Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

文字の大きさ
393 / 708

フールフーガのお出迎え

しおりを挟む
 今日にもフールフーガが見えてくると爺から聞いた。ちょっと飽きてきたから嬉しいお知らせだ。こんなに船が暇だと思ってなかったから裁縫道具持ってこなかったんだよね。こんなことなら持ってくればよかった。フールフーガで買おう。

「何を言ってるんですか。あちこち動いて回ってはコウに迎えに来られてるのに。」

 あれはマオが誘いに来るからよ~。僕のせいじゃないよ~。

「魚釣りしたいと言って困らせたのは誰です?」

 いや、あれはフールフーガの港にイルカが居ると聞いてエサをあげたくなって……ゴニョゴニョ。

「読んでない本もまだいっぱいありますし、針は危ないので……編み物くらいにしてください。」

 あ、爺が何を思ったのかわかった。“編み物させとけばおとなしい”って思ったんでしょ。絶対そうだ。爺、ニッコリ笑ってないで認めなさい。

「よしっ!爺、上陸後の予定は?」

「今回は王妃様とローランド様がいますので挨拶等は全てお二人のお仕事ですね。」

 そうだろうとも。いきなりついてきたんだから面倒事は全て引き受けてくれなきゃ。僕は一保護者としているんだから。

「……一保護者、ですか?」(もう一度ノエル様という存在について考えてみていただきたいものですが……。)

 爺、僕をじっと見つめてないで。言いたいことだいたいわかるから。……普通の親のつもりしてごめんなさい。
 さぁ、気を取り直して次を聞こうか。

「……はい。ノエル様の主なお仕事は」

 ちょっと待って!お仕事はって何?お仕事あるの?

「ありますよ何を言ってるんですか。王族がお他所に来たんですよ?それなりに挨拶と外交をして下さいね。ああ、ノエル様が規格外のΩだということはこの国では有名ですから。」

 爺に反論しようとしたとき、ものすごい音が聞こえた。それと同時にこちらの船からもワァワァと人の声がうるさい。

「ちょ、ちょっと!なに?!なんなの!?」

 何であれ子供達!
急いで隣の部屋の子供を抱え込む。……エンジュは寝てたけど。なんて図太い。リリーはじっとして動かないけど怯えてるっぽい。

「ノエル様、大丈夫ですよ。お出迎えのようです。」

 いつの間にか確認に行ってた爺が教えてくれた。

「……派手なお出迎えだね?」

「ええ、おそらくは儀式用と思われるバイキング時代の船が8艘も来てますよ。見に行きませんか?」


 甲板にあがると見えたのはなんとも派手な船の一団だった。昔の船らしく大きなマストが船の中央にあり、その帆がとても大きい。船体の色は赤で統一され、金色の模様替え美しい。船首の像は美しい女戦士が飾られて美しくも勇ましい船だ。
 帆にはフールフーガの国旗も掲げてるから間違いなくお出迎えだね。

 大きなドラにラッパ、鈴とか見えてないけど木琴みたいな音もする。近付くにつれてその大きな音はちゃんと曲として成り立っているものだと気づいた。その頃になると母様も甲板に出てきて……踊ってる。何気に昔から居るという侍女さんも一緒に踊ってるのを見るとフールフーガではよく使われる曲なのかな?

「爺は知ってる?」

 母様を見ながら聞くと爺はフールフーガの伝統音楽で祭りでは必ず演奏されると聞いているらしい。そしてこの曲は身分の高い人が最初に踊るという決まりがあるとか。……ということは?
しおりを挟む
感想 199

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...