54 / 54
未来へ。
しおりを挟む
あれから一か月がたち、王都ではいろんなことが動いていた。
私は、あの一件から3日ほど眠り続けていたそうだ。
目覚めた時傍にいてくれたガルディアの何とも言えない泣き顔に少し不安になったけどサラエリーナも無事に保護され、手厚い治療を受けているらしい。
今は、洗脳薬の効果を打ち消す薬を施され、様子を見ている状況なのだそうだ。
ザーコボルは、捕らえられ王都を混乱に陥れ、ユーラーティ神殿の施設を私物化していた罪で投獄。
しかし、獄中で何かに怯え、狂ったように暴れた後に絶命していたという。
その死に際を目の当たりにした牢番は、あれは、ユーラーティ神の神罰に他ならないと怯えた眼で証言していた。牢の中の石壁は、ザーコボルのもだえ苦しんだであろう血まみれの爪痕が残されており、見るものを恐怖に陥れた。
ユーラーティ神殿への寄進の着服をしていたことも露見し、悪事に加担していた事務官のオルディネも 人を殺める以外の罪をもみ消していたという事実が次々と証拠が挙がり、神殿から破門された後に投獄され、それに連なっていた者たちも神殿から追われることとなった。
ザーコボルの配下となっていた副司祭長のアダラも、王都の陰の実権を握る商人ギルドの長を殺害しようとした罪とその他の悪事がオルディネの証言で露見し、お尋ね者となって追われている。
そして、この一件に加担していた王立薬草園のふたりの職員が処罰され、一族郎党軽くない罪に問われたのだそうだ。自分を支えてくれていたと信頼を傾けていたサントル園長の心の傷は深いものだった。
その結果、植物園の募集がかかることになり近々採用試験が行われるそうだ。
なにか複雑な思いを抱えつつ、目的であった採用試験に向けて勉強する日々が待っていた。
そんなある日、クラーヴィオに呼ばれて執務室に足を踏み入れると、なぜかヘルシャフトとふたりが待っていた。
「ドゥーラ、実は君に話さないといけないことがあるんだ、長い話になるから座って?」
改まった物言いで、私にソファを勧めるクラーヴィオ。
何かすごい真剣な面持ちに緊張する。勧められるままソファに腰を掛ける。
「どこから話していいのかわからないんだけど……」
何か歯切れが悪い。なかなか言いにくいようだった。
業を煮やしたのか、ヘルシャフトが言葉を引き継いだ。
「お前が孤児になった時、親の親戚がお前に手を差し伸べなかったことを不思議に思わなかったか?」
ヘルシャフトは、探るようなまなざしを向けた。
言われてみたら、両親の親戚とは会った記憶がない。父も母もそんな話をしたことがなかったから。
「お父さんの友達や近所の人たちに親切にしてもらっていましたからあんまり気にしたことなかったです」
そういうと、ふたりとも辛そうな表情を浮かべる。
「前に話したことがあったかと思うんだけどね、僕に年の離れた姉がいたって。親代わりだった」
ああ、そういえばそんな話していた。とても強くて優しいお姉さんだったって。
「姉はファラウラと言って、娘がひとりいる」
ファラウラ? お母さんの名前だ。神妙な顔のふたり。もしかして……
「お母さん、ファラウラっていう名前でした……もしかして」
ふたりはうなづく。
「そうだ。お前は私たちの姪、なんだよ」
驚きすぎて声も出ない。クラーヴィオやヘルシャフトが伯父さん??
「お母さんの兄弟?」
そういえば、クラーヴィオのはちみつ色の髪はお母さんを思わせる。優しい面差しも。
「一番辛い時に手を差し伸べることが出来なかった。詫びて許されることじゃないのは分かっているがどうしてもお前に話しておきたかった」
頭が真っ白になるってこういう事なんだろうか。
「なんで、今?」
ふとした疑問が口をついた。今まで私に内緒にしていたことをなんで今更告げるんだろう?
