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第2章
さよなら、私のワンダーランド
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お兄ちゃんが何を言っているのか、私にはわからなかった。そして、これから何を言い出すのかも、わからなかった。流れのままに聞いてみたけれど、どんな返答が返ってきても、受け入れられる状態ではなかった。
しかし、私の感情がまとまらないまま、お兄ちゃんはゆっくりと話し出した。
「ここは、お前が創り出したそうぞう世界。創る方の創造でもあり、空想する方の想像でもある。だから当然、この世界の登場人物達は、全てお前が創り出したもの。そのほとんどは、お前が望むままに設定した架空の人物。でも、お前はその中に、俺の事までも創り出していた。そう、唯一の実在した人物として。そして、お前は俺の事を、現実世界そのままに表そうとした。少しでも、『兄の死』という現実から遠ざける為にな。」
「お兄ちゃんの死……現実から遠ざける為に…?それで、なんでお兄ちゃんは、私の夢に飛び込んだの?そもそも、夢に飛び込むなんて…」
「ああ、あまりにも無謀すぎた。本来そんな事をすれば、死人にとって、いつまでもこの世に未練を残している事になる。でも、それに引き換えてでも、お前の寂しさが紛れるなら、それで良かった…だから、お前の創り出した虚像の肉体に、魂だけで入り込んだんだ。」
ますます訳がわからなくなってきた。
この世に未練を残している、虚像の肉体、魂だけで入り込んだんだ……とんでもない事を言っているのはよく理解出来るが、肝心な内容と来たら、わかるようでわからない。
「そうなる事も無理はない。そりゃあ、聞き慣れない上にとんでもない事を言ってるのは、こっちだって承知だ。だけど、俺と他の登場人物達との決定的な違いが、ちゃんとある。ローラ、いや、アリス。俺がアリスの望み通りに行動しなかった事は、何回ぐらいあったか?」
「えっ!?えっとー……えぇー!?数え切れないって!」
「じゃあ、俺以外の登場人物達が、アリスの望みに背いた事は?」
「それは、あの王様がしょっちゅう…!」
「あぁ、そうだった…なら、言い方を変える。登場人物達の行動で、アリスが本気で傷付いたり、登場人物達が思ってもいない行動に出た事は、どれぐらいあった?」
「……ない…1回もない…!」
言われてみれば、そんな事は1度もなかった。いくら遡っても、この世界の登場人物達は、いつでも私の理想の形のまま行動し、楽しませてくれていた。
改めて誰かに問われると、今まで当たり前のように過ごしてきた中で起こっていた、様々な事に気付かされる。
「散々狂わされて来ただろうけど、何だかんだ言って、楽しませて貰ってたんだろ?自分自身が楽しめるような、そういう設定にしてたんだろ?登場人物達は、お前の設定した通りにしか行動しないからな。それに対して、俺は何度もアリスと言い合ったし、喧嘩もした。それが出来たのは、周りのキャラクター達と違って、俺には『意思』があったからだ。お前が生み出した虚像に魂を宿し、夢の中での俺に『意思』が生まれた。そのおかげで、俺とアリスは現実世界と同じように生活も出来たし、ぶつかり合う事も出来たんだ。」
「そっか。お兄ちゃんは、お兄ちゃん自身だったんだね。だから安心出来たんだ…私が創り出した虚像なんかじゃなくて、本物だったから…!」
「今思うと、俺がそこまでする必要は、なかったのかもしれない…お前が夢現を逆転させてしまったのも、そのせいだからな…」
「でも、結果的には……良かった…って事で良いんじゃないの?」
少ししぼんでしまったお兄ちゃんの肩に手を置いて、私は笑顔で話しかけた。これ程の笑顔になったのは、ずいぶんと久し振りのように感じられた。実際、心からの笑顔は、本当に久し振りだった。
それを見たお兄ちゃんは、驚いたような顔で、私を見つめている。
勢力逆転、攻手交代だ。
「だって、こんなに幸せな夢を見られたのって、お兄ちゃんのおかげじゃない!本来なら、死んじゃった人にはもう会えないでしょ?でも、私の場合は違った。夢の中だけど、限りなく現実に近い状況で、本物のお兄ちゃんに会えた。それも、お兄ちゃんが、私の夢に飛び込んでくれたからだもん!」
「ローラ…」
お兄ちゃんは私の名前を口にした後、これ以上何も言えない様子だった。
しかし、その裏には、まだ何か重大な事を抱えているように伺えた。なぜだかわからないが、私にはその「重大な事」が一体何なのかが理解する事が出来た。
「私、もう大丈夫。だから…心配しないで?」
「……ありがとう、ローラ……いつでも、ここに遊びに来れば良いよ…」
「こちらこそ、本当にありがとう……カルロお兄ちゃん…」
お互いの手と手を合わせ、最高の笑顔で笑い合った後、2人で静かに目を閉じた。
