ちょっとどいて~。少し休んでから、お昼にしよっか。」
保健の先生が、いつもの柔らか~い口調で近づいてくる。
血圧を図る事や、皆が全然どかない事など、今の私にとって、もはやどうでも良いのだ。気になる事なら、他に盛り沢山ある。
いつもなら、夢も現実も、内容は鮮明に覚えている。なのに、今はなぜ思い出せない?先程までも、睡眠状態とあまり変わりはなかったはず。それに、寝ている時と同じように夢を見た。
いつの間にか、先生は全ての生徒の間を縫い、見事、私に辿り着いていた。
「はい、腕捲って。」
先生の指示に従いながら、私は戯れている皆を見渡した。
「大丈夫だから、皆お昼食べに行ったら?」
全員が昼食の存在を忘れていたらしく、皆が皆お腹を抑え始めたので、私は思わず笑ってしまった。しかし、その瞬間、私のお腹も元気を取り戻したらしい。ぐ~という鈍い音が、誰よりも大きな音で、保健室に響いた。
15分程経ち、最後の見舞い客が戻って行った。私も、これでようやく気兼ねなく昼食にありつける。お弁当は、ここへ来るときに、プリシラが持って来てくれたらしい。
お弁当箱に手を伸ばすと、ふと本棚にあった1冊の本に目が留まった。
「明晰夢…?」
「あぁ、それね~。なかなか珍しい本でしょう?ずいぶん前だけど、それについて卒業論文を書いた人が、置いてったんだ~。」
「その人が書いたんですか?」
「いや、その子が、論文を書くのに参考にしたってだけみたいよ~。その本、一応読んでみたけど、私もよくわかんなかったわぁ。」
先生は苦笑いをしながらも、一応私にその本を薦めてくれた。それは、名前からして、見た事も聞いた事もないものだった。
そして、これを読めば、何かわかるかもしれないと、私の第六感が言っているようだった。
無意識にその本を手に取ると、気付けば、待ち焦がれていたはずの昼食をそっちのけに、本に読み耽っていた。
「明晰夢」それは、ここが夢の中だと認識しながら、夢を見るという事。夢の中での行動や状況を、自分の意志で操る事も出来る。感覚は、現実で生きている時と全く同じである。まさに第2の人生と言っても、過言ではない。
これが明晰夢だと知らないまま、明晰夢を見ている人が多いという事。そして、元々出来ない人でも、練習すれば見られるようになる事もあるという事。そして、その有名な練習法など…その他、色々な事が書いてあった。
私は今、その本を抱えながら、廊下を全力疾走している最中だ。昼食を10分足らずで詰め込み、残りの3分で教室まで辿り着かなくては、次の授業が始まってしまう。時間を忘れて、本に夢中になってしまっていたのだ。
頭の中は、もう明晰夢の事でいっぱいだった。他に考えられそうな事は何1つなく、きっと次の授業も、頭に入っては来ないだろう。
これでようやく、なぜ私の中に2つの生き方が存在したのか、明らかになった。そしていつか、どちらが本物の「夢」で、どちらが本物の「現実」なのかもわかるだろう。
そんな思いを巡らせながら、手がかりを大事に抱え込み、私は教室へと戻って行った。
いつも静かなはずの保健室も、今は教室並みに騒々しかった。さっきまで、物音1つ感じられなかった耳に、騒がしさが飛び込んできた。
「ローラ!大丈夫!?」
プリシラの声が聞こえた。あっちの方には、ディアナもいる。
考え込んでいたら、いつの間にか倒れていたらしい。夢も見たのだが、記憶にもやがかかったように思い出せない。
─夢を見た…?
なぜ夢を見たのだろう。
実際、夢の中での夢というシチュエーションは、この間もあった気がする。
しかし、この間とは訳が違う。今回の場合は、内容が思い出せないのだ。
「大丈夫~?ほら、血圧図るから、皆ちょっとどいて~。少し休んでから、お昼にしよっか。」
保健の先生が、いつもの柔らか~い口調で近づいてくる。
血圧を図る事や、皆が全然どかない事など、今の私にとって、もはやどうでも良いのだ。気になる事なら、他に盛り沢山ある。
いつもなら、夢も現実も、内容は鮮明に覚えている。なのに、今はなぜ思い出せない?先程までも、睡眠状態とあまり変わりはなかったはず。それに、寝ている時と同じように夢を見た。
いつの間にか、先生は全ての生徒の間を縫い、見事、私に辿り着いていた。
「はい、腕捲って。」
先生の指示に従いながら、私は戯れている皆を見渡した。
「大丈夫だから、皆お昼食べに行ったら?」
全員が昼食の存在を忘れていたらしく、皆が皆お腹を抑え始めたので、私は思わず笑ってしまった。しかし、その瞬間、私のお腹も元気を取り戻したらしい。ぐ~という鈍い音が、誰よりも大きな音で、保健室に響いた。
15分程経ち、最後の見舞い客が戻って行った。私も、これでようやく気兼ねなく昼食にありつける。お弁当は、ここへ来るときに、プリシラが持って来てくれたらしい。
お弁当箱に手を伸ばすと、ふと本棚にあった1冊の本に目が留まった。
「明晰夢…?」
「あぁ、それね~。なかなか珍しい本でしょう?ずいぶん前だけど、それについて卒業論文を書いた人が、置いてったんだ~。」
「その人が書いたんですか?」
「いや、その子が、論文を書くのに参考にしたってだけみたいよ~。その本、一応読んでみたけど、私もよくわかんなかったわぁ。」
先生は苦笑いをしながらも、一応私にその本を薦めてくれた。それは、名前からして、見た事も聞いた事もないものだった。
そして、これを読めば、何かわかるかもしれないと、私の第六感が言っているようだった。
無意識にその本を手に取ると、気付けば、待ち焦がれていたはずの昼食をそっちのけに、本に読み耽っていた。
「明晰夢」それは、ここが夢の中だと認識しながら、夢を見るという事。夢の中での行動や状況を、自分の意志で操る事も出来る。感覚は、現実で生きている時と全く同じである。まさに第2の人生と言っても、過言ではない。
これが明晰夢だと知らないまま、明晰夢を見ている人が多いという事。そして、元々出来ない人でも、練習すれば見られるようになる事もあるという事。そして、その有名な練習法など…その他、色々な事が書いてあった。
私は今、その本を抱えながら、廊下を全力疾走している最中だ。昼食を10分足らずで詰め込み、残りの3分で教室まで辿り着かなくては、次の授業が始まってしまう。時間を忘れて、本に夢中になってしまっていたのだ。
頭の中は、もう明晰夢の事でいっぱいだった。他に考えられそうな事は何1つなく、きっと次の授業も、頭に入っては来ないだろう。
これでようやく、なぜ私の中に2つの生き方が存在したのか、明らかになった。そしていつか、どちらが本物の「夢」で、どちらが本物の「現実」なのかもわかるだろう。
そんな思いを巡らせながら、手がかりを大事に抱え込み、私は教室へと戻って行った。
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