【完結】職業、悪役令嬢

アークレイ商会

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3.デシィとおカネ

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 私は異世界のドネル王国に流れ着いた転移者ですが、今は冒険者ネーム、デシィ・アクレイを名乗り
    周りが勘違いしたのをいいことに、辺境から来た健気な良家のお嬢様を気分よく演じながら、駆け出し冒険者をしています。

 でも、裏表を使い分ける貴族やすぐに裏切る悪人共を相手にしていた前職のせいで
    いつもなるべく目立たない服装をして、いるかいないかよく見なければ見つけられず、上品に微笑みを浮かべながらも、細い目は鋭く周囲の警戒を怠らず、音もなく歩きいつの間にかそこにいる

    時々わけの分からない言葉をつぶやき、何もないところを見ている、すぐに相手の裏を読み、元貴族らしいのに安いものを更に値切って買い、性格や出身までいつわっているようで
    何を考えているのかよく分からない気味の悪い変な人ぐらいに思われているから、この街にイマイチ馴染みきれない。宿屋に落ち着いてしばらくは誰かに監視されているような気までした。

    何しろ冒険者なのに、逃げるのは早いが全然闘わない、だから安全な街なかの雑用だけを引き受けて、そのわずかばかりの収入をやり繰りしてコツコツと貯めている
    にもかかわらず、まずはカタチからとか言って、いかにも駆け出し冒険者ですという服や薬草採取用のナイフ、ナタ、背負袋などを詰め合わせた、男女兼用の初心者冒険セットを急に購入。

 そして、せっかく買ったからと、よく調べもせず街に近い薬草採取で有名な森の浅い所へ向かう
     幸いお天気も良くそこら中に子供や高齢者までいて、ワイワイ・ガヤガヤと賑やかに話をしながら、ピクニック気分でお弁当を食べて薬草採取を楽しんだ

    けれど、買い取り価格の高い薬草はもうとっくに採り尽くされてしまっていて
    それで常時買い取りだけど安い薬草をあれもこれもと、背中の袋が破れそうになるほど詰め込み
     あまりの重さに悲鳴をあげて、途中で何度も休みながら、持ち帰ってはみたものの、採取が杜撰で保管状態も悪く評価が低く、お小遣い程度にしかなりません。

 期待してだけにその分余計にガッカリしてしまい、買い取りの窓口で聞いてみると、薬草で本格的に稼ぐには
    冒険者ギルドなどの講習や研修を真面目に受けるか、自分で図のついた初心者用の本を読む、慣れた人に教えてもらい必要部位を丁寧に採取
    時間停止のついた高価なマジックバッグや避難用の魔道具、魔物避けの匂い袋、正確な地図などを揃えて準備、下見や偵察をしてから

 魔物がいる危険な森の中やダンジョンへ、複数で慎重に分け入る必要があり、それにはある程度の知識と経験がいる
    そして、おカネと時間も掛かるという残念な現実を知らされる。

    それなら、自分で採取した薬草でポーションを作って、自分で売って儲けようと思い、おカネも無いのに、またぞろ初級ポーション作成セットを買い込む

    顔なじみの受付嬢に自慢げに報告すると、困り顔になり「自分でポーションを作って使ったり、仲間に譲る程度は許されるが」
    「製造や販売にはそれぞれのギルドに国から与えられた独占権があり、この権益に触れると面倒な事になる」らしい。
    また、「各ギルドに入るには入会金と会費がかかるから少量の販売や製造では、割に合わない」

    その上、「ポーション作りには煙や臭いを伴いともないやすく、出来れば町外れに一戸建てを買うか借りるかするのが常識です!」
    「うーん、これは、前途多難だわ?」と言われ匙を投げられてしまった。(´;ω;`)

    そうまで言われて、「本当の目標はこの街での素敵な出会いなんです(*ˊᵕˋ*)੭ ੈ」とうつむいて聞こえないようにつぶやく。

    いまでも悪役令嬢係りは、給料が安い割に仕事がキツイ3K職場だと思う
    その上、仮採用の間にも長い研修があり、それは歴史や法律などの座学から、貴族の作法やダンス、格闘技、尾行術、鍵開けに至るまで工作員まがいの難しい内容を無理矢理に詰め込まれた

    どうしても出来ないときは、鬼教官が「このウジ虫、役立たず!、給料泥棒」などとさんざん怒鳴り、時には鉄拳制裁にまで及ぶ
    ついには有無を言わさず魔法で、脳に刻み込まれて、何日もひどい筋肉痛や頭痛で苦しむことになる (>_<)

    それでも、途中でやめなかったのは、やめたら脱走罪で重労働の鉱山送りにするとほのめかされたから
    そして、前の世界で学校に通っていた時は演劇部に入り、本気で女優やメイクアップアーティストを目指そうと思っていたのを思い出し
    キツくて強制でも色々な人に化けるすべを習うのが楽しかった

    もうひとつは、子供の時に夢見たお姫様のようなドレスで華やかなパーティに参加したり
    貴族の屋敷で可愛いメイド服を着て、キビキビと立ち働く理想の自分の姿を思い浮かべたせい。(///∇///)ゞ

    実際には壁の花のその他大勢組ですが、それでも偽の貴族令嬢の一人として、綺麗なドレスでパーティに参加する事が出来た
    貴族家や大事な会合に素敵なメイド姿で情報収集をしたり、目立たないよう警護したりした時はとてもうれしかった
    だから、誰にも内緒で自分の晴れ姿を転写の魔道具に記録して、その絵姿を小さな額に入れて今もお部屋に飾っている

    特に私とおヒゲのイケメン公爵様との絵姿は、私のお気に入りで、自分の両親の若いころの絵姿だと偽って、自慢げに見せびらかして相手が驚く姿を見て楽しむ。
    
    貴族家に住み込みのメイドとして入り込んでいた時も、気の合うイケメンの庭師や馬車係と顔なじみになった
    けれど、出身も経歴も嘘ばかりで秘密が多く、ウッカリ口を滑らせたり態度や行動から疑われると、仕事を失敗してクビになるのが怖いし
    最悪の場合相手側に拘束されて拷問されるかも知れず、男性どころか同僚のメイドたちとさえあまり話をしなかった。( º言º)
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