Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

文字の大きさ
16 / 708

爺は最高

しおりを挟む
 名残惜しい手を解いてキスを贈り部屋を出た。この格好のまま堂々と納屋へ直行だ。
 荷車にポニ太を繋いで母から貰ったバッグを乗せる。さて、と振り向いた所に爺がいた!
ああもう、吃驚させないでよ。

「爺、見送りに来てくれたの?」

「爺はずっと一緒でございますよ。」

「え?だって……爺……。」

「爺はもう城は飽きました。もっと自由な場所で綺麗な物に囲まれて暮らしたいのです。」

「良いの?」

「はい。王様と王妃様にはもうずっと前に許可を戴いてました。その時が参りましたら爺は共に参りますと。」

……フフフ。嬉しいなぁ、嬉しい予想外。
じゃあ、とりあえず爺の街の家があるというのでそこへ向かいましょうか?いやいやちょっと待て。

「あ、爺待って。ちょっとお願いがあるんだ。」

 念の為だからと先に言いおいてから話を進めた。
次代の王位を脅かすものとして処分という選択肢がある今、爺と城を出るのは危険過ぎる。僕がいくら姿を変えても爺の事は城の皆が知っているからその側にいる子供が僕だと想像は容易い。

「だから、お願い。1ヶ月後父親役のターダの行方不明の知らせを持って店に来て。店の位置は母様への手紙に書いてある。」

 真剣な顔で頷く爺に別れを告げて、ポニ太に乗って早足で城の門へ向かった。途中父と母の部屋を見られる場所で振り返ると、母のガッツポーズが……。母様、手紙読んでくれたらしい。父が蝋燭を持って何かに…あ、僕の手紙だね。火をつけて証拠隠滅とばかりに笑ってた。隣の部屋の窓が開いて弟が顔を出すと、「兄様のバカァーーー」と泣きわめいて慌てた爺に口を押さえられてる。
 あーあ、この後大変だ。ああなった弟は止まらないのだ。僕が抱っこして甘やかしてあげてやっと収まるのを皆知らないから…。爺、後よろしく。

ちょっと、しんみりした雰囲気が弟の声で霧散した。それどころか弟の大声に慌てる父母を見て笑ってしまった。
 
 さて、気を抜かず行かなければ。ポニ太よろしくお願いね?
 このポニ太は甘えっこなんだけど、足は早いし持久力は凄いし、頭も良いとってもいい子なんだ。
今も荷車引いてるのにかなり早い。うーん自転車…
ゆっくり目のロードバイク位の速さかな?

 色々な事あったから時間が結構たっていてもう夕刻だ。一般人の僕が街の門から出られるのはあと一刻の間かな?うーん子供だからこの時間でも止められるかも……。


 王子の姿なので外套を深く被って街の外へ向かう。門周辺はあまり治安が良くないから早く通りたい。母からのバッグは僕の外套の中に入れて守っているから心配無い。
 え?荷車は何のためかって?ポニ太は最高級の藁束とお馬様用穀物を運んでます。藁束はともかく穀物は高いからね~これくらい良いでしょう。

 そんなこんなを考えてる間に門を抜けた。
あーあ抜けちゃった。じゃあやっぱり追っ手がかかるんだろう。ポニ太を走らせて人影が無いのを確認して森へ入る。

 完全に隠れてるな…車輪の跡もない。ポニ太の鬣の飾りを取って普通のポニーに、荷車は…ちょっと土で汚せばいいか。後は僕が元の姿に戻って……よし。
 実は服もリバーシブル。前世の記憶から忍者の技?の衣替えの術を使わせて貰った。














しおりを挟む
感想 199

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...