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意外な経歴
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神殿の裏手で顔をえぐられ意識を失った老人を手当し、合流したクラーヴィオと
共に一旦屋敷へ戻ると、まだ痛々しい状態ではあるものの、起き上がれるようになった
ケルドが私を迎えてくれた。 あれだけの傷だったのに、
やはりケルドは結構頑丈なのかもしれない。
「ドゥーラ、その砂漠の民の衣装、似合ってるよ。今度舞台の方にも出てみるかい?」
「いえ、そんな度胸ないから。それよりも、ファザーンさんは?」
キョロキョロと、ファザーンの姿が見えないことに今更に気づく。
「ユーラーティ神殿のことについて古い文献を当たってくるって出てったっきりだよ」
「ドゥーラは度胸もあるからね、舞台に出ると案外イケると思うよ。ファンが付いたら
一生食ってけるし。モテモテで楽しいよ。あ。ガルディアに殺されるわ。ハハハ」
どこまで本気なんだか、怪我人ケルドに冷やかされてしまった。
怪我人といえば、この大怪我を負わされた老人を早くちゃんとした手当をしなくちゃ。
「クラーヴィオさん、このおじいさんの事、ご存知なんですか?」
執事にまだ意識を取り戻さない男を託したクラーヴィオは、やっと重い物から
解放されたように肩を回している。
「お手柄だよドゥーラ。あの老人、王都の商人を束ねるギルドの長なんだ」
ギルド、というのは商人同士の互助組織の事で、大きな街には商売の情報交換を行う
組織があってそれぞれの知恵を絞って街の発展のために価格や扱う商品の質を取り決める
組織のようなものだ。
「その長がなんでアダラに殺されかけるんですか? 」
「それは、彼が目覚めてからの話だね。なぜこんな目にあったのかは大体見当がつくが」
医者を呼べば目立つ上にもしユーラーティの悪徳医師と繋がっている医者を呼んだら
商人ギルドの長が生きていることがアダラ副司祭長にわかってしまう。
どうしたものかと困った。
なんの騒ぎだ?と 物音が気になったのか、ヘルシャフトが客間から顔を出す。
私の顔を見ると無事をとても喜んでくれた。
アルカの街にいる時とは人間が入れ替わってしまったかのようだ。っていうか偽物?
あ、とクラーヴィオが小さく声を上げると、ヘルシャフトにこの老人を看て欲しいと
頼んだ。 確かに薬草の知識は半端ないけど、医者ではないはずなのになぜだろう。
「うむ。これは……ひどく抉えぐられたものだな。よし、客間に運んでくれ」
ヘルシャフトは、執事に申し付けると、執事と下男が老人、もとい商人ギルドの長を
近くの客間に運び込む。そして、手近にいたメイドに一番キツイ酒と熱湯、それに
縫い針と丈夫な糸と布巾を持ってくるように手短に告げて客間に向かった。
「兄はね、修行時代に客船で医者の見習いをしていたんだそうだよ。丁度よかった」
へえ。あんなおっかない人にそんな過去があったとは。
そうかぁ。でもヘルシャフトも国の外を旅していたことがあるのかぁ。
一度時間が取れたら話を聞いてみたいなぁ。
「怪我人は兄に任せておこう。連れ去られてからどうしていたか聞かせて欲しい」
クラーヴィオとケルドがいつの間にかそばに来ていて声をかけてくる。
そこで、私は、煙に巻かれて馬車から連れ去られてからの事を順を追って説明した。
ユーラーティ神殿の北側の屋敷の一室に寝かされていた事、1階に一連の事件に関わる
薬草や毒薬を研究し作っていた老人がいた事、その老人の作った毒であの医者が
母の命と父の人生を奪った事、そして、その毒を多くの人間に使い、解毒して今の
国一番という地位を医師が築いた事、そして、サラエリーナにはまた毒を盛り昏睡状態に
して、あの神殿の地下に監禁して何か暗示をかけている事、そして、ガルディアと
出会えたけれど、何か目的があって別行動することを告げた。
