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クモの糸6
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「テル君とユキと幼馴染で、学校も高校まではずっと一緒だったから友人関係は、ほぼかぶってるのね。はっきり言ってユキを不幸にした女を祝うなんてばかばかしくて、みんな欠席するって出席に大きくバツを付けてハガキ送り返したの。男連中も、それぞれの彼女とかユキちゃんと仲良しも多いから、欠席しなきゃ別れるよってお尻叩いているらしくてほぼ全員欠席。幼馴染の親たちも、ユキちゃんとテル君に同情してるし、新しい彼女は冷たい目で見ているのが現状」
アヤが今の実家周辺の情報をかいつまんで教えてくれた。
「ハルカちゃんは寮生活でこっちに帰って来ないけど、ゴールデンウィークに帰省した時に家出したって言ってたし、テル君のお姉ちゃんもユキちゃんにやらかしたことにふたりにブチ切れてたって言ってた」
「それで、ふたりの仲は順調なんですか?」
タカシさんが聞く。
「それがね、テル君と新カノが一緒に歩いてるところを見た人の話では、とてももうすぐ結婚するカップルには見えなくて、テル君日に日に顔色が悪くなっていってるって。その女もなんか無表情だしなんの罰ゲームなんだって噂してたわ」
テル、俺が守らなきゃって息巻いていたのは何だったんだ!とイラっとしてしまった。
「そりゃ、失って初めてわかる有り難さだったんじゃないの? しょうもない女に引っかかったばっかりにこんないい女手放すなんて。言ってなかったけど、ユキのこと狙ってる男は一杯いたんだよ」
アヤは今頃わかっても遅いけどねって笑ってた。
「だからって戻ってこられたら迷惑だ」
ぼそっとマサキさんが怒気交じりに言う。
「とにかく、ふたりはうまくいってない。ツレと飲みに行ったとき酔った勢いからかユキに会いたい、もう一度やり直したいってグチグチ言ってたって。バカだね。そのツレも呆れてたわ」
その話を聞いて、本当に馬鹿だなって思った。でもなんか可哀想にもなった。やっぱり私、情緒不安定なのかな。もう戻れないし戻りたくない。揺れてるかもしれないけどしっかりしなきゃ。
「話を整理すると、略奪女と元カレは上手くいってない。元カレは後悔していてユキちゃんに未練がある。ご近所からも職場からも冷ややかな目で見られている。そして、結婚式の出席者はほぼ親族だけってこと?」
議長モードのタカシさんが話を整理する。その場の全員が納得した。現状はそうだよね。
「そこで、おふたりにお願いしたいことがあるんですが」
タカシさんが改まってアヤとクミちゃんそれぞれに、あるお願いをした。
ふたりは、そういう事なら任せといて、とがっちり握手をする。
「略奪女を徹底的に叩きのめしましょう。二度とおイタが出来ないように」
そして、足を運んでもらったお礼に近くの居酒屋に行くと、商店街の若手の何人かがすでに飲んでいた。なんだかご機嫌な様子で楽しそうにしていたら、電気屋のエイジさんが手を振ってくる。
「おーい。マサキにタカシ、かわいい女の子連れてるね~一緒に飲もうよー」
すでに酔っぱらいモード?に入っている。
なし崩しに合流して、なんだかんだで楽しい飲み会になった。
アヤとクミちゃんもすごく笑っている。久々の飲み会に私もなんだかほろ酔いになって、色んな心配事も少し解消された気になる。
お開きの時間になって、アヤとクミちゃんを駅まで送っていく。商店街の男性陣もついてきてくれる。
見送りもにぎやかに、アヤとクミちゃんも満面の笑みで手を振り改札を通っていった。
ほろ酔いの私を心配して、マサキさんも家まで送ってくれるっていう話になり、お言葉に甘えて送ってもらう事にした。
月がきれいで肌寒い夜の道。明るい日差しの中では輝くように咲いている花々も少し控えめな月の光に佇んでいる。
静かな夜の道、ふたりは何を話すこともなく家に向かう。家の生け垣が見えてきたとき、ふとマサキさんは足を止めて私を振り返る。
「ユキちゃん、絶対に護るからね」
