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未来へ。
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あれから一か月がたち、王都ではいろんなことが動いていた。
私は、あの一件から3日ほど眠り続けていたそうだ。
目覚めた時傍にいてくれたガルディアの何とも言えない泣き顔に少し不安になったけどサラエリーナも無事に保護され、手厚い治療を受けているらしい。
今は、洗脳薬の効果を打ち消す薬を施され、様子を見ている状況なのだそうだ。
ザーコボルは、捕らえられ王都を混乱に陥れ、ユーラーティ神殿の施設を私物化していた罪で投獄。
しかし、獄中で何かに怯え、狂ったように暴れた後に絶命していたという。
その死に際を目の当たりにした牢番は、あれは、ユーラーティ神の神罰に他ならないと怯えた眼で証言していた。牢の中の石壁は、ザーコボルのもだえ苦しんだであろう血まみれの爪痕が残されており、見るものを恐怖に陥れた。
ユーラーティ神殿への寄進の着服をしていたことも露見し、悪事に加担していた事務官のオルディネも 人を殺める以外の罪をもみ消していたという事実が次々と証拠が挙がり、神殿から破門された後に投獄され、それに連なっていた者たちも神殿から追われることとなった。
ザーコボルの配下となっていた副司祭長のアダラも、王都の陰の実権を握る商人ギルドの長を殺害しようとした罪とその他の悪事がオルディネの証言で露見し、お尋ね者となって追われている。
そして、この一件に加担していた王立薬草園のふたりの職員が処罰され、一族郎党軽くない罪に問われたのだそうだ。自分を支えてくれていたと信頼を傾けていたサントル園長の心の傷は深いものだった。
その結果、植物園の募集がかかることになり近々採用試験が行われるそうだ。
なにか複雑な思いを抱えつつ、目的であった採用試験に向けて勉強する日々が待っていた。
そんなある日、クラーヴィオに呼ばれて執務室に足を踏み入れると、なぜかヘルシャフトとふたりが待っていた。
「ドゥーラ、実は君に話さないといけないことがあるんだ、長い話になるから座って?」
改まった物言いで、私にソファを勧めるクラーヴィオ。
何かすごい真剣な面持ちに緊張する。勧められるままソファに腰を掛ける。
「どこから話していいのかわからないんだけど……」
何か歯切れが悪い。なかなか言いにくいようだった。
業を煮やしたのか、ヘルシャフトが言葉を引き継いだ。
「お前が孤児になった時、親の親戚がお前に手を差し伸べなかったことを不思議に思わなかったか?」
ヘルシャフトは、探るようなまなざしを向けた。
言われてみたら、両親の親戚とは会った記憶がない。父も母もそんな話をしたことがなかったから。
「お父さんの友達や近所の人たちに親切にしてもらっていましたからあんまり気にしたことなかったです」
そういうと、ふたりとも辛そうな表情を浮かべる。
「前に話したことがあったかと思うんだけどね、僕に年の離れた姉がいたって。親代わりだった」
ああ、そういえばそんな話していた。とても強くて優しいお姉さんだったって。
「姉はファラウラと言って、娘がひとりいる」
ファラウラ? お母さんの名前だ。神妙な顔のふたり。もしかして……
「お母さん、ファラウラっていう名前でした……もしかして」
ふたりはうなづく。
「そうだ。お前は私たちの姪、なんだよ」
驚きすぎて声も出ない。クラーヴィオやヘルシャフトが伯父さん??
「お母さんの兄弟?」
そういえば、クラーヴィオのはちみつ色の髪はお母さんを思わせる。優しい面差しも。
「一番辛い時に手を差し伸べることが出来なかった。詫びて許されることじゃないのは分かっているがどうしてもお前に話しておきたかった」
頭が真っ白になるってこういう事なんだろうか。
「なんで、今?」
ふとした疑問が口をついた。今まで私に内緒にしていたことをなんで今更告げるんだろう?
