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上を向いて歩こう7
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変質者に襲われて、間一髪ヨーコさんに助けてもらった私。
警察の廊下で待っていてくれたマサキさんはすごく落ち込んだ顔をしていた。
自分のせいもあるのかなって悔しそうだ。
手渡してくれた防犯ブザーは青い魚の形をしていた。
なんか、かわいい。無骨な感じのマサキさん、どんな顔して選んだんだろう。
想像したらなんか愛しさがこみあげてくる。
「魚の形のなんて、売ってたんですね」
「え、まぁ。兄貴に防犯ブザーってどこで買えるのか聞いたら、ネットで買えるって教えてもらったから、探してて、今日届いたんだ」
警察署でいつまでも話も出来ないから、家まで送って貰うことにした。
今日は、もう少し一緒に居たかったから。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
家の近所の公園で、ちょっとだけ話があるって言われて、誰もいない夜の公園のベンチにふたり腰かけた。
「ユキちゃんを、危ない目にあわせてごめん。勢いでテレビが来てるのも忘れて告って迷惑かけた」
真剣なマサキさんの顔。ずっとうつむいていた。
嫌だ。なんか、あのテルとの最後の話し合いになった喫茶店の空気を思い出す。
「俺は、確かに、あの男の言う通り、ヤンチャしていた過去がある。これは消せないことだ。売られた喧嘩買ってる毎日だったよ。気が付いたら親を泣かせるまでになっててさ」
マサキさん、自嘲気味に笑う。
「人をたくさん傷つけてきた。親も泣かせた。そんな俺が、ユキちゃんの隣にいるのはふさわしくないかもしれない……今日みたいな事、今度は本当に過去に関わる奴が迷惑かけるかもしれない」
マサキさんの瞳が潤んでいる。強いひとなのに、脆く見える。なんだろう、護ってあげたくなる。
「…………うちに届けてくれる刺身ってマサキさんがさばいてくれてるんでしょう?」
マサキさん、え? と顔を向けてくる。
「すごくおいしいの。特に鯛の刺身がね、いい感じの歯ごたえと鯛の味がよくわかるような繊細な厚みが絶妙だって、エミさんがいつも褒めてるの」
マサキさん、黙って聞いてくれている。
「食べる人の身になって捌いているんだって。マサキさんが思いやりのある人だって知ってるよ。別のおばあちゃんとこにご飯呼ばれた時に食べて気が付いたんだけど、うちに届けてくれてる刺身と違うさばき方してるよね。歯が悪いおばあちゃんのとこには、噛み切りやすいように隠し包丁入れてるって感心していた」
マサキさん、再びうつむく。今度は耳まで真っ赤だ。
「私はね、いつも私を見守ってくれていることも感謝しているけど、他の人にもさりげなく思いやりや気遣いが出来るマサキさんを尊敬する」
「ユキちゃん……あの、そろそろやめてくれない?その……」
真っ赤な顔でマサキさんが私の言葉を止める。
気を悪くしたかな。ちょっと戸惑っていると、口に手を当てて、横を向く。
「あの、それ以上褒められると、理性が……もたないよ」
ダメだ、私も可愛すぎて抱きしめたくなる。
普段男前のマサキさんが照れるなんて、レアだ。
思わず抱きしめてしまった。マサキさんが驚いてこっちを向いたスキについマサキさんの唇を奪ってしまった。
こういう時は男性からとかどうでもいい。たまには私も感情の波に飲まれてやろう。
マサキさんもまさかのことに顔を赤くしている。
「私で良かったら付き合ってください。お試し期間設けてもらってもいいです、一度破談になった新古品ですから。ただ、私、マサキさんのこと大切にしたいです」
「ユキちゃん……どうして君から言っちゃうのかな……。この世の中の幸せが押し寄せてきたみたいだよ」
マサキさん、私を抱きしめ返してくれる。
「俺は卑怯者だから、もう俺から君の手は離せない。逃がしてあげられないよ?それでもいいの?」
嘘だ。きっとマサキさんは、私が嫌だと思ったらそっと見送ってくれる気がする。
