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その後 ルイードのサプライズ(王太子視点)
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「ルイード、これはどういうことか説明してもらおう。」
トントンと机の上の書類を指先で指しながら説明を乞う兄である王太子はイライラしながら聞く。
政務が立て込んでおり、一日中、書類と格闘していた。
その中に明らかにふざけた内容の書類があるのを見つけ、すぐさまルイードを呼び出していたのだ。
ちょっとバツが悪そうに目をそらすルイード。
「そのままだが‥」
「何が街中訓練だ。軍部のいろんな部隊巻き込んで街中で何をするつもりだ。この人数配置はありえない。この日に街で何が起こるんだ?」
「コトミへのサプライズ‥」
ポソリと言う。
空耳か?聖女様の名前が出てきたぞ‥
話を聞けばその日が聖女様の誕生日らしい。
「彼氏彼女というのは一緒に買い物に行ったり、ご飯食べたり、手を繋いで歩いたりするらしい。」
「うん、で?」
「コトミの希望を叶えるのは彼氏の役目だろう。」
ドヤ顔でルイードは宣言する。
うん、だから?
聖女様と両想いになって浮かれまくっているのは見ていてもわかる。
聖女様の為に外出を企画するのもわかる。
だが、この規模はなんだ!
軍を巻き込んで街で遊ぶだなんて以ての外だ!
忙しくずっと政務に追われているのに目の前の弟はその時の様子を思い浮かべてにやけている。
腹立たしくて仕方ない。
「だからって軍を巻き込むな!」
ルイードがキリッと見つめ返して返答してくる。
「巻き込んだ訳ではないぞ。護衛騎士だけでは足りないからな、護衛の依頼を軍にしたら皆が自分もと言いだし、人数が膨らみすぎたんだ。だからいっその事、訓練にしてしまおうと。」
パラパラと書類に目を通し参加メンバーの名前を確認する。
このメンバーが自発的に聖女を守ろうとしている?
「どう言うことだ?」
「コトミはアルーのような平民の命も聖女の命と同等に扱おうとした。命の重みを必死で訴えた事は、軍所属の平民を感動させた。」
うん、そうだろうな。
聖女様は人の命に上下をつけない。
今まで命を軽く見られていた平民にとっては衝撃の出来事だっただろう。
「そして軍は強さこそ最高だと考える者も多い。気分転換に剣の訓練にも参加しているが、コトミは強いぞ。アルーをかばって刺客の前に剣を持って立ち、撃退した事は軍の中でも伝説となっている。聖女は最強の女だと憧れる者も多い。軍内に聖女のファンクラブもあるぞ。ちなみに俺も入っている。」
自慢気に聖女様を語るルイード。
何をどう突っ込めばいい?
そもそも聖女様は軍の訓練に参加しているのか?
何を目指しているのだ?
「軍は皆揃って馬鹿なのか‥」
頭が痛くなってきた。
ルイードを軍のトップにしようとした奴は誰だ?
私だ!
つまらないツッコミを入れてしまうほどに精神的にやられた。
外遊に出ている父上が早く戻られる事を願う。
もう一度、書類に目を通した。
「この責任を誰がとるかわかっているのか‥」
王太子として訓練計画書にサインした。
「兄上、ありがとう!」
満面の笑みを浮かべるルイード。
私が令嬢なら惚れてしまうくらいのいい笑顔だ。
軍と揉めるのと大臣たちに嫌味を言われるのどちらかを選べと言われれば、嫌味の方がまだマシだ。
ルイードと聖女様が街で楽しそうにデートするのが目に浮かぶ。
今みたいにニヤついているのだろう。
どうして、こいつと聖女様のために働き詰めの自分が後処理をしなければならないのか納得できない。
聖女様が結婚しない限り私は婚約者もできないのに‥
「はぁ、聖女様の誕生日、休もうかな。」
心の声が漏れるのは仕方がない。
FIN
トントンと机の上の書類を指先で指しながら説明を乞う兄である王太子はイライラしながら聞く。
政務が立て込んでおり、一日中、書類と格闘していた。
その中に明らかにふざけた内容の書類があるのを見つけ、すぐさまルイードを呼び出していたのだ。
ちょっとバツが悪そうに目をそらすルイード。
「そのままだが‥」
「何が街中訓練だ。軍部のいろんな部隊巻き込んで街中で何をするつもりだ。この人数配置はありえない。この日に街で何が起こるんだ?」
「コトミへのサプライズ‥」
ポソリと言う。
空耳か?聖女様の名前が出てきたぞ‥
話を聞けばその日が聖女様の誕生日らしい。
「彼氏彼女というのは一緒に買い物に行ったり、ご飯食べたり、手を繋いで歩いたりするらしい。」
「うん、で?」
「コトミの希望を叶えるのは彼氏の役目だろう。」
ドヤ顔でルイードは宣言する。
うん、だから?
聖女様と両想いになって浮かれまくっているのは見ていてもわかる。
聖女様の為に外出を企画するのもわかる。
だが、この規模はなんだ!
軍を巻き込んで街で遊ぶだなんて以ての外だ!
忙しくずっと政務に追われているのに目の前の弟はその時の様子を思い浮かべてにやけている。
腹立たしくて仕方ない。
「だからって軍を巻き込むな!」
ルイードがキリッと見つめ返して返答してくる。
「巻き込んだ訳ではないぞ。護衛騎士だけでは足りないからな、護衛の依頼を軍にしたら皆が自分もと言いだし、人数が膨らみすぎたんだ。だからいっその事、訓練にしてしまおうと。」
パラパラと書類に目を通し参加メンバーの名前を確認する。
このメンバーが自発的に聖女を守ろうとしている?
「どう言うことだ?」
「コトミはアルーのような平民の命も聖女の命と同等に扱おうとした。命の重みを必死で訴えた事は、軍所属の平民を感動させた。」
うん、そうだろうな。
聖女様は人の命に上下をつけない。
今まで命を軽く見られていた平民にとっては衝撃の出来事だっただろう。
「そして軍は強さこそ最高だと考える者も多い。気分転換に剣の訓練にも参加しているが、コトミは強いぞ。アルーをかばって刺客の前に剣を持って立ち、撃退した事は軍の中でも伝説となっている。聖女は最強の女だと憧れる者も多い。軍内に聖女のファンクラブもあるぞ。ちなみに俺も入っている。」
自慢気に聖女様を語るルイード。
何をどう突っ込めばいい?
そもそも聖女様は軍の訓練に参加しているのか?
何を目指しているのだ?
「軍は皆揃って馬鹿なのか‥」
頭が痛くなってきた。
ルイードを軍のトップにしようとした奴は誰だ?
私だ!
つまらないツッコミを入れてしまうほどに精神的にやられた。
外遊に出ている父上が早く戻られる事を願う。
もう一度、書類に目を通した。
「この責任を誰がとるかわかっているのか‥」
王太子として訓練計画書にサインした。
「兄上、ありがとう!」
満面の笑みを浮かべるルイード。
私が令嬢なら惚れてしまうくらいのいい笑顔だ。
軍と揉めるのと大臣たちに嫌味を言われるのどちらかを選べと言われれば、嫌味の方がまだマシだ。
ルイードと聖女様が街で楽しそうにデートするのが目に浮かぶ。
今みたいにニヤついているのだろう。
どうして、こいつと聖女様のために働き詰めの自分が後処理をしなければならないのか納得できない。
聖女様が結婚しない限り私は婚約者もできないのに‥
「はぁ、聖女様の誕生日、休もうかな。」
心の声が漏れるのは仕方がない。
FIN
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