しんぽり物語

クルクル

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本編世界

Re Limited

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世界が“上限”を喪って半年。
何の前触れも無く、消えた彼らは帰還した。
半年前、正確には2あの時、姿形の似通った二つの世界がぶつけられ、彼らは存在を否定された。
1人の同朋によって、本人達も知らぬ間に。
十数人の「世界に存在できる上限的存在」。
そんな彼らは、消えていたという事実を不思議と知っていた。

「消えてたね。戻ってきたね。どうする?どうする?会いに行ってみよう。そうだ、それがいい」

異様な雰囲気を纏った少年にも少女にも見える子供が、独り自問する。

「あいつ…許さないっ!アタシを消すなんて!」

色彩も輪郭も薄らいだ周囲に反して鮮明な少女は、激情の儘に空を睨んだ。

「アハッ。僕の復讐を邪魔したのだーァれ?」

奈落の様な昏い瞳の少女が、嘲りを浮かべて狂気を孕んだ笑みを作る。

「わえは、わえは……」

白い尾を持つ妙齢の女は、自らの今後にただただ思い悩む。

「やっぱり汚い音だなー。もっかい綺麗にしなきゃダメかー?」

角を生やした女は、ケラケラ笑って弦を弾く。

「どうしてあの人は『戻された』んでしょう…?」

波打ち際の岩陰に背を預けた少女は、空を見上げ尾で水面を叩く。

「オレたちがまた、必要なのかな…」

多種多様な鍵に囲まれた少女が、その1つを手に取り呟く。

「美味しいものが食べたいなぁ♪いっぱい、いっぱい、食べたいものがいーっぱい♪」

ショッキングピンクの髪を揺らして、1人の怪物が歌を歌う。

「全ては正義の為。大義の為。もう一度機会をくれるなら、私もまた繰り返すだけ」

サーベルを掲げた女が、誓うように祭壇に跪く。

「困ったなぁ。俺が出来ることはそう多くないんだけど」

美しい少年が、雲の上で言葉とは裏腹に愉快そうに口角を上げる。

「良かったぁー。『前』のパスは残ってた!」

ツギハギだらけで細い体の少女は、能力の状態を感じて二カリ、と笑う。

「うふふふふ…君はどうするのかしらね?」

『前』と変わらない薄暗い城の中で、玉座に座る女は遠くにいるだろう『奴』を思う。

「ククク…若造にしちゃよくやったな」

棺に腰掛けた青年は、愉快そうに肩を揺らす。

「………………」

どこか遠い地下で女性型の自動人形オートマトンが静かに目を醒ました。

14の理不尽。
その復活と共に世界も失われた半年を取り戻す。
主を亡くしていた死者は再び動き出し、正気に戻っていた者達は再び城に集う。
ある街は音色と戦慄を思い出し、静かな海に渦が生まれる。
散らばった星の残骸で、ただ1つ神域と化したその『杭』に住まう者達もまた、思い出していた。
再会を果たした仲間と同じ存在と喜び合い、初めから見えていた猫を除いて帰還するだろうその仲間のことを。

何も知らずに喜んでいた。

「んなワケあるか」

超越者共の蔓延る神域から遠く離れたとある旅館、その屋根の上。
人影が揺らめく、揺らめく。
青年。
煤けた白いコートの裾をはためかせ、黒い山高帽を目深に被るそいつは、杖替わりの傘でコツリと瓦を叩く。
無機質的な朱い左眼を光らせ、口を歪ませを待っていた。

傍らには金糸の髪に同色の狐耳を生やした女が静かに佇んでいる。

「千終」

人とは異なる気配を纏うその女が、何かを聞き取り、青年の名を呼ぶ。
青年が頷くと女は片手を翳して術を起動した。
2人の眼下、年月を感じさせる旅館の門前にが集まり出す。
女の開いた転移門を通り、人が列を為す様は人数に比例して壮大で壮麗だった。

「『親衛隊』全隊員4600名、隊長の名の下に忠誠を捧げます」

赤いローブの男が屋根上の2人に一礼する。

「副総帥、『RoF6』大隊メンバーを除く全構成員7100名、再び旗下に入りましょう」

青年と同じコートを羽織る若い男が敬礼する。

「統括官。特務暗部、調査官第2席以下第12席までの全席官及びその指揮下にある事務員290名、準備は整っています。指示を」

黒いスーツに身を包み顔を隠した男が頭を垂れて告げる。

消える前は自身も1つの組織の幹部でしかなかった青年は、集った1万の兵士に愉悦を浮かべ、再び傘を打ち鳴らした。

「集いし兵士に告げる。お前らにはこれより俺の手足となってもらう!お前らはが選んだ使徒となる!」

化けの皮を自ら剥がした青年は、狂気と殺意を滾らせ何れ来る惨劇に喜悦を見る。

「我らの目的は現行世界の終焉!地球の復活だ!乱れに乱れた星の在り方を再び取り戻す!」

両手を広げ高らかに宣言する青年。その熱が下の1万を超える精鋭に伝播し、空気が振動する程の鬨の声が上がった。

「妨げとなる者は殺せ!反抗する者は1人残らず鏖殺しろ!温い秩序を破壊し、混沌を齎せ!今ここに俺は『惑星送還計画』の発令を宣言する!」

中心から遠く遠く離れた旧惑星の心臓部で。

「これは私欲による戦争ではない、地球世界の望む聖戦である!」

事態は大きく動き出そうとしていた。
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