マサキさんの真剣な顔に思わず見入ってしまう。
「有難う、頼りにしてるね」そう、しばらくしてから言葉を返す。
マサキさんは、ホントに大人だ。すごく安定感がある。いざとなった時に助けてくれるって確信出来る何かを醸し出している。
こんなに素敵な人が彼氏だったらなぁ、とつまらない妄想をするのは現実逃避したいからかな。
今日が満月だからなのか、つい感情的になる。
アヤが今の実家周辺の情報をかいつまんで教えてくれた。
「ハルカちゃんは寮生活でこっちに帰って来ないけど、ゴールデンウィークに帰省した時に家出したって言ってたし、テル君のお姉ちゃんもユキちゃんにやらかしたことにふたりにブチ切れてたって言ってた」
「それで、ふたりの仲は順調なんですか?」
タカシさんが聞く。
「それがね、テル君と新カノが一緒に歩いてるところを見た人の話では、とてももうすぐ結婚するカップルには見えなくて、テル君日に日に顔色が悪くなっていってるって。その女もなんか無表情だしなんの罰ゲームなんだって噂してたわ」
テル、俺が守らなきゃって息巻いていたのは何だったんだ!とイラっとしてしまった。
「そりゃ、失って初めてわかる有り難さだったんじゃないの? しょうもない女に引っかかったばっかりにこんないい女手放すなんて。言ってなかったけど、ユキのこと狙ってる男は一杯いたんだよ」
アヤは今頃わかっても遅いけどねって笑ってた。
「だからって戻ってこられたら迷惑だ」
ぼそっとマサキさんが怒気交じりに言う。
「とにかく、ふたりはうまくいってない。ツレと飲みに行ったとき酔った勢いからかユキに会いたい、もう一度やり直したいってグチグチ言ってたって。バカだね。そのツレも呆れてたわ」
その話を聞いて、本当に馬鹿だなって思った。でもなんか可哀想にもなった。やっぱり私、情緒不安定なのかな。もう戻れないし戻りたくない。揺れてるかもしれないけどしっかりしなきゃ。
「話を整理すると、略奪女と元カレは上手くいってない。元カレは後悔していてユキちゃんに未練がある。ご近所からも職場からも冷ややかな目で見られている。そして、結婚式の出席者はほぼ親族だけってこと?」
議長モードのタカシさんが話を整理する。その場の全員が納得した。現状はそうだよね。
「そこで、おふたりにお願いしたいことがあるんですが」
タカシさんが改まってアヤとクミちゃんそれぞれに、あるお願いをした。
ふたりは、そういう事なら任せといて、とがっちり握手をする。
「略奪女を徹底的に叩きのめしましょう。二度とおイタが出来ないように」
そして、足を運んでもらったお礼に近くの居酒屋に行くと、商店街の若手の何人かがすでに飲んでいた。なんだかご機嫌な様子で楽しそうにしていたら、電気屋のエイジさんが手を振ってくる。
「おーい。マサキにタカシ、かわいい女の子連れてるね~一緒に飲もうよー」
すでに酔っぱらいモード?に入っている。
なし崩しに合流して、なんだかんだで楽しい飲み会になった。
アヤとクミちゃんもすごく笑っている。久々の飲み会に私もなんだかほろ酔いになって、色んな心配事も少し解消された気になる。
お開きの時間になって、アヤとクミちゃんを駅まで送っていく。商店街の男性陣もついてきてくれる。
見送りもにぎやかに、アヤとクミちゃんも満面の笑みで手を振り改札を通っていった。
ほろ酔いの私を心配して、マサキさんも家まで送ってくれるっていう話になり、お言葉に甘えて送ってもらう事にした。
月がきれいで肌寒い夜の道。明るい日差しの中では輝くように咲いている花々も少し控えめな月の光に佇んでいる。
静かな夜の道、ふたりは何を話すこともなく家に向かう。家の生け垣が見えてきたとき、ふとマサキさんは足を止めて私を振り返る。
「ユキちゃん、絶対に護るからね」
マサキさんの真剣な顔に思わず見入ってしまう。
「有難う、頼りにしてるね」そう、しばらくしてから言葉を返す。
マサキさんは、ホントに大人だ。すごく安定感がある。いざとなった時に助けてくれるって確信出来る何かを醸し出している。
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