思わぬ親戚との遭遇に嬉しい反面疑問が浮かび上がる。
「第一は、君のお父さんの名誉が回復したこと」
そうだ!お父さんは王都にいる筈なんだった。探さないと……。
「第二は、お前に王都にとどまって、今までしてやれなかった本来は受けるべき教育や生活を送らせてやりたかったこと」
「第三は、どんなことがあってもこの国を離れてほしくなかったから、かな」
この国を離れる?なんでそんな発想になるんだろう。
「近々、君は城に呼ばれることになっている」
「私が?」
なんで城に呼ばれるんだろう?心当たりがないなぁ。
「君は、国を救った英雄のひとりだからね」
私が英雄って、ずいぶん話が大きくなっているなぁって戸惑う。
知らされた事実が多すぎて倒れそうになる。
私は、あの一件から3日ほど眠り続けていたそうだ。
目覚めた時傍にいてくれたガルディアの何とも言えない泣き顔に少し不安になったけどサラエリーナも無事に保護され、手厚い治療を受けているらしい。
今は、洗脳薬の効果を打ち消す薬を施され、様子を見ている状況なのだそうだ。
ザーコボルは、捕らえられ王都を混乱に陥れ、ユーラーティ神殿の施設を私物化していた罪で投獄。
しかし、獄中で何かに怯え、狂ったように暴れた後に絶命していたという。
その死に際を目の当たりにした牢番は、あれは、ユーラーティ神の神罰に他ならないと怯えた眼で証言していた。牢の中の石壁は、ザーコボルのもだえ苦しんだであろう血まみれの爪痕が残されており、見るものを恐怖に陥れた。
ユーラーティ神殿への寄進の着服をしていたことも露見し、悪事に加担していた事務官のオルディネも 人を殺める以外の罪をもみ消していたという事実が次々と証拠が挙がり、神殿から破門された後に投獄され、それに連なっていた者たちも神殿から追われることとなった。
ザーコボルの配下となっていた副司祭長のアダラも、王都の陰の実権を握る商人ギルドの長を殺害しようとした罪とその他の悪事がオルディネの証言で露見し、お尋ね者となって追われている。
そして、この一件に加担していた王立薬草園のふたりの職員が処罰され、一族郎党軽くない罪に問われたのだそうだ。自分を支えてくれていたと信頼を傾けていたサントル園長の心の傷は深いものだった。
その結果、植物園の募集がかかることになり近々採用試験が行われるそうだ。
なにか複雑な思いを抱えつつ、目的であった採用試験に向けて勉強する日々が待っていた。
そんなある日、クラーヴィオに呼ばれて執務室に足を踏み入れると、なぜかヘルシャフトとふたりが待っていた。
「ドゥーラ、実は君に話さないといけないことがあるんだ、長い話になるから座って?」
改まった物言いで、私にソファを勧めるクラーヴィオ。
何かすごい真剣な面持ちに緊張する。勧められるままソファに腰を掛ける。
「どこから話していいのかわからないんだけど……」
何か歯切れが悪い。なかなか言いにくいようだった。
業を煮やしたのか、ヘルシャフトが言葉を引き継いだ。
「お前が孤児になった時、親の親戚がお前に手を差し伸べなかったことを不思議に思わなかったか?」
ヘルシャフトは、探るようなまなざしを向けた。
言われてみたら、両親の親戚とは会った記憶がない。父も母もそんな話をしたことがなかったから。
「お父さんの友達や近所の人たちに親切にしてもらっていましたからあんまり気にしたことなかったです」
そういうと、ふたりとも辛そうな表情を浮かべる。
「前に話したことがあったかと思うんだけどね、僕に年の離れた姉がいたって。親代わりだった」
ああ、そういえばそんな話していた。とても強くて優しいお姉さんだったって。
「姉はファラウラと言って、娘がひとりいる」
ファラウラ? お母さんの名前だ。神妙な顔のふたり。もしかして……
「お母さん、ファラウラっていう名前でした……もしかして」
ふたりはうなづく。
「そうだ。お前は私たちの姪、なんだよ」
驚きすぎて声も出ない。クラーヴィオやヘルシャフトが伯父さん??
「お母さんの兄弟?」
そういえば、クラーヴィオのはちみつ色の髪はお母さんを思わせる。優しい面差しも。
「一番辛い時に手を差し伸べることが出来なかった。詫びて許されることじゃないのは分かっているがどうしてもお前に話しておきたかった」
頭が真っ白になるってこういう事なんだろうか。
「なんで、今?」
ふとした疑問が口をついた。今まで私に内緒にしていたことをなんで今更告げるんだろう?
思わぬ親戚との遭遇に嬉しい反面疑問が浮かび上がる。
「第一は、君のお父さんの名誉が回復したこと」
そうだ!お父さんは王都にいる筈なんだった。探さないと……。
「第二は、お前に王都にとどまって、今までしてやれなかった本来は受けるべき教育や生活を送らせてやりたかったこと」
「第三は、どんなことがあってもこの国を離れてほしくなかったから、かな」
この国を離れる?なんでそんな発想になるんだろう。
「近々、君は城に呼ばれることになっている」
「私が?」
なんで城に呼ばれるんだろう?心当たりがないなぁ。
「君は、国を救った英雄のひとりだからね」
私が英雄って、ずいぶん話が大きくなっているなぁって戸惑う。
知らされた事実が多すぎて倒れそうになる。
応援ありがとうございます!
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薬師……最近増えてきましたが、やはり楽しいですよね!
なんたってファンタジーならではの自分の世界の植物や効能とか、あと毒物も……いろいろ作れますし!
あ、そうそう「家族の面影」が、二回投稿されてましたよ!
毎日更新お疲れ様です。
面白い作品なので、楽しみにしてます!
感想と二重投稿のご指摘有難うございます。
初感想頂いてすごくうれしいです。
更新マメにできるように頑張ります。すごくうれしいです。