29 / 71
飲み過ぎた夜のトリ雑炊
しおりを挟む
現在の時刻は午後10時。
家に着いて鍵を開けようとしたら、玄関に明かりがついていた。
あれ?エミさんは、まだ起きてるのかな?
いつもなら9時には電気が消えてるのに。
玄関の引き戸を開けると木とガラスの軋む音が響く。
「おかえりー、なんだか酒臭いわね。楽しんでた?」
エミさんが笑顔で出迎えてくれた。
台所に連れていかれて冷たい水を頂く。
久しぶりに幼馴染とご飯食べていたと説明するけど、エミさんは静かに笑うだけ。
そう、良かったねって。
「飲んだ人はそろそろ小腹が空く頃でしょう?」
悪戯っぽく笑うエミさんがとっておきのお酒の〆を用意してくれるらしい。
冷蔵庫から鶏の胸肉を出してきて薄くそぎ切りにする。
エミさん、小鍋を出して水からお湯になるまで、
入れたそぎ切りにした鶏肉を5分くらい入れて火を通し
火を止めて鶏肉をいったん小皿に取り出して裂き、避けておいて、
冷蔵庫から出してきた柴漬けを細かく刻んで準備している。
そのゆで汁を再沸騰。鶏がらスープの素を足して冷ご飯を入れる。
ご飯がほぐれたあたりで刻んだ柴漬けを入れて塩コショウで味を調える。
少し汁気にとろみがついてくるまで待ち、その間に取り出しておいた胸肉を裂いておく。
出来上がったものを大ぶりのお椀によそって、裂いておいた鶏肉を載せて三つ葉を飾りにして
出してくれた。柴漬けの色が移って色味はいまいちだけどいいにおい。
相変わらず本当に見ている間においしいご飯が出来上がる。
「いただきまーす」
酒飲んだ後にこれって本当においしいわ。色は柴漬けが強烈に主張して薄紫に染まっているけれど、この細かく刻んだ柴漬けの歯触りが何とも言えなくていい感じ。彩りに関してはミツバの緑が鮮やかに見える。
エミさんのご飯って本当においしい。なんか心まで温かくなるような思いやりの詰まった料理。
こんなご飯を作ってあげられるような人になりたいな、と思った。
「ユキちゃんは、何でも美味しそうに食べてくれるから作り甲斐があるわね」
エミさん、笑顔で言ってくれる。
「やっぱりね、誰かとご飯を食べるって幸せなことなのよ。話し相手がテレビだけとかね、やっぱし寂しいじゃない? まぁ、選んでずっと仕事に生きてきたわけだけど、この年になると人生の分岐点をいろいろと考えちゃうのよ。もちろん選んでここにいるわけだから後悔してないんだけどね。だから一緒にこうして暮らしてくれて、ユキちゃんには感謝してるのよ。こんなばあさんの世話なんて引き受けてくれちゃってね。ありがとう、ユキちゃん」
「エミさん……。私も、ここに置いてもらって感謝してる。ありがとう」
いつも笑ってるエミさんが、心の内を話してくれているのになぜか軽い衝撃を受けた。
いつも自信があって、いろんな人から頼りにされて豪快に笑ってなんでもそつなくこなしてるってイメージがあったけど、しみじみと語る、エミさんの言葉に少し考えてしまった。
「ところでマサキ君、イイ男でしょ?」
エミさん、なんだかすごーーく嬉しそうに聞いてくる。
あれ?
「ユキちゃん待ってたら聞こえちゃったのよーん。俺が護るからって。きゃあああユキちゃん青春よねぇ」
エミさんに変なスイッチが入った。初めて見たよ、エミさんの乙女モード。
頬を染めて両手で頬を抑えて身もだえしている。
「エミさーーん、こっちの世界に帰ってきてくださいよーー」
エミさんも満月でおかしくなっちゃってるのかな、と、私は見なかったことにして
黙々とご飯を食べることにした。
===================================
作者のひとりごと
鶏の胸肉は安くて栄養があって我が家のマストアイテムです。
今回のレシピの応用で、沸騰したお湯を止めてそぎ切りにしたものを鍋の中に入れて30分位ほっておいて、お湯が冷めきった時に取り出した鶏肉を細かく裂き、きゅうりの千切りにトマトのクシ切りを添えて、ごまだれをかけるとバンバンジーもどきになります。残ったゆで汁を再沸騰してわかめともやしとごまを振り、鶏がらスープを少し足して塩コショウでスープにすると無駄なくおかず2品作れます。このスープにお好みでごま油を垂らすとより美味しくなります。忙しい主婦の為の手抜きスピードメニューとして、近所のシングルマザーやっていたおばあちゃんから教わりました。
家に着いて鍵を開けようとしたら、玄関に明かりがついていた。
あれ?エミさんは、まだ起きてるのかな?