思わぬ親戚との遭遇に嬉しい反面疑問が浮かび上がる。
「第一は、君のお父さんの名誉が回復したこと」
そうだ!お父さんは王都にいる筈なんだった。探さないと……。
「第二は、お前に王都にとどまって、今までしてやれなかった本来は受けるべき教育や生活を送らせてやりたかったこと」
「第三は、どんなことがあってもこの国を離れてほしくなかったから、かな」
この国を離れる?なんでそんな発想になるんだろう。
「近々、君は城に呼ばれることになっている」
「私が?」
なんで城に呼ばれるんだろう?心当たりがないなぁ。
「君は、国を救った英雄のひとりだからね」
私が英雄って、ずいぶん話が大きくなっているなぁって戸惑う。
知らされた事実が多すぎて倒れそうになる。
私は、あの一件から3日ほど眠り続けていたそうだ。
目覚めた時傍にいてくれたガルディアの何とも言えない泣き顔に少し不安になったけどサラエリーナも無事に保護され、手厚い治療を受けているらしい。
今は、洗脳薬の効果を打ち消す薬を施され、様子を見ている状況なのだそうだ。
ザーコボルは、捕らえられ王都を混乱に陥れ、ユーラーティ神殿の施設を私物化していた罪で投獄。
しかし、獄中で何かに怯え、狂ったように暴れた後に絶命していたという。
その死に際を目の当たりにした牢番は、あれは、ユーラーティ神の神罰に他ならないと怯えた眼で証言していた。牢の中の石壁は、ザーコボルのもだえ苦しんだであろう血まみれの爪痕が残されており、見るものを恐怖に陥れた。
ユーラーティ神殿への寄進の着服をしていたことも露見し、悪事に加担していた事務官のオルディネも 人を殺める以外の罪をもみ消していたという事実が次々と証拠が挙がり、神殿から破門された後に投獄され、それに連なっていた者たちも神殿から追われることとなった。
ザーコボルの配下となっていた副司祭長のアダラも、王都の陰の実権を握る商人ギルドの長を殺害しようとした罪とその他の悪事がオルディネの証言で露見し、お尋ね者となって追われている。
そして、この一件に加担していた王立薬草園のふたりの職員が処罰され、一族郎党軽くない罪に問われたのだそうだ。自分を支えてくれていたと信頼を傾けていたサントル園長の心の傷は深いものだった。
その結果、植物園の募集がかかることになり近々採用試験が行われるそうだ。
なにか複雑な思いを抱えつつ、目的であった採用試験に向けて勉強する日々が待っていた。
そんなある日、クラーヴィオに呼ばれて執務室に足を踏み入れると、なぜかヘルシャフトとふたりが待っていた。
「ドゥーラ、実は君に話さないといけないことがあるんだ、長い話になるから座って?」
改まった物言いで、私にソファを勧めるクラーヴィオ。
何かすごい真剣な面持ちに緊張する。勧められるままソファに腰を掛ける。
「どこから話していいのかわからないんだけど……」
何か歯切れが悪い。なかなか言いにくいようだった。
業を煮やしたのか、ヘルシャフトが言葉を引き継いだ。
「お前が孤児になった時、親の親戚がお前に手を差し伸べなかったことを不思議に思わなかったか?」
ヘルシャフトは、探るようなまなざしを向けた。
言われてみたら、両親の親戚とは会った記憶がない。父も母もそんな話をしたことがなかったから。
「お父さんの友達や近所の人たちに親切にしてもらっていましたからあんまり気にしたことなかったです」
そういうと、ふたりとも辛そうな表情を浮かべる。
「前に話したことがあったかと思うんだけどね、僕に年の離れた姉がいたって。親代わりだった」
ああ、そういえばそんな話していた。とても強くて優しいお姉さんだったって。
「姉はファラウラと言って、娘がひとりいる」
ファラウラ? お母さんの名前だ。神妙な顔のふたり。もしかして……
「お母さん、ファラウラっていう名前でした……もしかして」
ふたりはうなづく。
「そうだ。お前は私たちの姪、なんだよ」
驚きすぎて声も出ない。クラーヴィオやヘルシャフトが伯父さん??
「お母さんの兄弟?」
そういえば、クラーヴィオのはちみつ色の髪はお母さんを思わせる。優しい面差しも。
「一番辛い時に手を差し伸べることが出来なかった。詫びて許されることじゃないのは分かっているがどうしてもお前に話しておきたかった」
頭が真っ白になるってこういう事なんだろうか。
「なんで、今?」
ふとした疑問が口をついた。今まで私に内緒にしていたことをなんで今更告げるんだろう?
思わぬ親戚との遭遇に嬉しい反面疑問が浮かび上がる。
「第一は、君のお父さんの名誉が回復したこと」
そうだ!お父さんは王都にいる筈なんだった。探さないと……。
「第二は、お前に王都にとどまって、今までしてやれなかった本来は受けるべき教育や生活を送らせてやりたかったこと」
「第三は、どんなことがあってもこの国を離れてほしくなかったから、かな」
この国を離れる?なんでそんな発想になるんだろう。
「近々、君は城に呼ばれることになっている」
「私が?」
なんで城に呼ばれるんだろう?心当たりがないなぁ。
「君は、国を救った英雄のひとりだからね」
私が英雄って、ずいぶん話が大きくなっているなぁって戸惑う。
知らされた事実が多すぎて倒れそうになる。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
薬師……最近増えてきましたが、やはり楽しいですよね!
なんたってファンタジーならではの自分の世界の植物や効能とか、あと毒物も……いろいろ作れますし!
あ、そうそう「家族の面影」が、二回投稿されてましたよ!
毎日更新お疲れ様です。
面白い作品なので、楽しみにしてます!
感想と二重投稿のご指摘有難うございます。
初感想頂いてすごくうれしいです。
更新マメにできるように頑張ります。すごくうれしいです。