Ωの僕がお偉いさん

はい、ご出立～。

　昨日の夜は散々だった。
シュールな光景にそっとドアを閉じて寝に行こうとしたんだけど僕に気づいたローランドによって中に引き入れられ、酔っ払い2人を寝室に送り込んだのだ。陛下はまだ良いんだけど、父様の絡みがひどく寝ていた母様を起こして助けてもらった。

　この年で酔っ払いのお髭じょりじょりの頬擦りやぎゅっと抱き締めての添い寝、顔中へのキスからの『はぁ～、ノエルは私の天使だ』とずっと聞かされるのはゴメン。嫌だ。
　ほぼ泣きながら部屋へと戻りローランドに呪いの言葉を吐いていたらアーノルドが優しくしてくれたので水に流そうと思う。

　翌朝は少し遅く起きた。今日は王都へ向かう日なのだが父様のせいで行程が変わった。人数の関係上絶対に乗りたいという陛下と速く帰したい父様を気球に乗せて飛んでもらい他はゆったりと川を上る事になっている。歓迎パーティー等も有るのでアーノルドにも一緒に来てもらえるのが嬉しい。
　そして王都では爺も帰って来てくれるらしいので本当に助かる。……ただここにいる2人だけが沈んだ顔をしているのはしょうがない。

　『ノエル、あの双子は使えるな。ちょっと貸しなさい。』

　という言葉が出た瞬間の顔が頭から離れない。自国の王に『使えるな』と言われたんだから喜べば良いのにその瞬間の顔から色がなくなったんだ。一応あの2人はグリフウッドの仕事があること、一般人であることアーノルドの友人だけど貴族の教育は受けてないとも伝えたが、そんな事を気にする人でもないからやっぱり答えは『能力があれば構わん』だった。なのであの2人もドナドナされるんだ。

　川辺では２階建ての船が待っていた。母様の趣味で華やかに作られてはいるが以外と落ち着くのは内装がアンティーク調で整えられているからだろうか。これは王都～グリフウッド間で運行されているクルーズ客船なので勿論個室も準備されてるしトイレもある。（この船はなんと水洗トイレなんだよ！）
さて、たった１泊とはいえ静かなクルーズになるのでしょうか？

　

　「ノエル！ノエル！ここ素敵です！」

　はしゃいで可愛いのはサミュエルだ。2階の端っこでベランダに出られる部屋へと案内したのだが、気に入ったらしく反対側の僕の部屋まで来て報告してくれた。サミュエルを案内したのはロイヤルスウィートルーム。所謂貴賓室だからね。僕のはただのスウィートルームなんだけど違いは前方か後方かの違いだけ。本当はシグルーン女公爵にと思ってた部屋なんだけど母様とクィーンズルームという女性に嬉しい部屋に泊まりたいらしい。ここはお風呂がついている母様お気に入りの……というか母様の希望でできた部屋だ。
　そして他のフールフーガ組は当然のように自分達のところの船でついてくるらしい。ええ、正直助かりますよ？

　さて、この僕の横であれもこれも可愛いと喜んでくれているサミュエルは良いとして……カドラさん？何してんの？え？船の中の廃水経路？トイレが水洗？湯船つきのお風呂？
　ああ、そういうこと？船大工のスイッチが入っちゃったと。…ええ。僕は知りません。そうです。いつものように僕は「こーいう物作って。あーいう物をつけて」と言った後は優秀なα軍団にお任せです。