ええっと、その、なんだ。あのキスされちゃった事はちょっと内緒にしたかった。
あれを思い出すと、床を転がりまわって恥ずかしさに熱が出てしまいそうになるから。
「ガルディアは敵に回ったわけじゃないんだな?」
ケルドが念を押した。 うん。別行動だけど、戻ると言ってた。ある人と約束をしたって。
「敵に回ったわけじゃないけど、ある人と約束したからことが終わるまでは戻れないって」
ケルドは、少し考え込んでいた。
「ドゥーラが無事に帰ってきてるってことは一応大丈夫なんだよな……」
なにか意味深なことをつぶやく。
一応大丈夫ってどういう意味なんだろう。
「アイツ、バカだから敵になったら元仲間だとしても真剣に潰しにくるんだよね。
そこんところが雇い主とかにしたら安心なんだけど、敵になったら厄介なんだよ」
厄介って何ですか……? すごくコワイデス。
「とにかく、馬鹿力で武器をぶん回すから、避けようがないし、軽い男なら
武器の風圧でよろける。攻撃が当たったとしても油断できない位すごく頑丈。
少々の矢傷は平気だし。腕に剣を刺されたとしても筋肉で折っちゃうくらいにね。」
「それ化物バケモノと言いませんか」
「ドゥーラに化物扱いされたって知ったら泣くぞ、アイツ……でもま、当たらずといえども
遠からず、かな。 冒険者の仲間内では、ガルディアの髪が赤毛なのを取って
紅蓮の鬼神、なんて影で呼ぶ奴がいるし、ご指名も来てた」
色々な道をたどって、出会ったんだなぁって考えて、ふと視線を流すと、
眉間にシワを寄せたクラーヴィオがいた。
「どうかしたんですか?クラーヴィオさん」
声をかけると、深い思考のそこからふと私に答えてくれた。
「薬を盛られて、何か暗示をかけられて眠らされていると言ったんですか?」
確かにガルディアはそう言った。その筋の人に聞けば何かわかると思うけど、と。
「まさかとは思うんだけど、ちょっと調べたいことがあるので失礼するよ」
クラーヴィオが難しい顔をして自室に戻っていった。
共に一旦屋敷へ戻ると、まだ痛々しい状態ではあるものの、起き上がれるようになった
ケルドが私を迎えてくれた。 あれだけの傷だったのに、
やはりケルドは結構頑丈なのかもしれない。
「ドゥーラ、その砂漠の民の衣装、似合ってるよ。今度舞台の方にも出てみるかい?」
「いえ、そんな度胸ないから。それよりも、ファザーンさんは?」
キョロキョロと、ファザーンの姿が見えないことに今更に気づく。
「ユーラーティ神殿のことについて古い文献を当たってくるって出てったっきりだよ」
「ドゥーラは度胸もあるからね、舞台に出ると案外イケると思うよ。ファンが付いたら
一生食ってけるし。モテモテで楽しいよ。あ。ガルディアに殺されるわ。ハハハ」
どこまで本気なんだか、怪我人ケルドに冷やかされてしまった。
怪我人といえば、この大怪我を負わされた老人を早くちゃんとした手当をしなくちゃ。
「クラーヴィオさん、このおじいさんの事、ご存知なんですか?」
執事にまだ意識を取り戻さない男を託したクラーヴィオは、やっと重い物から
解放されたように肩を回している。
「お手柄だよドゥーラ。あの老人、王都の商人を束ねるギルドの長なんだ」
ギルド、というのは商人同士の互助組織の事で、大きな街には商売の情報交換を行う
組織があってそれぞれの知恵を絞って街の発展のために価格や扱う商品の質を取り決める
組織のようなものだ。
「その長がなんでアダラに殺されかけるんですか? 」
「それは、彼が目覚めてからの話だね。なぜこんな目にあったのかは大体見当がつくが」
医者を呼べば目立つ上にもしユーラーティの悪徳医師と繋がっている医者を呼んだら
商人ギルドの長が生きていることがアダラ副司祭長にわかってしまう。
どうしたものかと困った。
なんの騒ぎだ?と 物音が気になったのか、ヘルシャフトが客間から顔を出す。
私の顔を見ると無事をとても喜んでくれた。
アルカの街にいる時とは人間が入れ替わってしまったかのようだ。っていうか偽物?