いつもなら9時には電気が消えてるのに。
玄関の引き戸を開けると木とガラスの軋む音が響く。
「おかえりー、なんだか酒臭いわね。楽しんでた?」
エミさんが笑顔で出迎えてくれた。
台所に連れていかれて冷たい水を頂く。
久しぶりに幼馴染とご飯食べていたと説明するけど、エミさんは静かに笑うだけ。
そう、良かったねって。
「飲んだ人はそろそろ小腹が空く頃でしょう?」
悪戯っぽく笑うエミさんがとっておきのお酒の〆を用意してくれるらしい。
冷蔵庫から鶏の胸肉を出してきて薄くそぎ切りにする。
エミさん、小鍋を出して水からお湯になるまで、
入れたそぎ切りにした鶏肉を5分くらい入れて火を通し
火を止めて鶏肉をいったん小皿に取り出して裂き、避けておいて、
冷蔵庫から出してきた柴漬けを細かく刻んで準備している。
そのゆで汁を再沸騰。鶏がらスープの素を足して冷ご飯を入れる。
ご飯がほぐれたあたりで刻んだ柴漬けを入れて塩コショウで味を調える。
少し汁気にとろみがついてくるまで待ち、その間に取り出しておいた胸肉を裂いておく。
出来上がったものを大ぶりのお椀によそって、裂いておいた鶏肉を載せて三つ葉を飾りにして
出してくれた。柴漬けの色が移って色味はいまいちだけどいいにおい。
相変わらず本当に見ている間においしいご飯が出来上がる。
「いただきまーす」
酒飲んだ後にこれって本当においしいわ。色は柴漬けが強烈に主張して薄紫に染まっているけれど、この細かく刻んだ柴漬けの歯触りが何とも言えなくていい感じ。彩りに関してはミツバの緑が鮮やかに見える。
エミさんのご飯って本当においしい。なんか心まで温かくなるような思いやりの詰まった料理。
こんなご飯を作ってあげられるような人になりたいな、と思った。
「ユキちゃんは、何でも美味しそうに食べてくれるから作り甲斐があるわね」
エミさん、笑顔で言ってくれる。
「やっぱりね、誰かとご飯を食べるって幸せなことなのよ。話し相手がテレビだけとかね、やっぱし寂しいじゃない? まぁ、選んでずっと仕事に生きてきたわけだけど、この年になると人生の分岐点をいろいろと考えちゃうのよ。もちろん選んでここにいるわけだから後悔してないんだけどね。だから一緒にこうして暮らしてくれて、ユキちゃんには感謝してるのよ。こんなばあさんの世話なんて引き受けてくれちゃってね。ありがとう、ユキちゃん」
「エミさん……。私も、ここに置いてもらって感謝してる。ありがとう」
いつも笑ってるエミさんが、心の内を話してくれているのになぜか軽い衝撃を受けた。
いつも自信があって、いろんな人から頼りにされて豪快に笑ってなんでもそつなくこなしてるってイメージがあったけど、しみじみと語る、エミさんの言葉に少し考えてしまった。
「ところでマサキ君、イイ男でしょ?」
エミさん、なんだかすごーーく嬉しそうに聞いてくる。
あれ?
「ユキちゃん待ってたら聞こえちゃったのよーん。俺が護るからって。きゃあああユキちゃん青春よねぇ」
エミさんに変なスイッチが入った。初めて見たよ、エミさんの乙女モード。
頬を染めて両手で頬を抑えて身もだえしている。
「エミさーーん、こっちの世界に帰ってきてくださいよーー」
エミさんも満月でおかしくなっちゃってるのかな、と、私は見なかったことにして
黙々とご飯を食べることにした。
===================================
作者のひとりごと
鶏の胸肉は安くて栄養があって我が家のマストアイテムです。
今回のレシピの応用で、沸騰したお湯を止めてそぎ切りにしたものを鍋の中に入れて30分位ほっておいて、お湯が冷めきった時に取り出した鶏肉を細かく裂き、きゅうりの千切りにトマトのクシ切りを添えて、ごまだれをかけるとバンバンジーもどきになります。残ったゆで汁を再沸騰してわかめともやしとごまを振り、鶏がらスープを少し足して塩コショウでスープにすると無駄なくおかず2品作れます。このスープにお好みでごま油を垂らすとより美味しくなります。忙しい主婦の為の手抜きスピードメニューとして、近所のシングルマザーやっていたおばあちゃんから教わりました。
0
あなたにおすすめの小説
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる