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王ですから!
しおりを挟む●初めての王様視点です。
不穏な噂というものは常にあると言ってもいい。人は人に嫉妬し羨む生き物だからだ。それが貴族という特殊な立場の者なら尚更強くもなるし止める人間も限られてくる。
誰伯爵は最近金遣いが荒いのは脱税しているから だとか 誰子爵が本家筋の伯爵家を乗っ取ろうと画策しているだとかは珍しくも無い。
だがしかし、だからといって調査をしないわけではない。火の気の無いところに煙は立たぬ というように、何かしらがあるから噂が立つのだ。
「例の侯爵はどうなっている?」
仕事の補佐に付いてくれている王妃に尋ねると調査中だと返ってくる。王妃は表側からの調査を担当している。
「領内の聞き込みに入った処ですわ。シグルーン女公爵が観光と称して派手に動いていますから、そのうち本人から接触があるかと思いますわ。」
立ってるものは親でも使えという言葉が有るが、まさしく今それだ。王妃は観光地に観光客が行くのは当然、それが外国から来た貴族なら尚更だと言って話を持ちかけた。協力が得られるというので詳細を話すと自分がいい餌になり得ると知り勇んで出かけていった。
「フールフーガの重鎮でありα性、古い家柄とあっては……寄って来るであろうな。」
これで表側からの調査は目処が立ちそうだが、問題はより細かく深い調査となる裏側だ。そちらはいつも通り爺を筆頭とした影の者達が担当している。
朝方、爺が馬で駆け込んできた。駆け込んできたというのは揶揄ではなく本当に来たのだ。普通の来客は城門で下馬を求められ、貴族は中の馬車付き場まで。急を通す場合は専用の中庭になるのだが爺は自分のその顔と地位、腕をふる活動させて何故か二階のバルコニーから来た。……馬ごと。
確かに私的な庭からバルコニーまでは階段があり広さも充分だがびっくりした。
そんな爺はノエルからの依頼で来たのだが、ノエルはノエルで厄介な考え方をしたようだ。自分が王として一番簡単で実行に移そうとしていた事は『ある程度の証拠が出たら力で潰そう』だったのだがノエルにとってはそれは悪手らしい。
爺からの話ではノエルは私が力で潰すか、ローランドが即位してから理詰めで潰すか、どちらのほうが良いか悩んでいるらしい。そう聞いた時に考えてみると確かにローランドが即位した時にというのも有りか?皇太子時代から証拠を集めにかかっていたという能力を示す事もできるし、優しいだけの王では無いというアピールもできる。
「だがなぁ爺、それは時間がかかり過ぎる。今すぐに準備を始めても交代までに4年はかかる。」
「ですがアチラもすぐに行動には出ないでしょう。なにせ慎重に慎重を重ねる性質の一族です。」
「慎重に慎重をとは奇麗な言葉を使ったな。ただの小心者で無能の集まりだ。」
だがノエルの考えも一理……。ノエルは弟に甘いからなぁウムゥ困った。
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