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本編世界
No one knows ……
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某日。
Cinderella Police本部、開発室。
フラスコ先生こと創真レルムは雲1つない空を眺めながら、忌々しげに吐き捨てる。
「あーあーあー……こんな時まで晴れやがって。憎たらしいったらありゃしない……」
バタン、と強めに扉が閉まる。
いつもの様に、闊歩する。
いつかの様に、背を向ける。
白衣をはためかせ、インクの躯をたなびかせ、フラスコはただ歩く。
ロビーを抜けて外へ。
瞬間、フラスコの姿は掻き消えた。
総てがズレる。
少し手間でこそあるが。
今から行う事は、あのままあの部屋で果たした所で意味など無い。
遠くへ来る必要があった。
此処は世界の果て、世界の中心。
全てを一望出来る場所。
「さァて、観客ゼロの大舞台とでも洒落込むか……クハハ」
大きく両腕を開き、ニヤリと笑って。
囁くように呟かれた言葉は、誰の耳にも留まることなく融けて消えた。
愉快愉快、実に愉快。
「総てはいまズレる」
唄う。声高らかに。
「“+”から“ゼロ”へ。“ゼロ”から“-”へ。“-”から“虚実”へと」
足元の影が色を無くす。
実体と影の輪郭がズレる。
世界が揺れた。
「過密は散らされ、過疎は寄せられ、総てが等しく、総てがズレる」
白と黒だけが存在することを許された世界が、足元より侵食を開始する。
「世界は!」
透き通る様なフラスコの声に合わせて侵食は速まる。瞬く間に色を失う世界に、元より色を持たないフラスコは唯一人喜悦を浮かべる。
「色を、形を、意味を、過去を、事実を、未来を失い……破れて壊れて崩れ逝く」
世界が脈打ち、祝詞と共に揺れる。
その度に何かが曖昧になり、モノクロームの海に沈む。
「此処は劇場!此処は舞台!遥々ご苦労!いざご照覧あれ!」
悲しみはない。
後悔もない。
此処に立つ我が身は己の役割を果たすのみ。
「役者観客観衆演者……悲喜交々の大演劇の幕開けに御座いましょう!」
世界がどこかと重なる。
己の指先が薄れていくのが目に映った。
しかし臆することはない。
在るべきカタチへ戻るだけなのだから。
「嗚呼然し!全ては、全てが、掌の上、我が手中に在る!」
腕が虚空に融けた。
既に足も半ばまで消えている。
そうだ、コレは。
「コレは!独り善がりの自殺劇!されども悲劇に非ず!となれば大団円を以て終止符を打つのが喜劇のお約束!」
世界が人知れず『夢理民』に課した役割―存在意義―の放棄。
それはつまり盛大な自滅に他ならない。
終に半身の感覚が消え失せた。
それでもフラスコは声を世界へ響かせる。
白と黒のみの味気ない世界で、片目の翠が淡く光る。
「最終奥義、術識」
世界をズラして重ねることは、何もここまでしなくても出来た。
けれどこの技は同朋殺しの為に編み出した技。
故に、いま使うことに意味がある。
「【白黒色調夢幻泡影世界】!」
世界が、イロを取り戻す。
▷▶︎▷
その日、世界は在るべきカタチへ孵った。
世界に意味を持たされた14人が消えた。
そのことを知るものは唯の一人も居ない。
いつもの日常は変わること無くそこに在る。
生物の到達出来る上限が取り払われ、世界が滅びを迎える為の既定路線へと切り替わったことに誰も気づかないままに。
Cinderella Policeのとある部屋。
とある猫又のデスクの上で、1枚の紙切れがヒラリと舞う。
No one knows the raison d'etre. All you need is disappeared. That is the only truth.
Cinderella Police本部、開発室。
フラスコ先生こと創真レルムは雲1つない空を眺めながら、忌々しげに吐き捨てる。
「あーあーあー……こんな時まで晴れやがって。憎たらしいったらありゃしない……」
バタン、と強めに扉が閉まる。
いつもの様に、闊歩する。
いつかの様に、背を向ける。
白衣をはためかせ、インクの躯をたなびかせ、フラスコはただ歩く。
ロビーを抜けて外へ。
瞬間、フラスコの姿は掻き消えた。
総てがズレる。
少し手間でこそあるが。
今から行う事は、あのままあの部屋で果たした所で意味など無い。
遠くへ来る必要があった。
此処は世界の果て、世界の中心。
全てを一望出来る場所。
「さァて、観客ゼロの大舞台とでも洒落込むか……クハハ」
大きく両腕を開き、ニヤリと笑って。
囁くように呟かれた言葉は、誰の耳にも留まることなく融けて消えた。
愉快愉快、実に愉快。
「総てはいまズレる」
唄う。声高らかに。
「“+”から“ゼロ”へ。“ゼロ”から“-”へ。“-”から“虚実”へと」
足元の影が色を無くす。
実体と影の輪郭がズレる。
世界が揺れた。
「過密は散らされ、過疎は寄せられ、総てが等しく、総てがズレる」
白と黒だけが存在することを許された世界が、足元より侵食を開始する。
「世界は!」
透き通る様なフラスコの声に合わせて侵食は速まる。瞬く間に色を失う世界に、元より色を持たないフラスコは唯一人喜悦を浮かべる。
「色を、形を、意味を、過去を、事実を、未来を失い……破れて壊れて崩れ逝く」
世界が脈打ち、祝詞と共に揺れる。
その度に何かが曖昧になり、モノクロームの海に沈む。
「此処は劇場!此処は舞台!遥々ご苦労!いざご照覧あれ!」
悲しみはない。
後悔もない。
此処に立つ我が身は己の役割を果たすのみ。
「役者観客観衆演者……悲喜交々の大演劇の幕開けに御座いましょう!」
世界がどこかと重なる。
己の指先が薄れていくのが目に映った。
しかし臆することはない。
在るべきカタチへ戻るだけなのだから。
「嗚呼然し!全ては、全てが、掌の上、我が手中に在る!」
腕が虚空に融けた。
既に足も半ばまで消えている。
そうだ、コレは。
「コレは!独り善がりの自殺劇!されども悲劇に非ず!となれば大団円を以て終止符を打つのが喜劇のお約束!」
世界が人知れず『夢理民』に課した役割―存在意義―の放棄。
それはつまり盛大な自滅に他ならない。
終に半身の感覚が消え失せた。
それでもフラスコは声を世界へ響かせる。
白と黒のみの味気ない世界で、片目の翠が淡く光る。
「最終奥義、術識」
世界をズラして重ねることは、何もここまでしなくても出来た。
けれどこの技は同朋殺しの為に編み出した技。
故に、いま使うことに意味がある。
「【白黒色調夢幻泡影世界】!」
世界が、イロを取り戻す。
▷▶︎▷
その日、世界は在るべきカタチへ孵った。
世界に意味を持たされた14人が消えた。
そのことを知るものは唯の一人も居ない。
いつもの日常は変わること無くそこに在る。
生物の到達出来る上限が取り払われ、世界が滅びを迎える為の既定路線へと切り替わったことに誰も気づかないままに。
Cinderella Policeのとある部屋。
とある猫又のデスクの上で、1枚の紙切れがヒラリと舞う。
No one knows the raison d'etre. All you need is disappeared. That is the only truth.
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