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1話 天才の五つ子

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「それで、俺たち五つ子は異世界へと来てしまったという結論に至った訳だが、何か質問はあるか?」

 
 ダイニングの机を4人は囲んでいた。



「いや、特にはない。考えることなら龍馬、お前が適任だからな。俺はお前に従うぞ。」


 猛は龍馬に圧倒的な信頼を置いて、全てを任せようとしていた。


「俺も猛にいに賛成だ。」

「僕も龍馬の言うこと聞くよぉ。」


 匠も学も龍馬に任せると言うことで決定した。



「そうか、わかった。じゃあ、猛は明とこの家を守ってくれ。俺と学と匠は外に出て、この世界の調査をする。」

「おう、家と明は任せてくれ。」

「明にいはあんなに音がしてるのにまだで研究してるのかい?」

「明はいつもマイペースだからねぇ。」

「学にいも人のこと言えないけどね。」


 明は地下でものづくりをしているようだった。



「学、この世界が今何時かわかるか?」

「えーと、自転とか公転とか諸々が地球と同じ条件なら太陽の位置からして今は午前9時くらいかな。」

「じゃあ、今から出かけよう。準備をしてくれ。」



 こうして、五つ子は知らぬ地、異世界で別行動をすることとなった。



「じゃあ、頼んだぞ猛。」

「あぁ、任せろ。」



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「学、家を出てから1時間経ったが何か分かることはあるかい?」

「そうだね、太陽の動きは地球とほぼ一緒ってことと、もう少しで人のいる村?かな?があると思うよ。」

「なんで村だと思ったんだ?」

「うーんとね、まずはさっきから獣の臭いが減ってきて、日頃から人がこの森に出入りしていて、尚且つ土の凹みから4人か5人っていう小規模で立ち入ってるからかな。」



 学の観察眼からこの先に村(?)があることがわかった。



「村があったら僕が出ていくからね、兄さんたち。」

「あぁ、匠が1番適任だな。任せるよ。」



 匠はやっと自分に出番が回ってきそうで楽しみにしていた。



「って言ってると、あれじゃないか村は。」

「戸建ての家の数から人口は200人くらいかなぁ。」

「とりあえずの目的は情報収集だ。出来れば友好関係を築き、今日のうちには帰る。」

「まあ、僕らが帰らなかったら猛が暴れてこの村をかもしれないからねぇ。」


 作戦を立てて、匠を1人村に行かせて何かあった時は2人で逃げるという作戦にした。

 この作戦は匠が考えたのである。


「兄さんたちは正直、戦力にならないから、戦いになったら2人を守ってはやれないからね。先にいって安全を確保したら兄さんたちも来なよ。」



 匠は猛と手合わせを出来るほどの強さがあるが、龍馬と学は戦闘力はほとんど皆無である。



タッタッタッ


 匠が村に近づくと村からも屈強な男が2人出てくる。



「すみません、旅をしているものですが少し村でこの先の情報を聞きたいんですよ!」

「𓀇𓀋𓀌𓀎𓁠𓃒𓃟𓃘𓃡𓀎𓃝𓃒𓃗𓃻」

「𓃵𓃗𓅪𓃯𓅦𓅜𓅰𓁷𓃗𓃠𓃟𓃲」



 村人は匠の聞いた事のないような言語で話していた。

 すると、2人の男の間から杖をついた白髪の背の低いおばあさんがやってきた。



「"我らを繋ぐ言葉を貸したえたまへ"」


 そうおばあさんが言うと、光が3人の中に入った。


「これで喋れるじゃろう?」


 おばあさんがそういうと、2人の言っていることが匠にも理解出来た。


「おい、こいつはよそ者だから入れない方がいいんじゃないか。」

「いや、旅人なんだしまだ見た目は子どもだ。迎え入れてやるべきだ。」




 よく見ると2人は見た目がかなり似ていて双子であることがわかり、左目に傷があるのが否定的な方で右目に傷のある方が歓迎してくれているという、双子でも性格は正反対である事がわかった。



「それで、旅人しゃんやそこのにいる2人もお仲間しゃんかい?」

「えぇ、そうです。彼らには僕になにかあれば直ぐに逃げるように言っています。決して害意があるわけではないです。」



 おばあさんが龍馬と学の存在に気づいたが、匠は平然と隠すことなくありのままを話した。



「おい、2人とも彼らは大丈夫じゃ。この村に害をなそうとは思ってないよ。」

「ほらね、ギロ。おいらの言った通りだ。」

「ギル、おいらはまだ信じていないからな。」




 右目傷がギロ、左目傷がギルという名前からやはり双子という線がかなり高まった。



「それで何を知りたいんじゃ旅人しゃんたちは?」

「僕の名前は匠です。匠って呼んでください。実は…………。」



 匠はこのおばあさんには隠し事をしても無駄だと言うことを察して、現状で分かっていることを話した。



「なるほどのぉ。いや、よくある事なのじゃよ。昔、知人が言っておったのじゃよ。「神が世界を調整しているんだよ」と。その都合でタクミしゃんたちがこの世界に飛ばされたんじゃと思うんじゃよ。」

「神が世界を調整するためですか……。にわかには信じ難いですが、ここが別の世界ということが分かっただけで充分です。兄さんたちに1度伝えて……」

「話は聞かせてもらった。やはりここは別世界だったか。」


 茂みに隠れていた2人は出てきて、話に割り込んできた。


「やっぱりかぁ、僕の予想はあってたなぁ。」

「さすが学だな。」

「まあねぇ。」


 2人は異世界でいうことをあっさりと受け入れていた。


「俺は一応匠の兄で龍馬という。すまないが聞きたいことがあるんだ。この近くに大きな都市はないだろうか?」

「そうですな、3日ほど東に歩いて行きますと大きな街"シャンベラ"という場所がありますぞ。」

「なるほど、教えてくれてありがとう。」

「いえいえ。シャンベラに行くなら明日シャンベラからくる行商人から話を聞くとよいと思いますぞ。」



 3人は行商人からの話を聞くため、明日も来ることを伝えて1度家に帰った。




「あの3人はいい精霊がついておりますじゃ。」

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