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思いやりの玉子丼
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実家近くにテルがいる。
それだけで私の顔色がずいぶん悪くなったのを見て、アヤが心配してくれる。
「なんで、テルが居るの?」
私が聞くと、普段温厚なお母さんも一声で不快感がわかるくらい吐き捨てるように言う。
《ユキがどこにいるのか知りたいって。ふざけてるわよね。もう関係ないでしょう?って
追い返したんだけど、僕のせいでアパート出て行ったんならもう一度謝りたいって。
すごくしつこかったのよ》
謝るって今更だしきっと、アヤにバレたからだろうな。
共通の友達が多い分、アヤに知れたら瞬く間に周知するし。
《でもね、たまたまお父さんが居てくれてね~、騒ぎを聞きつけて出てきてくれたの》
え。お父さん居たのか。でも、なんかお母さん嬉しそうじゃない??
《お父さん、お前はユキに何をした!謝るのはお前が楽になりたいからだろうが!
ユキをこれ以上傷つけることは許さん、出ていけ!!って怒鳴ってつまみ出してくれたの
もう、男らしいったら♪ 惚れ直しちゃった》
あーーー。お父さん、テルとの交際は大反対だったからね。
最近でこそ、そろそろ諦めたってこぼしてたから怒り心頭だったんだな。
それにしてもお母さんが意外に乙女でびっくりしたわ、なんか、わが親ながら
バカップルみたい。
「で、まだテルが表にいるの?」
《そうなのよ。もしかしたらユウキに聞き出そうとしてるのかもしれないわね
仲良かったみたいだからね。一応メールで教えたら勘当だって釘差しといたけど
ついでに、テル君のお母さんにも迷惑ですから引き取ってくださいって
連絡しといた》
不味いな、会いたくないし、これから駅に直行するか。
「ユキ、そのまま帰っちゃうの?駅まで送ってくよ」
アヤが、心配そうに申し出てくれた。その方がよさそうだ。
そのままエミさんのところに帰ることにした。
「有難う、アヤ。またメールするね」
アヤは、笑顔でうなづいてくれた。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
電車を乗り継いでようやく帰ってきた。
「ただいまー」
靴を脱ぎながら声をかけると台所からいいにおいがした。
「ああ、お帰りー。早かったねご飯食べる?」
いつもどうりのエミさんの顔にホッとする。
「エミさん、今日は何?」
「今日は、エビとえのきの玉子丼だよー」
台所に行くと、見ただけで新鮮とわかるむき海老と、えのきとかまぼこがあった。
「丁度ね、ロクさんが、むきエビのいいのがあるって届けてもらってね」
500ミリの計量カップの水を鍋に注ぎ、沸騰したところに顆粒だしを入れて、
むきエビをひとパック入れる。えのきを軸を切り落として半分に切って鍋に投入。
そのあと、かまぼこを薄くスライスして短冊のように切って投入する。
まるで流れるよいうな作業につい見とれてしまった。
そのあと、醤油と塩で味を調えて水溶き片栗粉をゆっくり投入する。
あれ?玉子丼って言ってなかったっけ?
鍋の中にはえのきとエビとかまぼこがゆっくり踊っている。
そして、やっと登場、卵を3つ割って軽く混ぜて静かに細く流していくと
卵がふわっと固まっていった。すごくきれいだ。
軽く混ぜていたせいか、まだ白身のところと黄身のところが混ぜきれてなくて
それも鍋の中を華やかにしてる気がする。
最後に三つ葉をきったものをぱらっと入れて完成したらしい。火を止めた。
イイ匂いがする。
「一緒に食べようか」エミさんの笑顔は、すごく優しかった。
「丼にご飯を食べれる分だけ盛っておいで」
私は、このぐらいかな、っていう量を盛って渡す。
お玉から緩やかに流れる卵の白、エビの赤、三つ葉の緑がすごく鮮やかに見える。
エミさんも自分の分、と取り分けて一緒に食べる。
すごくおいしいわ。というか、胃が荒れていたり酒飲んだ後だったら最高だわ。
今日はお酒は飲まずに帰ってきたけど、もしかしたらこれ、私の為に考えてくれたのかな。
有り難いわ。
「エミさん、今日ねハロワに行ってきたんだけどね、住民票どうしようか考えてるの」
「ユキちゃんはどうしたい?私は、どっちでも構わないよ。追い出しゃしないさ。ただ、
住民票をこっちに移す方が便利だとは思うよ。今のままじゃ図書館とか市役所とか
利用できないからね」
そういえば、そんなこと、考えてなかったな。
エミさんもいいと言ってくれているから、こっちで本腰入れて住もうかなって
考えた。早速明日手続きにいこう。
今まではなんとなく住んでいたこの家だったけど、エミさんに本格的にお世話になることにした。
それだけで私の顔色がずいぶん悪くなったのを見て、アヤが心配してくれる。
「なんで、テルが居るの?」
私が聞くと、普段温厚なお母さんも一声で不快感がわかるくらい吐き捨てるように言う。
《ユキがどこにいるのか知りたいって。ふざけてるわよね。もう関係ないでしょう?って
追い返したんだけど、僕のせいでアパート出て行ったんならもう一度謝りたいって。
すごくしつこかったのよ》
謝るって今更だしきっと、アヤにバレたからだろうな。
共通の友達が多い分、アヤに知れたら瞬く間に周知するし。
《でもね、たまたまお父さんが居てくれてね~、騒ぎを聞きつけて出てきてくれたの》
え。お父さん居たのか。でも、なんかお母さん嬉しそうじゃない??
