【完結】ラノベ作家の異世界転生〜ぐーたら美少女天使とのラブコメ×ファンタジー〜

王一歩

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第六章 物語も終盤

47.閉ざされた扉

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 ◆

 その日の夜。
 俺は親父をカナヤの宮殿で1番見晴らしがいい場所・ベランダに呼び出した。
 街には電気が通ってない分、カンテラや松明たいまつの明かりしか存在しない。
 宮殿ではすでに一部のみ電気が普及しているが、それは限られた場所のみだ。
 そんな、まだ中世の街並みを残しているため、星はとても綺麗に夜空に映る。
 現代ならば、電光がない山奥にでも行かなきゃこうまで美しい星空は見えたりしない。

「そうか。もうこの世界に留まれる時間は少ないか。タクヤが女神様から頂いたノベルメイカーとやら、残りはどれくらい書けるんだ?」

「残り2万字だ。あと一週間くらいかな、こっちに居れるのは」

「そうか……やっと死した後の世界で出会えたというのに、なんとも呆気ない別れだな。もう少し時間があるならば、タクヤに遠未来科学の素晴らしさを教えてあげようと思ったのだが」

「いや、それは遠慮する。俺は文系なので」

 親父は寒そうに白衣を握り、プルプル震えて俺の言葉を待ってくれた。
 カナヤの夜は冷える。
 季節の概念がないってのはつまり、この世界は地球と言いながら『自転と公転』をしていないというのか。
 この上に瞬く星空も、ただ神様が演出として出したただの飾り。
 親父は試しにスペースロケットを開発して打ち上げたらしいが、その時になんらかの『手』がロケットを握り潰したと言った。
 つまり、この世界には宇宙という概念が存在しない。
 太陽も星も、風も麻薬も命も、全ては本物に似せるために作られたミニチュアにすぎないのだろう。

「本当ならば、NO.3であるステイプラーの穴をタクヤに任せるつもりだったが、こういう理由があるならば仕事は強要しない。残りの異世界人生、好きなように生きると良い。ただし、最低限の傭兵の仕事は続けてもらうぞ?」

「あぁ、当たり前だ! それに、俺はまだ強くなる理由が残ってる。――俺にはまだ救うべき人が残ってるんだ」

 ◆

 今日も、この扉は開かない。
 俺は毎日のようにこの扉の前に立って、これが開くのを待っているのだが、部屋の中で何かがいる音すら聞こえない。

「……ルーラー」


 彼女は、この部屋から2週間以上出てきていない。
 ルーラーへの食事は、キツネの獣人使用人が朝昼晩運び、お風呂はバケツ1杯の温泉とタオルで体を拭いているだけらしい。
 それ以外の情報は使用人は教えてはくれず、「ルーラー様は私以外にはお会いしたくないと言っておられます」とだけ言うのだ。
 毎日様子を見に行くが、大体は部屋の側にいるキツネちゃんは「お会いしたくないそうです」の一点張り。

 俺はこの扉をこじ開けたり、叩いて出てくることを催促することなんてしない。
 ただ、俺はこの世界から別れる前までに彼女ともう1度だけ笑い合って話したい。
 ただ、それだけで今はいい。
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