ヘタレ女の料理帖

津崎鈴子

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アヤとの再会、そして

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 アヤと待ち合わせしたのは、ホテルバイキング。

大きな川沿いのホテルで、普段だったら躊躇するレベルの値段だったけど
美味しいものをお腹いっぱい食べよう!というアヤのひとことで決まり。

ホテルのエントランスから、こぼれるようなフラワーアレンジも華やかに、
歩くとほんの少し沈む絨毯の上品な臙脂色がすごく華やか。
昔、テルのお母さんに連れて行ってもらった劇場のエントランスに似ている。

「ユ、ユキ?!」
ぼんやり待っていると、怪訝な声で呼びかけられる。
振り返ると、そこには驚きで固まったアヤがいた。
アヤはいつも通りの動きやすそうな装いに、ポニーテールが揺れている。

「ああ、久しぶり。どうしたの?」
「そ、その髪……あの切ったの?」

ああ。うっかりしてた。切った本人ってついつい慣れもあって忘れるよね。
確かに、髪切ってから家族にしか会ってなかったわ。

「うん。もう、さっぱり。頭、軽くなったよ。肩こりもましになってね。やっぱ
重かったんだね、髪の毛って」

笑い飛ばす私と対照的にアヤは涙目になっている。

「ユキ……。よし!!やけ食いだ!!めいっぱい食べよう!!!」

華やかなシャンデリアがキラキラと光を放っている。

そのホテルの名物の大シャンデリアで、どこか欧州から特注で作られた

ン千万のものらしい。すごくきらびやかだ。

中央から伸びるエスカレーターで上がると、そのホテル名物のバイキングの会場に
なっていた。大宴会場にしつらえられた会場に、多くのお客さんがおめかしして
手には料理を盛りつけたお皿を持っている。

「ここの目玉はローストビーフだよ、急ごう!」
アヤは笑いながら会場に入っていった。

「元取るぞーーー!!」

元気なアヤのいつもの調子に思わず笑ってしまった。

 料理は、本当に色とりどりで、どれから手を付けていいかわからないくらい。
ちょっとづつお皿に盛りつけていく。

どれも美味しくてお替わりしに何度も席を立つ。
景色もすごく良くて、川沿いに植えられた桜が程よく開いて薄紅の花を咲かせている。
散った桜も川面に浮かび、天候はまばゆいばかりの晴天で、川面はキラキラと輝いている。

 ある程度お腹が膨れたところでアヤは、話を始めた。なんか妙な胸騒ぎがしてアパートに
来てくれたらしい。でも、いる筈の時間にも電気もつかず、連絡を取ろうとしても
電話に出てくれないしと、実家に行ったけどお母さんが行先はちょっと、と口を濁したので
この時点でもかなり心配になってテルのところに突撃して事情を聞こうとしたらしい。

ああ、会社辞めて凹んでて、誰からの連絡も取りたくなくてスマホの電源オフってた時のことかな。
余計な心配させてしまった。

「で、テルに会ってユキがどこにいるのか聞き出そうとしたら、すごく驚いて
すごく挙動不審だったから問い詰めたら、あんたと別れて別の女と結婚することになったって
ゲロったから思わずぶん殴ったよ」

ああ、お母さんが私の行先を話さなかったのは、テルと共通の友達が多いからだ。
そのうちのひとつからばれて面倒なことにならないように守ってくれていたんだな。
お母さん、ありがとう。

「ごめんね。ちょっと精神的に参ってて、電話取れなかった」

素直に謝ると、アヤは、瞳を潤ませていた。

「話、聴かせてよ。テルって基本一途だし、今までも喧嘩はしたけど浮気じゃないもんね」

「終わったことだから、あんまりほじくりたくないんだけどね、相手、私の会社の後輩なの。
何回か一緒に遊んだことがあって、彼氏いいな、とか羨ましいとかずっと言ってた」

「後輩?!そいつ、先輩の彼氏を取ったの?変態だね、キモッ」
「アヤ、いいすぎ」

アヤをたしなめつつ、言ってもらってスッキリしてる私もいる。
私って情緒不安定かな。

「で、ユキ、今どこにいるの?」
「県外の親戚の家。すごくよくしてもらってる」
「そっか。また、遊べる?」
「そうね、いいよ。落ち着いたら連絡するし」
「今度はちゃんと電話、取ってよ?」

アヤに冷やかされ、別れ際に実家に連絡した。

すると、お母さんがものすごく動揺した声で出た。なんかあったのかな?

「あ、おかあさん、なんかあったの?今からそっちに寄ろうと思うんだけど」

その一言にお母さんが、慌ててダメという。

《ユキ、今はダメ。表にまだテル君がいるかもしれない》

えええ?!どういうこと?

「え?!なんでテルがいるのよ」

慌てる私に、アヤも思わず耳がダンボになっている。


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