《お父さん、お前はユキに何をした!謝るのはお前が楽になりたいからだろうが!
ユキをこれ以上傷つけることは許さん、出ていけ!!って怒鳴ってつまみ出してくれたの
もう、男らしいったら♪ 惚れ直しちゃった》
あーーー。お父さん、テルとの交際は大反対だったからね。
最近でこそ、そろそろ諦めたってこぼしてたから怒り心頭だったんだな。
それにしてもお母さんが意外に乙女でびっくりしたわ、なんか、わが親ながら
バカップルみたい。
「で、まだテルが表にいるの?」
《そうなのよ。もしかしたらユウキに聞き出そうとしてるのかもしれないわね
仲良かったみたいだからね。一応メールで教えたら勘当だって釘差しといたけど
ついでに、テル君のお母さんにも迷惑ですから引き取ってくださいって
連絡しといた》
不味いな、会いたくないし、これから駅に直行するか。
「ユキ、そのまま帰っちゃうの?駅まで送ってくよ」
アヤが、心配そうに申し出てくれた。その方がよさそうだ。
そのままエミさんのところに帰ることにした。
「有難う、アヤ。またメールするね」
アヤは、笑顔でうなづいてくれた。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
電車を乗り継いでようやく帰ってきた。
「ただいまー」
靴を脱ぎながら声をかけると台所からいいにおいがした。
「ああ、お帰りー。早かったねご飯食べる?」
いつもどうりのエミさんの顔にホッとする。
「エミさん、今日は何?」
「今日は、エビとえのきの玉子丼だよー」
台所に行くと、見ただけで新鮮とわかるむき海老と、えのきとかまぼこがあった。
「丁度ね、ロクさんが、むきエビのいいのがあるって届けてもらってね」
500ミリの計量カップの水を鍋に注ぎ、沸騰したところに顆粒だしを入れて、
むきエビをひとパック入れる。えのきを軸を切り落として半分に切って鍋に投入。
そのあと、かまぼこを薄くスライスして短冊のように切って投入する。
まるで流れるよいうな作業につい見とれてしまった。
そのあと、醤油と塩で味を調えて水溶き片栗粉をゆっくり投入する。
あれ?玉子丼って言ってなかったっけ?
鍋の中にはえのきとエビとかまぼこがゆっくり踊っている。
そして、やっと登場、卵を3つ割って軽く混ぜて静かに細く流していくと
卵がふわっと固まっていった。すごくきれいだ。
軽く混ぜていたせいか、まだ白身のところと黄身のところが混ぜきれてなくて
それも鍋の中を華やかにしてる気がする。
最後に三つ葉をきったものをぱらっと入れて完成したらしい。火を止めた。
イイ匂いがする。
「一緒に食べようか」エミさんの笑顔は、すごく優しかった。
「丼にご飯を食べれる分だけ盛っておいで」
私は、このぐらいかな、っていう量を盛って渡す。
お玉から緩やかに流れる卵の白、エビの赤、三つ葉の緑がすごく鮮やかに見える。
エミさんも自分の分、と取り分けて一緒に食べる。
すごくおいしいわ。というか、胃が荒れていたり酒飲んだ後だったら最高だわ。
今日はお酒は飲まずに帰ってきたけど、もしかしたらこれ、私の為に考えてくれたのかな。
有り難いわ。
「エミさん、今日ねハロワに行ってきたんだけどね、住民票どうしようか考えてるの」
「ユキちゃんはどうしたい?私は、どっちでも構わないよ。追い出しゃしないさ。ただ、
住民票をこっちに移す方が便利だとは思うよ。今のままじゃ図書館とか市役所とか
利用できないからね」
そういえば、そんなこと、考えてなかったな。
エミさんもいいと言ってくれているから、こっちで本腰入れて住もうかなって
考えた。早速明日手続きにいこう。
今まではなんとなく住んでいたこの家だったけど、エミさんに本格的にお世話になることにした。
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