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第一章
宿屋でのいざこざ
しおりを挟む10分ほど歩き、大通りに立ち並ぶ家々や店の内、アレクさんおすすめの宿屋、ゴルド亭に到着。ここは朝・昼・晩の3食と風呂付なのに、ご飯が上手く、値段が安い冒険者に人気の宿らしい。少し期待しながら中に入る。
店の中はなかなかオシャレだ。あたりを見回していると受付の人から声がかかる。
「ようこそゴルド亭へ。どのくらい泊まられますか?」
「うーん、取り敢えず2日で」
「かしこまりました。1泊銅貨二枚なので4枚頂戴します。お部屋は、二階の一番奥です。」
鞄が重たくなってきたので先に部屋へ向かう。
** **
部屋に鞄を置いた後、食堂へ移動すると大勢の冒険者がいた。彼らはこちらを見た後興味を無くしてすぐに目を逸らした。が、数人ニヤニヤしながら俺の様子を窺っている。
絡まれると面倒なので隅っこの空いてる席に座る。が、そんな俺の行動は虚しく、お酒をのんで気を大きくした数人の酒臭いオッサン達が、ジョッキを片手に近寄ってきた。
「よう坊主。こんなところ何の用だ。酒でも飲みにきたのかァ」
「お前も飲んでみるかぁ、うめえぜここの酒は」
「ほぉら。飲んでみろよ」
と言いながらお酒が入ったグラスを手渡してきた。
「すみません。僕お酒はちょっと・・・」
「なんだとォ。おれのさけが飲めねえのカ、アアァン」
突然ドンッとテーブルをぶっ叩いたオッサンCは、もの凄い顔になってキレだし殴りかかってきた。何となくこういう展開になるんじゃないかと思っていた俺は余裕で回避する。そして彼は、俺という対象を殴り損ねて見事にテーブルに突っ込む。
彼らはこの店に入った時からニヤニヤした顔で俺を見ていたため、何か企んでいるなと思っていたのだが・・・?何だか体が軽いな、何故だろう。・・・そういえば、この世界にきたときから妙に体が軽かった気がする。
気分が良くなった俺は、思わず手をクイクイとさせながらこう言った。
「ほらほらどうした、かかってこいよ」
「な、なんだとこのヤロォー」ガシャーン。
「て、てんメェー、調子乗ってんじゃネェゾ」パリーン。
カシャン。カシャン。
「「ぶっとばしてヤルゥー」」
俺の言葉に怒り狂ったオッサンAとBは、手に持っていたジョッキを投げ捨てる。そして、腰に差した剣を鞘から引き抜き仲良く襲い掛かってきた。この数秒で、騒ぎに気付いた付近の冒険者達がわらわらと集まってくる。
「なんだなんだ。喧嘩か?」「おいおい。剣は不味いだろう」
「いいぞ、やれやれー。」「おい!このバカ、何言ってんだ。この宿にはあの人が・・・ボソボソ」
食堂内がザワザワし始める。剣か、危ないがさっきの感じなら躱せるだろう。問題はその後だが・・・こいつで頭を殴ればなんとかなんだろ。
優夜は、転がっていた丸椅子をそっと拾い、応戦した。
「キエー」ヒュン。
オッサンAが奇声を上げながら右上から斜めに振った剣を、左に踏み込み体勢を低くすることで回避。すれ違いざまに、顔面目掛けて丸椅子をフルスイング。
「おらよ」ドゴッ。
痛そうな音と共に崩れ落ちる。続いて、俺の行動に驚いているオッサンBに、丸椅子を遠心力をかけながら投げつける。
「フンッ」ブンッ。
「え!。ちょっ、ま・・・・・」ガッ。
どうやら鼻にクリティカルヒットしたみたく、鼻血を流しつつ床に蹲るオッサンB。復活したオッサンCが抜刀した瞬間、凄まじい殺気?を感じ背筋が凍った。それは俺だけではなかったようで、食堂内に居る者全員時が止まったかのように宿の入口付近にいる誰かを見て、ピクリとも動かない。オッサンCに限っては腰を抜かしている、なんともシュールな光景だった。
そんな中、誰かの呟きが聞こえた。
「炎狼だ」
それを皮切りに、フリーズしていた冒険者達はその誰かに道をあけながら口々に話し出す。
「ホントだ。炎狼・・・・・・確か本名は、アレク・ザキアスだ」
「炎狼?誰のことだ?」
「お前、知らないのか。あの人は、この世界に5人しかいないSランク冒険者、炎狼のアレクさんだ」
「え、Sランクー!!」
何やら気になる話をしている冒険者達の間を通って現れたのは、なんとも以外な人物だった。
「昼間っから騒がしいなあ、飯が不味くなるだろう」
「あ、アレクさん!?」
そう、2時間ほど前に別れたアレクさんだったのだ。
「ん?おお、ユーヤじゃねえか。ちゃんと来れたようだな」
「はい。これのおかげで、迷わずに済みました」
俺はそう言って彼から貰った地図をひらひらと振る。
「そうか、そりゃ良かった・・・ところでこいつらはどうしたんだ」
「ああ、この人達は・・・・・・・・かくかくしかじか・・・・・・・・襲い掛かって来たんです」
アレクさんに事情を説明した。彼は、周りの冒険者達に威圧しながら言った。
「おい、お前ら。ここに迷惑かけてねえよなあ。もしそうなら俺が説教してやる。」
(絶対説教だけじゃないんだろうなあ、聞くのは怖いから黙っとこ)
「「「「「「「お、俺達はなにもしてないっす。この三人が勝手に・・・・・・・。」」」」」」」
「おう、なら散った散った」
冒険者達も俺と同じことを思ったらしく、アレクさんの一声で蜘蛛の子を散らすように去っていく。と同時に店員さんが何人かやって来た。警察的な組織に連絡したようで、騎士がやってきてオッサンABCを連行していった。
「よぅし。ユーヤ、飯食おうぜ」
片付けを始めた店員さん達に申し訳ないと思いつつ、二カッと牙をみせながら笑ったアレクさんに連れられて食堂の中央にあるテーブルへ向かう。
(さーて、この世界の料理はどんな感じかな?)
オシャレな明かりが食堂を照らす中、俺はそんな事を考えていた。
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