【完結】ラノベ作家の異世界転生〜ぐーたら美少女天使とのラブコメ×ファンタジー〜

王一歩

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最終章 ノベルとアズリエル

70.タイムループ

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 ◆

 生きていれば出会い、そしていつかは別れが訪れる。
 終わりがあるからこそ森羅万象ははかなとうとく、悲しみがある。
 だかしかし、人はそれらを乗り越えて、悟りを開き、今を生きねばと強く願うのである。

 ただし、永遠があるのならば話は全く別だ。
 何度でもやり直せれば、誰かを殺そうとも、過ちを犯そうとも、人を傷つけようと、何でも許される。
 なにせ、全てやり直せるのだから。

 それは、すなわち人の心を捨てることに同じ。
 思考することをやめ、思いやりなど必要なくなり、人を軽視して簡単に裏切る。
 なにせ、全てやり直せるのだから。

 だが、俺はそのような生き方は好まない。
 この世に絶対にあってはならないものは、『無限』という現象である。
 この単語はまさにラノベ界で最も邪悪たるもので、全ての現象に説明がつかなくなる。
 だから、俺は今までその"永遠の策"だけは使わないでいたかった。
 ――それができてしまったら、俺は本当に主人公ではなくなってしまうのだから。

 ◆

「あんたかい、ハイライターの弟子ってのは! アタイはコンパス・ソノア! 今は繰り上がりでNO.4さ。よろしくな、後輩ちゃん!」

 コンパスは俺の頭をポンと叩くと、誤ってグラスを落として破片が飛び散る。

 ばりん!

「あぁ、いっけない! グラス落とした! みんな怪我は無いか?」

「オイラが割れたグラスを拾うんだよ! あ、指切っちゃったんだよ……」

 その破片を拾おうとした斧使いのグルーが指を切り、

「大丈夫かいグルー、大丈夫だ。ここに絆創膏を持って来ている」

 親父が絆創膏を持ってくると言って階段を駆け上がっていく――。
 はずだったが、親父はもうすでに絆創膏をポケットに仕込んでいるようだった。

「わー! マスターって女子力高めなんだよー!」


 ほとんど、俺が"昨日"見て来た風景と同じだ。
 親父が絆創膏を持っていたのはつまり、"昨日"の出来事が繰り返されていることを悟ってのことだ。
 となると、これは夢とかそういう類じゃないってのは分かるだろう?

「ね、ねぇ……ノベル。今、思ってることは本当なの?」

「ステイプラー……。あぁそうさ。全部マジな話だ。お前は心配しないでくれ。これは俺とアズリエルとの問題なんだ」

 ステイプラーは心配そうに俺のところに来る。
 彼女は俺の心の中が読めるから、この状況は分かってしまうのか。
 ――それ以外の人たちは今、何が起こってるのかは分からないだろうがな。

「わ、分かった。でも、こんな運命はあまりにも残酷過ぎるよ。ノベル、師匠……」

 ◆

「ノベルー! 少し酔ってしまいました! お外で風を当たりに行きませんか?」

 以前のアズリエルは、この時点ではグデングデンだった。
 "昨日"の再現力が低いのは、俺とアズリエルと親父の3人だけだ。
 これから分かる通り、原因は1つ。
 そして、俺はその原因が何なのかも目視で確認済みだ。

 ――アズリエル。
 君って子は本当に素直で純粋なんだな。
 そんなことされたら、俺の決心が揺らいでしまうだろう?

 ◆

 永遠は存在しない。
 物語はいつか終わりを迎える。
 ただ、その物語が巻き戻るようなことがあれば話は別だ。

「今日もノベルとたくさんお話できて良かったです! このままずっとお話ししていたいです!」

「そうだな。うし、そろそろ宮殿に帰るとするか! この時間くらいならパーティー会場も片付いてる頃だろうしな!」

 俺はアズリエルと手を繋ぎ、幸せを何度も噛み締めていた。
 ベンチの上で暗喩な告白をし、そして暗い道を2人で帰る。
 風呂に入り、食堂で眠るハイライターに毛布を被せてやる。
 だが、親父は机に伏せて寝ておらず、俺は全てを察してため息をついた。
 ――親父はまだ俺に何も言って来ない。
 そして、アズリエルは何も気づかないフリをして俺の手をギュッと握っているのだ。

 苦しくなっちまう。
 永遠なんて、この世界では有り得ない。
 ただし、有り得てしまうのだ。
 俺が転生して来てしまったことにより生まれた1つの『超絶合法な超絶矛盾点』がな。

「……アズちゃん、ノベルとずっと一緒にいたいです」

「あぁ。じゃあ、俺の部屋で寝るか? お前を俺の抱き枕にしてやる」

 ◆

 次の日、起きると外は土砂降り。
 数時間しか寝ていない心地なのに、もう朝なのか。
 ……寝不足で死んじまうぞ、俺たち?
 体は眠っているが、脳が全く眠れていない。


「起きろノベル! 今日は特別な日だぞ! パーティーだパーティー! 俺様たちがカップル誕生を爆発的に祝うのだ!」

 扉を蹴破って現れたハイライター。
 俺はどうにか頬を叩き、眠気を押し殺して満面の笑みで彼の発言に今まで通り回答した。

 いつも通り、全く同じルートを辿らなければならない。
 俺はそれでも我慢したい、アズリエルがそうしたいと言うのなら。
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