好きになった人

林檎

文字の大きさ
1 / 2

第一話 俺の過去の話

しおりを挟む
愛なんて、恋なんて俺には関係ないと思っていた。
「好き」の感情を知りたくなくて、昔から逃げてばっかりだった。
恋愛をするのが怖かった。だって自分の気持ちを知られるのが恐くて仕方がなかったから。

高校の時、部活の先輩を好きになった。
最初は憧れだけだったのに、いつからか好きという感情が溢れて、好きで好きで好きでたまらなかった。でも知られたら軽蔑されてしまう。そんな事は目に見えていた。だったら想いを隠していた方が傷つかずに済むし,何よりも気づかれたくない。
好きにならなければこんな想いをすることもなかったのかな。禁断ってこういうことを云うのかななんて思った。こんな自分が嫌で嫌で嫌で仕方がなかった。性別が女だったなら先輩の横にいられたのかも。そんな事を考えるのがつらくてつらくて初めて自分の性別を呪った。普通に女を好きになれば良かったのにとも思った。
それから俺はずっと先輩の事を好きなまま卒業していった。先輩が卒業した時想いを告げることもないままに。  


そんな出来事から
誰も愛してくれなくていい。
そんな事すら思っていた。同性しか好きになれないのならば、こんな自分なんかいないようなもんだと感じていたから。
ただ、先輩と抱き合いたかった訳でもない。
少しだけ隣にいたかった。好きな人の隣で。
普通のカップルみたいにデートしたり、カラオケに行ったり、食事に行ったりしたかった。
時には喧嘩したりして、仲直りみたいなモノに憧れていた。
誰でもいい訳じゃない。
好きになった先輩だったからこそそんな感情が生まれていたんだから。
今の俺だったら普通に恋できていたのかも。
今となっては過去の話。
忘れたくない思い出。でもやっぱり少し先輩の隣で歩みたかったなんて。
高校を卒業しても、先輩を好きだった事は忘れられなかった。
不思議だな。忘れたくない事は忘れて、最も忘れたいことはずっと残るんだろう。それほど大きな出来事じゃなかったはずなのに、いつまでもいつまでも俺の記憶に残ってる。
そんな過去を捨て去ることなんて俺には出来ないのかな。全部全部忘れてしまえればいいのに。
そんな過去だった。俺の人生は。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 続編執筆中

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話 基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想 からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定 (pixivにて同じ設定のちょっと違う話を公開中です「不憫受けがとことん愛される話」)

処理中です...