ヘタレ女の料理帖

津崎鈴子

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星に願いを2

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 思いがけずにエミさんがお世話をしたことのあるエドワードが遊びに来るって話を聞かされた。
よりによって七夕に予定がブッキング。 トラブルがなければいいんだけどなぁ。

 エミさんによると、エドワードは変に観光地よりは、エミさんが生まれ育った街を見て回りたいのだそうだ。そして、ちょうど休みが取れそうな時期の話になった時に七夕の逸話を話して聞かせたらしい。

 たった一日のデートの為に、男女とも一年間懸命に働くって話だよ、そして7月7日に天気が良ければ無事二人は会えるんだそうだ。その時に笹に短冊というお札を付けて願い事をするっていう風習があるんだよ、というとすごく興味を惹かれたって言ってた。

日本では有名な話でも海外では知られてないこともあるよな。
まぁよっぽど有名なグリム童話とかイソップ物語とかは伝わってくるけど、あんまし神話系って馴染みないよなぁ。星座のもとになった神話をうろ覚えくらい。

 エドワードは、最近の自分は祖父にしごきまくられてロクに休んでいない。やっぱり仕事の後は適度の休息が必要だ、作業効率が落ち、仕事へのモチベーションが低下する、そしてこんなに必死に働いた自分には女神とデートしても神には怒られないだろうという自負があるんだと7月7日の休みを交渉したそうだ。まぁ、成果を上げていなかったらいくら孫に甘いウィリアム氏も許さなかっただろうってエミさんの見解だけど、私と会うのがご褒美って大丈夫か、エドワード。ストレスすんごい溜まってそう。

 ☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・

タカシさんに、海外から友人が来ることになって、七夕の飲み会はもしかしたら参加できなくなるかも、と伝えると、ちょっと驚いていた。

「海外からの友達かぁ、ユキちゃんもさすがエミさんの親戚だよね」

と冷やかされたので、春先にやってきたエミさんの教え子のエドワードだよって伝えると
ぎょっとした顔になる。

「ああ、あのキラキラの王子様みたいな人か。どこ回るの?」

「なんか、エミさんの生まれ育った街を見て回りたいって。観光地とかより下町メインで来るそうよ」

「ああ、観光地回りとかじゃなくて、この街を知りたいっていうのか。じゃぁさぁ、その人が嫌じゃなかったら飲み会に連れてきたら?そしたらユキちゃんも参加できるし、異文化交流も出来ると思うよ」
と、タカシさんはにこにこと笑う。

 それもそうか、と納得し、じゃぁエドワードにも伝えてみるね、と返事する。
たしかに日本の居酒屋って海外の人からすごく評判がいいらしい。いろんなメニューが食べれるし、日本独自の文化でもある。観光するにはいいかもなぁ。おかげで枝豆が海外で大人気で意外に輸出が伸びているとかいないとか。

 私の返事に、タカシさんが心なしかほっとした顔をした。
アヤちゃんとクミちゃんからも彼氏募集中の女の子何人か誘っていいって聞かれたことを伝えると、それは大歓迎と喜んでくれた。ただ、略奪女みたいなのはお断りだけどね、とちょっと毒の効いた一言を言われて、さすがにそれはないよ、と思わず笑ってしまった。

商店街でも入り口広場に笹を置いて、短冊をお客さんたちにつってもらうミニイベントを開催するそうだ。
あ。ちょっとオヤジギャグっぽいけど、いい案が浮かぶ。

「ねえ、タカシさん、ちょっと思いついたんだけどね」

と前置きして思い付きを話してみる。

短冊の中で実現できそうなお願い事があれば抽選で叶えるっていう企画が出来たら面白いよね、さすがに病気が治りますようにとかは無理だけどちゃんと個人を特定できて人に不快な思いをさせないものだったら実現に一役買おうっていうの出来ないかなぁって。

題して「夢を叶えま商店街」っていうの、来年あたりに実現できないかなと提案してみた。

タカシさん、それ面白そうだね!って早速商店街の若手メンバーに招集をかけてみた。

いや、今年は無理でしょうよ?あと3週間もないよね?

タカシさんのフットワークの軽さにちょっと驚いた。
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