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戻れない夜のかしみん焼き
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祭りの後、ざわざわした月の美しい夜に思いがけない人物が現れた。
せっかくの大吟醸を半分こぼしてしまったがそれどころじゃない。
「何でここにいるの?ハルカちゃん!!」
私に後ろからタックルをかましたのは、テルの妹のハルカちゃんだった。
あまりのことに思わず固まる私と、突然知らない女子高生に睨まれる格好になったマサキさん。
ハルカちゃんは、私の顔を見ると大きな声で大号泣し始めた。
「やっと、見つけたよ!!ユキちゃん~~~~会いたかった~~」
泣くばかりで収拾がつかないので、とりあえずハルカちゃんをうちに連れて帰ることにした。
「ごめん、今日は帰るわ」
「お、おう……気を付けて」
お互いぎこちない。
泣きじゃくるハルカちゃんを、落ち着かせなくちゃ。
エミさんに連絡してOKを貰えたので家に直行する。
帰る道すがら、少し落ち着いたようだけど、ハルカちゃんがずっとうつむいている。
何話しかけても無言を貫くハルカちゃんになすすべなく次第に私も無言になる。
静かな夜の道、ふたりでただ、歩いた。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
「おかえりー、ごくろうさんだったね、ユキちゃん。その子かい?お客さんは」
出迎えてくれたエミさんは、眼が真っ赤にはれ上がっているハルカちゃんを見て驚く。
が、まぁ上がんなさいと台所に通して、タオルを氷水で絞りハルカちゃんの目を冷やす。
「冷たっ!!」
「ありがとう、エミさん。とりあえずこの子の家に連絡するわ」
とスマホを出すとハルカちゃんがダメ!!と大きな声を出す。
「だめって言っても家の人、心配するでしょ?」
「今日は家にお兄ちゃんとバカ女が居るの。昼のテレビでユキちゃんが映って、
この街にいるって判ったから探しに来たの」
テルの一家+あいちゃんにこの街在住がバレました。頭が痛いデス。
「ハルカは、ユキちゃんにお姉ちゃんになって欲しいけど、ダメなの?」
必死なお願いだけど、かなえてあげられない事だ。答えに窮していると
エミさんがココアを入れてきてくれた。
「今日は遅いし泊っていきなさい、ハルカちゃん?」
エミさんが優しく言う。
「ここに泊っていく事は私が電話してあげるから、心配しなくていいよ」
そういって、エミさんは私にハルカちゃんの家に電話を掛けるようにいい、スマホを受け取る。
電話に出たテルのお母さんは、安心したのか涙声で話をしていたんだそうだ。
「電話の後ろで若い男が騒いでいたけど、お母さんが阻止してたねぇ」
と何とも物騒な話をしていた。なんでもお前に話す資格はないって蹴とばすような音もしたそうだ。
「ハルカちゃん、おなか空いたろう? 簡単なものしかできないけど用意するわ」
そういってエミさんは、キャベツとトリのムネ肉、紅ショウガにねぎ、玉子そして肉屋さんでもらってきた牛脂を取り出した。
「この間、友達のうちに遊びに行ってね、教えてもらったの。大阪の岸和田に嫁いでたのが
こっちに帰ってきていて仲良しグループでごはん食べたときに」
ああ、私がお留守番頼まれた時だ。その時の様子を思い出したのか、エミさんは思わず笑った。
「仲間内で一番内気で無口だったのに、ヒョウ柄着てよくしゃべる人になってたのよ」
そういいながら手は動く。キャベツを手際よく千切りにしてムネ肉とねぎ、紅ショウガ牛脂もみじん切りにする。
お土産にもらったっていうお好み焼きミックスっていう粉を100グラム、水一杯半(300cc)と玉子を一個割入れて混ぜる。これで生地が出来たらしい。
フライパンを煙が出るまで温めて、油を敷き生地をお玉一杯分薄く丸く広げてキャベツとみじん切りにした具をのっけてもう一度お玉半分の生地をかけた。
フライ返しで底が固まってキツネ色になったのを見計らってひっくり返し、表も同じように焼いていってもう一度ひっくり返して火が通ったら、お皿にとり、ソースと鰹節をかけて完成。
「さぁおあがり。お腹すいただろう?食べ盛りなんだから遠慮しないで」
その声に、ハルカちゃんは私を見る。私がいいよ、とうなづくとお箸を取った。
「キャベツって食べると痩せるんだって、知ってたかい?」
そうエミさんがハルカちゃんにウィンクするとハルカちゃん勢いよく食べ始めた。
「え?!エミさんそれ、マジですか!!!」
私もその話に興味深々だ。もし本当だったら明日から私は青虫のようにキャベツを食べよう。
「キャベツに食物繊維が豊富なのと、カロリー低いのに満腹感が得られるからだって。
お好み焼きみたいに温野菜にしたら嵩も減るし量が食べれるからね。もちろんそればっかり食べたら偏るからリバウンドがすごいよ。ポイントは、トリのムネ肉のみじん切りさ。良質のたんぱく質が取れるからね。食べ盛りにはいいことづくめなの」
へえ。まぁやりすぎはよくないってことね。
「エミさん、私も食べたい」
「ユキちゃんは自分で焼きなさい、材料はあるからね」と、笑われた。
ぎこちなかった雰囲気は少しずつ溶けて行って、ハルカちゃんが昔みたいに笑ってくれているのがうれしかった。
==========================================
作者のひとりごと。
かしみん焼きというのは、大阪の泉州地方の郷土粉もん料理です。
かしわ、というのは大阪では鶏肉のことでかしわをミンチにするからかしみん焼きといいます。
手軽にできるのでもっぱら軽い食事やおやつや酒の肴にしているそうです。
せっかくの大吟醸を半分こぼしてしまったがそれどころじゃない。
「何でここにいるの?ハルカちゃん!!」
私に後ろからタックルをかましたのは、テルの妹のハルカちゃんだった。
あまりのことに思わず固まる私と、突然知らない女子高生に睨まれる格好になったマサキさん。
ハルカちゃんは、私の顔を見ると大きな声で大号泣し始めた。
「やっと、見つけたよ!!ユキちゃん~~~~会いたかった~~」
泣くばかりで収拾がつかないので、とりあえずハルカちゃんをうちに連れて帰ることにした。
「ごめん、今日は帰るわ」
「お、おう……気を付けて」
お互いぎこちない。
泣きじゃくるハルカちゃんを、落ち着かせなくちゃ。
エミさんに連絡してOKを貰えたので家に直行する。
帰る道すがら、少し落ち着いたようだけど、ハルカちゃんがずっとうつむいている。
何話しかけても無言を貫くハルカちゃんになすすべなく次第に私も無言になる。
静かな夜の道、ふたりでただ、歩いた。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
「おかえりー、ごくろうさんだったね、ユキちゃん。その子かい?お客さんは」
出迎えてくれたエミさんは、眼が真っ赤にはれ上がっているハルカちゃんを見て驚く。
が、まぁ上がんなさいと台所に通して、タオルを氷水で絞りハルカちゃんの目を冷やす。
「冷たっ!!」
「ありがとう、エミさん。とりあえずこの子の家に連絡するわ」
とスマホを出すとハルカちゃんがダメ!!と大きな声を出す。
「だめって言っても家の人、心配するでしょ?」
「今日は家にお兄ちゃんとバカ女が居るの。昼のテレビでユキちゃんが映って、
この街にいるって判ったから探しに来たの」
テルの一家+あいちゃんにこの街在住がバレました。頭が痛いデス。
「ハルカは、ユキちゃんにお姉ちゃんになって欲しいけど、ダメなの?」
必死なお願いだけど、かなえてあげられない事だ。答えに窮していると
エミさんがココアを入れてきてくれた。
「今日は遅いし泊っていきなさい、ハルカちゃん?」
エミさんが優しく言う。
「ここに泊っていく事は私が電話してあげるから、心配しなくていいよ」
そういって、エミさんは私にハルカちゃんの家に電話を掛けるようにいい、スマホを受け取る。
電話に出たテルのお母さんは、安心したのか涙声で話をしていたんだそうだ。
「電話の後ろで若い男が騒いでいたけど、お母さんが阻止してたねぇ」
と何とも物騒な話をしていた。なんでもお前に話す資格はないって蹴とばすような音もしたそうだ。
「ハルカちゃん、おなか空いたろう? 簡単なものしかできないけど用意するわ」
そういってエミさんは、キャベツとトリのムネ肉、紅ショウガにねぎ、玉子そして肉屋さんでもらってきた牛脂を取り出した。
「この間、友達のうちに遊びに行ってね、教えてもらったの。大阪の岸和田に嫁いでたのが
こっちに帰ってきていて仲良しグループでごはん食べたときに」
ああ、私がお留守番頼まれた時だ。その時の様子を思い出したのか、エミさんは思わず笑った。
「仲間内で一番内気で無口だったのに、ヒョウ柄着てよくしゃべる人になってたのよ」
そういいながら手は動く。キャベツを手際よく千切りにしてムネ肉とねぎ、紅ショウガ牛脂もみじん切りにする。
お土産にもらったっていうお好み焼きミックスっていう粉を100グラム、水一杯半(300cc)と玉子を一個割入れて混ぜる。これで生地が出来たらしい。
フライパンを煙が出るまで温めて、油を敷き生地をお玉一杯分薄く丸く広げてキャベツとみじん切りにした具をのっけてもう一度お玉半分の生地をかけた。
フライ返しで底が固まってキツネ色になったのを見計らってひっくり返し、表も同じように焼いていってもう一度ひっくり返して火が通ったら、お皿にとり、ソースと鰹節をかけて完成。
「さぁおあがり。お腹すいただろう?食べ盛りなんだから遠慮しないで」
その声に、ハルカちゃんは私を見る。私がいいよ、とうなづくとお箸を取った。
「キャベツって食べると痩せるんだって、知ってたかい?」
そうエミさんがハルカちゃんにウィンクするとハルカちゃん勢いよく食べ始めた。
「え?!エミさんそれ、マジですか!!!」
私もその話に興味深々だ。もし本当だったら明日から私は青虫のようにキャベツを食べよう。
「キャベツに食物繊維が豊富なのと、カロリー低いのに満腹感が得られるからだって。
お好み焼きみたいに温野菜にしたら嵩も減るし量が食べれるからね。もちろんそればっかり食べたら偏るからリバウンドがすごいよ。ポイントは、トリのムネ肉のみじん切りさ。良質のたんぱく質が取れるからね。食べ盛りにはいいことづくめなの」
へえ。まぁやりすぎはよくないってことね。
「エミさん、私も食べたい」
「ユキちゃんは自分で焼きなさい、材料はあるからね」と、笑われた。
ぎこちなかった雰囲気は少しずつ溶けて行って、ハルカちゃんが昔みたいに笑ってくれているのがうれしかった。
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作者のひとりごと。
かしみん焼きというのは、大阪の泉州地方の郷土粉もん料理です。
かしわ、というのは大阪では鶏肉のことでかしわをミンチにするからかしみん焼きといいます。
手軽にできるのでもっぱら軽い食事やおやつや酒の肴にしているそうです。
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