Ωの僕がお偉いさん

サミュの大冒険

　スサエナに来て半年、だいぶこの土地にも慣れた。というか故郷より慣れた。
　この土地の人はフールフーガの人に性質が似ているんだと思う。でもフールフーガと違って船に乗れないから、人と付き合えなくても肩身が狭い思いをしなくても良いという違いがある。

　……でもスサエナに来てからはけっこう色々な人に会ってるかな？一応護衛や相談役っていう役でコウとマオがいつもいてくれるんだけど、マオが一時もじっとしてない子だからなんか人に会う機会が増えた。
　普通､護衛って護衛対象がいる場所に居るものじゃない？でもなぜかマオは護衛対象の僕をマオの傍に居させるんだよね。例えば風に乗って肉を焼くいい匂いがしてくるでしょう？そしたら「食べに行こう！」って僕を引っ張って行くの。それで領主館の外でも街中何処でも行っちゃう。当然僕も連れていかれて同じ様に食べる。
　マオはこの街ではけっこう有名人みたいで僕の事を行く先々で紹介していった結果が今だ。

　今日はコウがノエルの子アンリに海についてのお勉強を教えに行っている。そのせいでノエルもこっちには来ない。それでなくても長男のシモンがグリフウッドに行ってから他の子にピッタリくっついているのだ。といっても今スサエナに居るノエルの子はアンリとエンジュだけ。リリーはまだ王城で過ごしているらしい。なんでもあちらで覚えた事が楽しくて仕方ないらしい。だから最近のノエルは『情緒不安定なの！』と本人から聞いた。

　さて、これはチャンスなんだ。さっきマオにはお使いに行ってもらった。『東の市場で籠いっぱいのベリーとクッキーを買って来てね、皆でパジャマパーティーしよう！』と言ったらスキップしながら出ていった。
　よし！冒険に行こう。行き先は中央市場……つまり領主館の周りにある市場なんだけど、僕にとって1人でのお出掛けは初めてなんだ。


　何時ものお洋服にお買い物バッグを持って1人で歩く。……う～、これだけで緊張するけど大丈夫なはず…だ。うん、大丈夫！中央市場はマオに連れ出されて何度も行ってるもの！
　肩からかけたポシェットには銅貨が30枚銀貨5枚が入っている。今日の僕の目標はマオがよく買ってくれる串肉、ジュース、コロッケを食べ歩きトークトーンという不思議果物をお土産に買うのだ。
　
　こういう市場では大きい金額の硬貨は歓迎されないとマオに習ったからお腹いっぱい食べるために銅貨をいっぱい持ってきた。…さっそく串肉を見つけたけど､どうやって買ったら良いのか？

　「お？今日は１人かいサミューさん！」

　なぜか市場では僕の名前はサミューで確定されていた。まぁそれはいいんだけど店主が気づいて声をかけてくれた。ありがたい。
　コクコクと頷いて近寄り串肉を5本買った。普段なら食べても3本なのだが今日はイケるはずだ！そして隣の屋台でコロッケを2つ。……正直多いと思うがコーンコロッケと枝豆コロッケはどちらかに決められなかった｡


　こうしてお腹いっぱい食べ歩き、大冒険をした僕は帰った館で皆が大騒ぎしている事を知り謝り倒した。
　けど､ちょっと楽しかったな。