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間違ったとは思ってないよ。
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目を開けたとき僕の周りは人だらけだった。父様、母様、爺、侍女さん`s、父様の主治医だけじゃなくて主治医団体……。
僕の脈を診て「もう大丈夫です」と言われると父様と母様の表情が弛み、静かに笑ってくれた。
「もぅ……あなたという子は……。」
母様の声は掠れていた。目の下にもくっきりとクマができてしまっている。髪の毛も……付きっきりでいてくれたみたいだ。
父様が頷いて爺を残して皆を下がらせた。
「まだ休まないといけないが、先にこれだけは伝えておかないとな。
ノエル、今回の皇太子の行動でお前には本当に苦労をかけた。……この不祥事は臥せる事になるが、もし何かの拍子に指摘されてもこのお前の行動で窮地に陥る事はなくなった。Ωのために廃嫡となったお前が弟の為に生後7日の赤子を置いて罪を被ろうとした事は民の同情を集めるため今後の追及もなかろう。お前は身をもって皇太子を諫め守ってくれた。ありがとう。」
……父様の言葉にほっとした。
予定外の大事になったけど、なんとか狙い通りローランドへの追及もなく僕へのお咎めもなくすんだらしい。
「ノエル、ローランドはとても反省しているわ。今は足りないかもしれないと心配された薬草を取りに行っているからいないけど、戻ったら会ってやってくれる?」
「うん。勿論だよ。……驚かせてごめんなさい。」
僕の両手を包み込むように手にとって撫でながら母様が僕を覗き込む。すごく心配させたと思うし、びっくりさせたよね?
「アーノルドと子供達は?」
ここにはいないけどアーノルドにも心配をかけたはずだ。貴族社会では連座も有り得る。連座でアーノルドや子供達にも影響が行くという事態を阻止する為には確実に無罪…というか、無かった事にさせないといけないからこういった行動をとった訳だけど、怒られるだろうな。
「ええ。とても心配しているわ。シモンも何か感じ取ってる様でノエルをずっと探してるようよ。」
シモンの事を思うとすごく胸が痛い。アンリはまだわからないけどシモンは僕が居ないことがおかしい事だと気付いてるはずだから、今すごく寂しい気持ちだと思う。……僕も、あり得ないと思いながらも…もし、本当に…もし、「皇太子の名に傷をつけた責任を」なんて言われたら……と王都に来る途中で何度も思って、引き返したくなった。本当は子供達を連れてアーノルドの腕のなかで「僕悪くない!」って知らんぷりしたいって思った。
……できるならね。でも僕はその”もしも“の事を思うとなおさらこうするべきだったと今でも思ってる。子供達に恨まれようと、アーノルドに愛想尽かされようと一番は“もしもの時は僕一人の命”ですむようにしたかったから。
え?爺?……うん。爺は別。爺はね僕より先に逝くことはあっても後は無い。これは絶対、確信してるよ。『何処までも一緒』
さて、こんなしんみりとしちゃっていた雰囲気を一変させてくれたのはお決まりだけど爺だった。
大きな大きな雷が落ちると思ってたのに、爺は目をウルウルさせていた。こんな爺は初めてで、全力で謝り倒した。……勝手に死にかけた事をね。
僕の脈を診て「もう大丈夫です」と言われると父様と母様の表情が弛み、静かに笑ってくれた。
「もぅ……あなたという子は……。」
母様の声は掠れていた。目の下にもくっきりとクマができてしまっている。髪の毛も……付きっきりでいてくれたみたいだ。
父様が頷いて爺を残して皆を下がらせた。
「まだ休まないといけないが、先にこれだけは伝えておかないとな。
ノエル、今回の皇太子の行動でお前には本当に苦労をかけた。……この不祥事は臥せる事になるが、もし何かの拍子に指摘されてもこのお前の行動で窮地に陥る事はなくなった。Ωのために廃嫡となったお前が弟の為に生後7日の赤子を置いて罪を被ろうとした事は民の同情を集めるため今後の追及もなかろう。お前は身をもって皇太子を諫め守ってくれた。ありがとう。」
……父様の言葉にほっとした。
予定外の大事になったけど、なんとか狙い通りローランドへの追及もなく僕へのお咎めもなくすんだらしい。
「ノエル、ローランドはとても反省しているわ。今は足りないかもしれないと心配された薬草を取りに行っているからいないけど、戻ったら会ってやってくれる?」
「うん。勿論だよ。……驚かせてごめんなさい。」
僕の両手を包み込むように手にとって撫でながら母様が僕を覗き込む。すごく心配させたと思うし、びっくりさせたよね?
「アーノルドと子供達は?」
ここにはいないけどアーノルドにも心配をかけたはずだ。貴族社会では連座も有り得る。連座でアーノルドや子供達にも影響が行くという事態を阻止する為には確実に無罪…というか、無かった事にさせないといけないからこういった行動をとった訳だけど、怒られるだろうな。
「ええ。とても心配しているわ。シモンも何か感じ取ってる様でノエルをずっと探してるようよ。」
シモンの事を思うとすごく胸が痛い。アンリはまだわからないけどシモンは僕が居ないことがおかしい事だと気付いてるはずだから、今すごく寂しい気持ちだと思う。……僕も、あり得ないと思いながらも…もし、本当に…もし、「皇太子の名に傷をつけた責任を」なんて言われたら……と王都に来る途中で何度も思って、引き返したくなった。本当は子供達を連れてアーノルドの腕のなかで「僕悪くない!」って知らんぷりしたいって思った。
……できるならね。でも僕はその”もしも“の事を思うとなおさらこうするべきだったと今でも思ってる。子供達に恨まれようと、アーノルドに愛想尽かされようと一番は“もしもの時は僕一人の命”ですむようにしたかったから。
え?爺?……うん。爺は別。爺はね僕より先に逝くことはあっても後は無い。これは絶対、確信してるよ。『何処までも一緒』
さて、こんなしんみりとしちゃっていた雰囲気を一変させてくれたのはお決まりだけど爺だった。
大きな大きな雷が落ちると思ってたのに、爺は目をウルウルさせていた。こんな爺は初めてで、全力で謝り倒した。……勝手に死にかけた事をね。
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