そして、数秒後。
ゆっくり目を開けると、そこにはもう、お兄ちゃんの姿はなかった。
「あぁ…楽しい夢だった……さよなら、私のワンダーランド…」
しかし、私の感情がまとまらないまま、お兄ちゃんはゆっくりと話し出した。
「ここは、お前が創り出したそうぞう世界。創る方の創造でもあり、空想する方の想像でもある。だから当然、この世界の登場人物達は、全てお前が創り出したもの。そのほとんどは、お前が望むままに設定した架空の人物。でも、お前はその中に、俺の事までも創り出していた。そう、唯一の実在した人物として。そして、お前は俺の事を、現実世界そのままに表そうとした。少しでも、『兄の死』という現実から遠ざける為にな。」
「お兄ちゃんの死……現実から遠ざける為に…?それで、なんでお兄ちゃんは、私の夢に飛び込んだの?そもそも、夢に飛び込むなんて…」
「ああ、あまりにも無謀すぎた。本来そんな事をすれば、死人にとって、いつまでもこの世に未練を残している事になる。でも、それに引き換えてでも、お前の寂しさが紛れるなら、それで良かった…だから、お前の創り出した虚像の肉体に、魂だけで入り込んだんだ。」
ますます訳がわからなくなってきた。
この世に未練を残している、虚像の肉体、魂だけで入り込んだんだ……とんでもない事を言っているのはよく理解出来るが、肝心な内容と来たら、わかるようでわからない。
「そうなる事も無理はない。そりゃあ、聞き慣れない上にとんでもない事を言ってるのは、こっちだって承知だ。だけど、俺と他の登場人物達との決定的な違いが、ちゃんとある。ローラ、いや、アリス。俺がアリスの望み通りに行動しなかった事は、何回ぐらいあったか?」
「えっ!?えっとー……えぇー!?数え切れないって!」
「じゃあ、俺以外の登場人物達が、アリスの望みに背いた事は?」
「それは、あの王様がしょっちゅう…!」
「あぁ、そうだった…なら、言い方を変える。登場人物達の行動で、アリスが本気で傷付いたり、登場人物達が思ってもいない行動に出た事は、どれぐらいあった?」
「……ない…1回もない…!」
言われてみれば、そんな事は1度もなかった。いくら遡っても、この世界の登場人物達は、いつでも私の理想の形のまま行動し、楽しませてくれていた。
改めて誰かに問われると、今まで当たり前のように過ごしてきた中で起こっていた、様々な事に気付かされる。
「散々狂わされて来ただろうけど、何だかんだ言って、楽しませて貰ってたんだろ?自分自身が楽しめるような、そういう設定にしてたんだろ?登場人物達は、お前の設定した通りにしか行動しないからな。それに対して、俺は何度もアリスと言い合ったし、喧嘩もした。それが出来たのは、周りのキャラクター達と違って、俺には『意思』があったからだ。お前が生み出した虚像に魂を宿し、夢の中での俺に『意思』が生まれた。そのおかげで、俺とアリスは現実世界と同じように生活も出来たし、ぶつかり合う事も出来たんだ。」
「そっか。お兄ちゃんは、お兄ちゃん自身だったんだね。だから安心出来たんだ…私が創り出した虚像なんかじゃなくて、本物だったから…!」
「今思うと、俺がそこまでする必要は、なかったのかもしれない…お前が夢現を逆転させてしまったのも、そのせいだからな…」
「でも、結果的には……良かった…って事で良いんじゃないの?」
少ししぼんでしまったお兄ちゃんの肩に手を置いて、私は笑顔で話しかけた。これ程の笑顔になったのは、ずいぶんと久し振りのように感じられた。実際、心からの笑顔は、本当に久し振りだった。
それを見たお兄ちゃんは、驚いたような顔で、私を見つめている。
勢力逆転、攻手交代だ。
「だって、こんなに幸せな夢を見られたのって、お兄ちゃんのおかげじゃない!本来なら、死んじゃった人にはもう会えないでしょ?でも、私の場合は違った。夢の中だけど、限りなく現実に近い状況で、本物のお兄ちゃんに会えた。それも、お兄ちゃんが、私の夢に飛び込んでくれたからだもん!」
「ローラ…」
お兄ちゃんは私の名前を口にした後、これ以上何も言えない様子だった。
しかし、その裏には、まだ何か重大な事を抱えているように伺えた。なぜだかわからないが、私にはその「重大な事」が一体何なのかが理解する事が出来た。
「私、もう大丈夫。だから…心配しないで?」
「……ありがとう、ローラ……いつでも、ここに遊びに来れば良いよ…」
「こちらこそ、本当にありがとう……カルロお兄ちゃん…」
お互いの手と手を合わせ、最高の笑顔で笑い合った後、2人で静かに目を閉じた。
そして、数秒後。
ゆっくり目を開けると、そこにはもう、お兄ちゃんの姿はなかった。
「あぁ…楽しい夢だった……さよなら、私のワンダーランド…」
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