軽業師は異世界で成り上がる! -アクロバットを極めた俺に攻撃は当たらないー

noaru

文字の大きさ
3 / 10
第一章

宿屋でのいざこざ

しおりを挟む
 

 10分ほど歩き、大通りに立ち並ぶ家々や店の内、アレクさんおすすめの宿屋、ゴルド亭に到着。ここは朝・昼・晩の3食と風呂付なのに、ご飯が上手く、値段が安い冒険者に人気の宿らしい。少し期待しながら中に入る。


 
 店の中はなかなかオシャレだ。あたりを見回していると受付の人から声がかかる。

「ようこそゴルド亭へ。どのくらい泊まられますか?」

「うーん、取り敢えず2日で」

「かしこまりました。1泊銅貨二枚なので4枚頂戴します。お部屋は、二階の一番奥です。」


 鞄が重たくなってきたので先に部屋へ向かう。



** **


 部屋に鞄を置いた後、食堂へ移動すると大勢の冒険者がいた。彼らはこちらを見た後興味を無くしてすぐに目を逸らした。が、数人ニヤニヤしながら俺の様子を窺っている。
 絡まれると面倒なので隅っこの空いてる席に座る。が、そんな俺の行動は虚しく、お酒をのんで気を大きくした数人の酒臭いオッサン達が、ジョッキを片手に近寄ってきた。

「よう坊主。こんなところ何の用だ。酒でも飲みにきたのかァ」

「お前も飲んでみるかぁ、うめえぜここの酒は」

「ほぉら。飲んでみろよ」

と言いながらお酒が入ったグラスを手渡してきた。


「すみません。僕お酒はちょっと・・・」

「なんだとォ。おれのさけが飲めねえのカ、アアァン」

 突然ドンッとテーブルをぶっ叩いたオッサンCは、もの凄い顔になってキレだし殴りかかってきた。何となくこういう展開になるんじゃないかと思っていた俺は余裕で回避する。そして彼は、俺という対象を殴り損ねて見事にテーブルに突っ込む。

 
 彼らはこの店に入った時からニヤニヤした顔で俺を見ていたため、何か企んでいるなと思っていたのだが・・・?何だか体が軽いな、何故だろう。・・・そういえば、この世界にきたときから妙に体が軽かった気がする。
気分が良くなった俺は、思わず手をクイクイとさせながらこう言った。

「ほらほらどうした、かかってこいよ」

「な、なんだとこのヤロォー」ガシャーン。

「て、てんメェー、調子乗ってんじゃネェゾ」パリーン。


 カシャン。カシャン。


「「ぶっとばしてヤルゥー」」

 俺の言葉に怒り狂ったオッサンAとBは、手に持っていたジョッキを投げ捨てる。そして、腰に差した剣を鞘から引き抜き仲良く襲い掛かってきた。この数秒で、騒ぎに気付いた付近の冒険者達がわらわらと集まってくる。

「なんだなんだ。喧嘩か?」「おいおい。剣は不味いだろう」

「いいぞ、やれやれー。」「おい!このバカ、何言ってんだ。この宿にはあの人が・・・ボソボソ」

 食堂内がザワザワし始める。剣か、危ないがさっきの感じなら躱せるだろう。問題はその後だが・・・こいつで頭を殴ればなんとかなんだろ。


 優夜は、転がっていた丸椅子をそっと拾い、応戦した。



「キエー」ヒュン。

 オッサンAが奇声を上げながら右上から斜めに振った剣を、左に踏み込み体勢を低くすることで回避。すれ違いざまに、顔面目掛けて丸椅子をフルスイング。

「おらよ」ドゴッ。

痛そうな音と共に崩れ落ちる。続いて、俺の行動に驚いているオッサンBに、丸椅子を遠心力をかけながら投げつける。

「フンッ」ブンッ。

「え!。ちょっ、ま・・・・・」ガッ。

 どうやら鼻にクリティカルヒットしたみたく、鼻血を流しつつ床に蹲るオッサンB。復活したオッサンCが抜刀した瞬間、凄まじい殺気?を感じ背筋が凍った。それは俺だけではなかったようで、食堂内に居る者全員時が止まったかのように宿の入口付近にいる誰かを見て、ピクリとも動かない。オッサンCに限っては腰を抜かしている、なんともシュールな光景だった。



 そんな中、誰かの呟きが聞こえた。

炎狼えんろうだ」


 それを皮切りに、フリーズしていた冒険者達はその誰かに道をあけながら口々に話し出す。


「ホントだ。炎狼えんろう・・・・・・確か本名は、アレク・ザキアスだ」

炎狼えんろう?誰のことだ?」

「お前、知らないのか。あの人は、この世界に5人しかいないSランク冒険者、炎狼えんろうのアレクさんだ」

「え、Sランクー!!」


何やら気になる話をしている冒険者達の間を通って現れたのは、なんとも以外な人物だった。


「昼間っから騒がしいなあ、飯が不味くなるだろう」

「あ、アレクさん!?」


そう、2時間ほど前に別れたアレクさんだったのだ。


「ん?おお、ユーヤじゃねえか。ちゃんと来れたようだな」

「はい。これのおかげで、迷わずに済みました」

 俺はそう言って彼から貰った地図をひらひらと振る。


「そうか、そりゃ良かった・・・ところでこいつらはどうしたんだ」

「ああ、この人達は・・・・・・・・かくかくしかじか・・・・・・・・襲い掛かって来たんです」


 アレクさんに事情を説明した。彼は、周りの冒険者達に威圧しながら言った。


「おい、お前ら。ここに迷惑かけてねえよなあ。もしそうなら俺がしてやる。」

(絶対説教だけじゃないんだろうなあ、聞くのは怖いから黙っとこ)


「「「「「「「お、俺達はなにもしてないっす。この三人が勝手に・・・・・・・。」」」」」」」


「おう、なら散った散った」


 冒険者達も俺と同じことを思ったらしく、アレクさんの一声で蜘蛛の子を散らすように去っていく。と同時に店員さんが何人かやって来た。警察的な組織に連絡したようで、騎士がやってきてオッサンABCを連行していった。


「よぅし。ユーヤ、飯食おうぜ」


 片付けを始めた店員さん達に申し訳ないと思いつつ、二カッと牙をみせながら笑ったアレクさんに連れられて食堂の中央にあるテーブルへ向かう。




(さーて、この世界の料理はどんな感じかな?)
 オシャレな明かりが食堂を照らす中、俺はそんな事を考えていた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

留学してたら、愚昧がやらかした件。

庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。 R−15は基本です。

処理中です...