でも、私ももう覚悟を決めた。もう大切なものは離さない。
瞬く星空の元、しばらく私たちは抱きしめあっていた。
警察の廊下で待っていてくれたマサキさんはすごく落ち込んだ顔をしていた。
自分のせいもあるのかなって悔しそうだ。
手渡してくれた防犯ブザーは青い魚の形をしていた。
なんか、かわいい。無骨な感じのマサキさん、どんな顔して選んだんだろう。
想像したらなんか愛しさがこみあげてくる。
「魚の形のなんて、売ってたんですね」
「え、まぁ。兄貴に防犯ブザーってどこで買えるのか聞いたら、ネットで買えるって教えてもらったから、探してて、今日届いたんだ」
警察署でいつまでも話も出来ないから、家まで送って貰うことにした。
今日は、もう少し一緒に居たかったから。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
家の近所の公園で、ちょっとだけ話があるって言われて、誰もいない夜の公園のベンチにふたり腰かけた。
「ユキちゃんを、危ない目にあわせてごめん。勢いでテレビが来てるのも忘れて告って迷惑かけた」
真剣なマサキさんの顔。ずっとうつむいていた。
嫌だ。なんか、あのテルとの最後の話し合いになった喫茶店の空気を思い出す。
「俺は、確かに、あの男の言う通り、ヤンチャしていた過去がある。これは消せないことだ。売られた喧嘩買ってる毎日だったよ。気が付いたら親を泣かせるまでになっててさ」
マサキさん、自嘲気味に笑う。
「人をたくさん傷つけてきた。親も泣かせた。そんな俺が、ユキちゃんの隣にいるのはふさわしくないかもしれない……今日みたいな事、今度は本当に過去に関わる奴が迷惑かけるかもしれない」
マサキさんの瞳が潤んでいる。強いひとなのに、脆く見える。なんだろう、護ってあげたくなる。
「…………うちに届けてくれる刺身ってマサキさんがさばいてくれてるんでしょう?」
マサキさん、え? と顔を向けてくる。
「すごくおいしいの。特に鯛の刺身がね、いい感じの歯ごたえと鯛の味がよくわかるような繊細な厚みが絶妙だって、エミさんがいつも褒めてるの」
マサキさん、黙って聞いてくれている。
「食べる人の身になって捌いているんだって。マサキさんが思いやりのある人だって知ってるよ。別のおばあちゃんとこにご飯呼ばれた時に食べて気が付いたんだけど、うちに届けてくれてる刺身と違うさばき方してるよね。歯が悪いおばあちゃんのとこには、噛み切りやすいように隠し包丁入れてるって感心していた」
マサキさん、再びうつむく。今度は耳まで真っ赤だ。
「私はね、いつも私を見守ってくれていることも感謝しているけど、他の人にもさりげなく思いやりや気遣いが出来るマサキさんを尊敬する」
「ユキちゃん……あの、そろそろやめてくれない?その……」
真っ赤な顔でマサキさんが私の言葉を止める。
気を悪くしたかな。ちょっと戸惑っていると、口に手を当てて、横を向く。
「あの、それ以上褒められると、理性が……もたないよ」
ダメだ、私も可愛すぎて抱きしめたくなる。
普段男前のマサキさんが照れるなんて、レアだ。
思わず抱きしめてしまった。マサキさんが驚いてこっちを向いたスキについマサキさんの唇を奪ってしまった。
こういう時は男性からとかどうでもいい。たまには私も感情の波に飲まれてやろう。
マサキさんもまさかのことに顔を赤くしている。
「私で良かったら付き合ってください。お試し期間設けてもらってもいいです、一度破談になった新古品ですから。ただ、私、マサキさんのこと大切にしたいです」
「ユキちゃん……どうして君から言っちゃうのかな……。この世の中の幸せが押し寄せてきたみたいだよ」
マサキさん、私を抱きしめ返してくれる。
「俺は卑怯者だから、もう俺から君の手は離せない。逃がしてあげられないよ?それでもいいの?」
嘘だ。きっとマサキさんは、私が嫌だと思ったらそっと見送ってくれる気がする。
でも、私ももう覚悟を決めた。もう大切なものは離さない。
瞬く星空の元、しばらく私たちは抱きしめあっていた。
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