ヘタレ女の料理帖

津崎鈴子

文字の大きさ
67 / 71

虹の彼方に1

しおりを挟む
 やっと自分の気持ちを自覚して、覚悟を決めた私。

なんか足元がふわふわする。
マサキさんも優しい笑顔でそばに居てくれる事がすごく幸せ。

家に着くと、エミさんが心配そうに出てくる。

「ユキちゃん!無事?」

そばにはヨーコさんがいる。

「ただいま。心配かけてごめん。ヨーコさんが守ってくれた。カッコよかったよ」

そう報告すると、エミさんヨーコさんを最大限に褒めた。ヨーコさんが照れてる。
エミさんに褒められて、特大のご褒美をもらった感じですごく嬉しそうだ。


「それから、大事な報告があるんだけど」

私とマサキさんがお互い顔を見合わせて居た事にピンと来たらしい。
エミさんが涙ぐんで応接間へ誘われた。


☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・


「私たち、正式にお付き合いする事になりました」

なんか恥ずかしいな。横を見ると、マサキさんも照れてるみたいで真っ赤だ。

「良かったわ…………本当に」

エミさんにいろいろ心配かけていたんだなぁって解るから感謝でいっぱいになる。
その横で、ヨーコさんがため息をついた。

「あ~~あ。せっかくいい人材だと思ったのになぁ~~」

え? ヨーコさんの残念がる意味がよくわからない。

「うちの会社さぁ、イベント企画とか柔軟な発想できる人材が弱くてさぁ、あんたの企画、いろいろ話聞かせてもらったら面白そうだなって思ったのよね。実際ひとりで企画立ててるの見たときにまだまだ粗削りだけどいいなぁ、欲しい人材だなぁって思ったのよねぇ」

 ヨーコさん、実家が経営している会社をいくつか手伝っていて、いずれは跡を継ぐことになっているんだって。しかもその企業っていうのが有名財閥系の企業で子供でも名前が出てくるゆりかごから墓場までを担っている複合企業だった。


ええええええ!!!!そ、そうなの?


「ユキちゃんは、魚六オレに永久就職してもらう予定なんだから諦めてくれ」

「独占欲丸出しだと愛想つかされるわよー」

にやっと笑いながらヨーコさんがマサキさんを挑発する。

になんか置いとけるか!心配過ぎるわ」

マサキさん、ヨーコさんを睨みつける。

「ヨウちゃんダメよ、からかっちゃ。でも、初々しいわねぇ~~♪」

エミさんのとっておきのお茶を飲みながら、夜は更けていった。


 翌日の夕方、いつもの居酒屋で、タカシさんやアヤやクミちゃんを呼んで正式にマサキさんと付き合うことになった事を報告すると、アヤやクミちゃん、よかったねって、泣いて喜んでくれた。

 近々実家にも挨拶に行こうと思ってると伝えるとアヤは、複雑な顔をしていた。

そうだよね。アヤにとってはテルも幼馴染だもん。どこかやりきれない思いもあるんだろうと思う。

その時、仕事終わりなのか電気屋のエイジさんが入ってきた。
アヤはエイジさんに手を振ると、エイジさんも満面の笑みでやってきた。

「こ、こんにちわ!!来てたの?!一緒に飲まない?」
デレデレのエイジさんに、アヤ、ちらりと私を見る。

はいはい、行ってらっしゃい。言いたいことは伝えたから。とうなづくとすっくと立ちあがりエイジさんとカウンター席へ移動していった。

「ユキちゃんの次はアヤちゃんかな」

クミちゃん笑っていた。

カウンターで笑顔で話をするふたりは、すごくいい雰囲気だ。
あとからあとから、商店街メンバーが集まって又楽しい飲み会が始まった。

マサキさんも冷やかされながらほろ酔い加減になっている。

そんな時、こっそりとタカシさんに呼ばれ、少し離れたテーブルに移動する。

「ごめんユキちゃん、ちょっとだけ内密の話があるんだけど」
その真剣な表情にただならぬものを感じて承諾した。

「ユキちゃん、マサキのこと本当に大切にしてくれる?」
「はい。私に出来る事ならなんだってしたいと思っています」

即答した。躊躇した答えは出来ないくらい、真剣な目だ。
なんか、大企業の最終面接の厳しさのよう。

何を見られて、どんな答えを望んでいるのか。

相手が望むのは、真実の答えだけ、そんな気がした。

「過去を知っても? なんか、告発文、来てたじゃん」

「ええ。マサキさんからも聞きました。でもその時のマサキさん、強いのに何か脆さのようなものも感じて、支えてあげたい、護ってあげたいって強く思ったんですよね」

「あいつの過去は、真っ黒だよ?そう書いてあったよね」

「ええ。過去それも含めて、今のマサキさんだから」

そう答えると、タカシさん、ふっと息をついた。

「そっか。ありがとうね。あいつのこと、大事にしてやって。ユキちゃんに心底惚れてるから」

その笑顔に、どうやらタカシさんの面接には合格したらしいと感じた。





しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

【完結】『左遷女官は風花の離宮で自分らしく咲く』 〜田舎育ちのおっとり女官は、氷の貴公子の心を溶かす〜

天音蝶子(あまねちょうこ)
キャラ文芸
宮中の桜が散るころ、梓乃は“帝に媚びた”という濡れ衣を着せられ、都を追われた。 行き先は、誰も訪れぬ〈風花の離宮〉。 けれど梓乃は、静かな時間の中で花を愛で、香を焚き、己の心を見つめなおしていく。 そんなある日、離宮の監察(監視)を命じられた、冷徹な青年・宗雅が現れる。 氷のように無表情な彼に、梓乃はいつも通りの微笑みを向けた。 「茶をお持ちいたしましょう」 それは、春の陽だまりのように柔らかい誘いだった——。 冷たい孤独を抱く男と、誰よりも穏やかに生きる女。 遠ざけられた地で、ふたりの心は少しずつ寄り添いはじめる。 そして、帝をめぐる陰謀の影がふたたび都から伸びてきたとき、 梓乃は自分の選んだ“幸せの形”を見つけることになる——。 香と花が彩る、しっとりとした雅な恋愛譚。 濡れ衣で左遷された女官の、静かで強い再生の物語。

処理中です...