夢見るシンデレラストーリー

ハウスキーパーから

　私は、白河家に短期で雇われたハウスキーパーです。まぁ…随分昔ですがこの家に長い間お世話になってもいました。

　50才になろうかという時、何人もいたお手伝いが一気に契約を切られました。私もその中の1人です。
　色々と考え方に偏りがあり、人柄も問題がある家族でしたが、Ωを雇ってくれる所は少ないのです。
Ωである私には貴重な働き口でした。

　白河家の分家の分家でもう赤の他人のような者ですが、親戚ということで雇ってもらえたのです。
その雇い先から、いきなり切られるのは生活的に、とても厳しいことでした。それからは蓄えたお金とパート、国からの援助金で生活してきました。

　それが、10日ほど前、だったと思います。実家を通して連絡を貰いました。短期間だがハウスキーパーを頼めないかと。
家の中の事のみで1日1万5千円。私は飛びつきました。

　引き受けた後、後悔しました。この家族はあの時からもっと悪い方に成長してました。
　奥様は家の中の事は何もせず、お子様達の事すら我関せずという有り様。旦那様は虚栄心の固まりでご自分を大物のように見せる様は何とも言えないものです。
　お子様達も長男の賢一様は、αは敬われて当たり前で、Ωはαの為に生きている。そう平気で言う人間になっていました。
　三男の翔さんはそんな家に嫌気がさされたのでしょう。家出されて連絡もありません。


　私は最初、10時からというお約束で雇われた筈なのですが、契約書には住み込みになっていたり。
　短期間の筈が、1年契約となっていたり。とお話が違うので辞めようとしたんです。
　でも、契約書に判子を押していたので、やめるなら代わりに私の娘を働かせると言われました。

…それに、働くのは10時からで良い。ここに部屋を与えるだけだ。1年契約が短期でないと言うが、この家は3年契約が普通だから1年は短い。そう言われて、仕方なく働く事にしました。

…あぁ。ごめんなさい。貴方達はおばあちゃんの愚痴を知りたい訳じゃ無いわね。

　私は昨日、聞いてしまったんです。旦那様と賢一様が空君を取り返そうとしています。
　なんでも、会社の経営で不都合があったらしいのですが、その穴埋めの為に空君を使うとか。

　離れのゲストハウスに工事業者がいて、そこの人が話していました。地下に部屋を作ったり、内装が怪しげな物だと。
　だから、入って見たのです。あれは牢屋ですよ。
そして、口に出すのもおぞましい！
壁に付けられた鎖、枷。仕切りの無いトイレ、風呂寝台は大きかったものの、こんな部屋です、碌な使い方では無いでしょう。

　それから、証拠はありませんが…私が聞いてしまっただけですが、その牢屋に空君を閉じ込めて……白河家のお客様をもてなす為に教育すると。

　どうか!!助けてください！





……これで、空君はもう大丈夫。
そうです。私は今まで、篠山家のご主人様、奥様、そして空君の番である、晃一様にお話をしていました。
　3人とも、特にご主人様と晃一様は怒りのあまりか、小さな笑みを浮かべてました。…目が怖かったですけど。奥様はカップを持つ手が震えていたのでもしかすると、このお話は奥様は聞かない方が良かったかもしれません。

　ともあれ、私はお話できてスッキリしました。
今朝、あの家に辞表を出した時は娘に手を出されないか心配しましたが、これから娘を連れて篠山家の別荘番として暮らしていきます。

　さぁ！アホなαは滅びるが良い！
　私の人生、まだまだこれから！！
　　オーッホッホッホッホ～。


…ごめんなさい。調子に乗りました。ちょっとあの家族に対して偉そうにしてみたかったんです。
…娘と２人で真面目に別荘番します。