あ、とクラーヴィオが小さく声を上げると、ヘルシャフトにこの老人を看て欲しいと
頼んだ。 確かに薬草の知識は半端ないけど、医者ではないはずなのになぜだろう。
「うむ。これは……ひどく抉えぐられたものだな。よし、客間に運んでくれ」
ヘルシャフトは、執事に申し付けると、執事と下男が老人、もとい商人ギルドの長を
近くの客間に運び込む。そして、手近にいたメイドに一番キツイ酒と熱湯、それに
縫い針と丈夫な糸と布巾を持ってくるように手短に告げて客間に向かった。
「兄はね、修行時代に客船で医者の見習いをしていたんだそうだよ。丁度よかった」
へえ。あんなおっかない人にそんな過去があったとは。
そうかぁ。でもヘルシャフトも国の外を旅していたことがあるのかぁ。
一度時間が取れたら話を聞いてみたいなぁ。
「怪我人は兄に任せておこう。連れ去られてからどうしていたか聞かせて欲しい」
クラーヴィオとケルドがいつの間にかそばに来ていて声をかけてくる。
そこで、私は、煙に巻かれて馬車から連れ去られてからの事を順を追って説明した。
ユーラーティ神殿の北側の屋敷の一室に寝かされていた事、1階に一連の事件に関わる
薬草や毒薬を研究し作っていた老人がいた事、その老人の作った毒であの医者が
母の命と父の人生を奪った事、そして、その毒を多くの人間に使い、解毒して今の
国一番という地位を医師が築いた事、そして、サラエリーナにはまた毒を盛り昏睡状態に
して、あの神殿の地下に監禁して何か暗示をかけている事、そして、ガルディアと
出会えたけれど、何か目的があって別行動することを告げた。
ええっと、その、なんだ。あのキスされちゃった事はちょっと内緒にしたかった。
あれを思い出すと、床を転がりまわって恥ずかしさに熱が出てしまいそうになるから。
「ガルディアは敵に回ったわけじゃないんだな?」
ケルドが念を押した。 うん。別行動だけど、戻ると言ってた。ある人と約束をしたって。
「敵に回ったわけじゃないけど、ある人と約束したからことが終わるまでは戻れないって」
ケルドは、少し考え込んでいた。
「ドゥーラが無事に帰ってきてるってことは一応大丈夫なんだよな……」
なにか意味深なことをつぶやく。
一応大丈夫ってどういう意味なんだろう。
「アイツ、バカだから敵になったら元仲間だとしても真剣に潰しにくるんだよね。
そこんところが雇い主とかにしたら安心なんだけど、敵になったら厄介なんだよ」
厄介って何ですか……? すごくコワイデス。
「とにかく、馬鹿力で武器をぶん回すから、避けようがないし、軽い男なら
武器の風圧でよろける。攻撃が当たったとしても油断できない位すごく頑丈。
少々の矢傷は平気だし。腕に剣を刺されたとしても筋肉で折っちゃうくらいにね。」
「それ化物バケモノと言いませんか」
「ドゥーラに化物扱いされたって知ったら泣くぞ、アイツ……でもま、当たらずといえども
遠からず、かな。 冒険者の仲間内では、ガルディアの髪が赤毛なのを取って
紅蓮の鬼神、なんて影で呼ぶ奴がいるし、ご指名も来てた」
色々な道をたどって、出会ったんだなぁって考えて、ふと視線を流すと、
眉間にシワを寄せたクラーヴィオがいた。
「どうかしたんですか?クラーヴィオさん」
声をかけると、深い思考のそこからふと私に答えてくれた。
「薬を盛られて、何か暗示をかけられて眠らされていると言ったんですか?」
確かにガルディアはそう言った。その筋の人に聞けば何かわかると思うけど、と。
「まさかとは思うんだけど、ちょっと調べたいことがあるので失礼するよ」
クラーヴィオが難しい顔をして自室に戻っていった。
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