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第一章
最強への道のり
しおりを挟むあの後、優夜は何とか稀少種・鬼を撒き、木の傍に座り込んだ。
「ハア、ハア。あいつ、あの再生力は反則だろ」
唯一の回復手段であるポーション類はバックパックに入れていたのだが、一度殴られそうになった時に身代わりとしてバックパックごと投げてしまい、今は手元に残っていない。魔法で攻撃しまくっても、瞬時に回復され時間稼ぎにもならなかった。おかげで魔力切れ寸前だ。
(疲労でもう体が動かない・・・一応これでも元バスケ部副キャプテンだったんだが、鈍ったなあ。魔法もこれ以上使えないし。この状況でアイツは勿論、他のモンスターが来ても・・・マズイな)
そんな身動きが碌にとれない状態の優夜に、運命は容赦なく追い打ちをかける。
――――――――目の前の道から、撒いたはずの稀少種・鬼が歩いてきたのだ。
「クソッ、もう勘弁してくれよ」
(ヤバい!もう立つ気力すら残っていない・・・これは・・・死んだな)
優夜は絶望に陥る。
稀少種・鬼は目の前で立ち止まると、左手で俺の頭を掴んで持ち上げ、ニヤリと嗤った。
(・・・なにを、するつもりだ・・・・・・・・)
そして、さっきのお返しだと言わんばかりに右手の歪で細い指を動かし、――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ブシャッ!と、俺の右目を抉り出した。
「ぐああああああああああああ!」
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
今まで感じたことのないような激痛が優夜を襲った。
あまりの痛みに体をジタバタさせるが、稀少種・鬼の左腕はガッチリと俺の頭を掴んでいてびくともしない。
『グヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!』
稀少種・鬼は、気持ち悪い声で一頻り嗤った後、くちゃくちゃと音をたてて俺の右目を喰らった。ゴクンッと飲み込み、次は左目を抉り出そうとしてきた。
「やめろぉ!やめてくれぇ!」
右眼の痛みも忘れて必死にもがく。だが、それは無駄な抵抗だった。捕食者のような目で俺を見つめ、見せ付けるようにじわじわと右手の指を近づけてくる。そして、その指が眼窩にあてがわれた瞬間、
スパンッ!
と稀少種・鬼の右腕が付け根から切り落とされた。
『ガァアアアア』と、腕から黒い血を流しながら叫ぶ稀少種・鬼。
(な、なんだ?)
俺が困惑していると、今度は左腕が切り落とされた。掴まれていた俺は当然地面に落ちる。落ちていく最中誰かの姿が見えた気がする。
仰向けに着地すると、右目があったところを抑えながら体を起こして辺りを見回す。 右目の痛みは、神経が麻痺したらしくいつの間にか感じなくなっていた。
すると、俺の後ろにその人物はいた。
「やれやれ。散歩がてらに外へ出たら人の子に出会うとはのう」
両腕を再生した稀少種・鬼も気づいたようで、その人物に青筋を立てて襲い掛かった。
「ほう。両腕を再生させるか、この一瞬で・・・お主は何か知っておるか?」
「ソイツは・・・稀少種・鬼・・で・・す・・・・」
(誰かは知らないがもう大丈夫そうだ・・・安心したら眠くなって・・意識が・・遠く・・・)
その人物は、稀少種・鬼の猛攻撃をいとも簡単にかわしながら話しかけてくる。
「そうか。ところでお主、右目は大丈夫か・・・?」
「・・・」
優夜は疲労の余り寝てしまっていた。
無理もない。森の中を全力で走り回った挙句右目を抉り出され、肉体的にも精神的にもダメージを負ったのだから。
「こんな時に寝るとはの・・・後は儂に任せておけ」
** **
一方、カルラは魔物を倒しながら進み、サフィーレ大森林の外へ出ることに成功していた。
「ふぅ。今までで一番やばかったけれど何とか生き延びれたわね」
(アイツは大丈夫かしら・・・・・)
優夜のことを考えていると、最後に話した言葉を思い出す。
「そうだ、再会する時までに強くならなきゃ」
カルラは、目標をあの鬼の適正ランクであるB以上になると定め、血の滲むような努力をし始めた。
その日から、カルラ・キャシーユはメキメキと力をつけ、15歳にしてAランク冒険者の仲間入りをすることになるが、それはまた別の話。
** **
優夜はベッドの上で目を覚ました。そして一言、
「・・・知らない天井だ」
ふざけたことを言っていると、抉り取られた右目が疼く。
「いっつつ」
優夜は、眼帯が施された右目を抑えながら、こうなった原因を思い出した。
あの時は恐怖しかなかったが、今はそれよりも稀少種・鬼のニヤニヤとした顔が脳裏に焼き付いて離れない。
(あの野郎・・・・よくも俺の右目を・・・・・・・)
考えれば考える程、いたぶられたことに対する屈辱と憤怒、そして憎悪が湧き上がってきた。
(くそっ!あいつだけは、あの稀少種・鬼だけは絶対にこの手で殺してやる!)
しばらく押し黙り、激情が少し収まると、
(あいつを殺るためには強くならなければならない。こんな悔しい気持ちはもうたくさんだ。誰にも負けないような力を・・・・何者にも支配されないような強さを手に入れて、俺は・・・・この世界で最強になる!)
優夜は固くそう決意した。そして、自分の戦闘スタイルを考え出していく。
(俺の職は軽業師、つまり軽業が得意になれるということだ・・・・軽業・・・・アクロバットのことだろう。アクロバットとは、器械体操みたいなものだったはず)
俺はこういう系が得意な友達に教えてもらった技を思い出した。
(技名はいまいち覚えてないけど、動きとコツはバッチリ覚えてるな)
「よし。まずは器械体操、その後に蹴り技、旋回技を・・・それと風魔法も並行して極めるとしよう」
(・・・・・・・よく考えたら、アクロバットって風魔法を使えば楽にできそうだな)
優夜は、最強への道のりを歩み始めようとしていた。
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