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ルイードと王太子(王太子視点)
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ルイードはバンと王太子の机を叩く。
「どういう事か説明しろ。」
王太子に不敬だと驚く人間もいるが、この二人は昔から基本的にこのスタイルだ。
慣れた側近は大げんかすらサラッと無視をする。
それほどいつもの事なのだ。
王太子に楯突く者はそうはいない。
王太子自身、弟が可愛いのだろう。
弟の不敬など全く気にしない。
「どうもこうもない。そのままだ。その書類は読んだんだろう?」
ルイードのにらみを王太子は軽く無視する。
「読んだ上で聞いている。どうして俺がアーリア姫の相手をしなければならない?」
王太子のその態度にルイードのイライラは増す。
書類は、フランライグ王国第一王女アーリア姫の護衛、夜会のエスコートについてのスケジュールが書かれた計画書だった。
「それが姫のご希望だ。聖女様といい、お前はモテるな。」
ニコニコと笑いながらいう王太子。
「ふざけるな。俺にはアイーダという婚約者がいる。護衛を兼ねているとはいえ、姫の夜会のエスコートなどできるか。バレてアイーダに嫌われたらどうする。」
不貞腐れるルイード。
問題はそこかと王太子は首を傾げたくなる。
そんなの何とでもいい訳できるだろう‥
浮気する訳じゃあるまいし。
「姫もお前に婚約者がいる事は知っている。これはお願いではなく命令だ。嫌ならお前を国境の任務に回すぞ。しばらく聖女様に会えなくなるがよいか?」
王太子は脅しをかける。
これもいつもの事。
だが、今回は痛いところをついている。
今はルイードの進退も任務先も笑みを浮かべて脅す目の前の王太子の思いのままだから。
ちょっと前の荒れていた時のルイードなら軍も第二王子もやめてやる!くらいは言ったかもしれない。
だが、今そうなればアイーダの婚約者から外される。
王太子は知っているのだ。
ルイードがアイーダから離されるのを一番恐れている事を。
ルイードは無言で睨みつける。
「何か言いたい事がある様だな。」
ニコニコと話しかける王太子を見てルイードのイラつきはピークとなる。
「何もない。だが、覚えていろよ‥。」
子どもの様な捨て台詞しか言えないルイードの完全敗訴だ。
「お前は本当に馬鹿だな。いつもなら交渉ももっとうまくやれるだろう?どうして聖女様が絡むとそんなに崩れる?感情的に動きすぎだ。お前の弱みになるぞ。」
呆れながら王太子はいう。
「‥忠告はありがたくもらっておく。だが、アイーダのためなら全てを失っても構わない。命だって惜しくない。」
堂々と宣言するルイード。
「はっ、お前そこまで入れ込んでいるのか‥」
「悪いか。」
「悪いに決まっている!お前はこの国の第二王子だ。私に何かあればお前がこの国を治めていかなければならない。」
王太子も感情が出ている。
そんな王太子をルイードは鼻で笑う。
「第二王子などアイーダを手に入れるために必要な肩書きであるだけだ。この国は兄上が治めていくのだから問題ない。何かなど俺が起こさせない。だからアイーダと結婚さえすれば、王子など必要ない肩書きだ。」
ルイードはドヤ顔だ。
一度結婚すれば余程の理由がない限り離縁は許されない。
ルイードが廃嫡して貴族になっても聖女が異議を申し立てなければ婚姻はそのまま継続される。
「お前本気なのか‥聖女様の為に全てを捨てるつもりなのか?」
王太子から完全に微笑みは消えた。
「それをアイーダが望むならば。今回の件は受けるが、アイーダに何かあればアーリア姫だって容赦はしない。」
ルイードはアーリアが何かすれば手加減しないと言う。
昔からルイードに執着しているアーリア姫は確かに何かを企むかもしれない。
今回、ルイードをアーリア王女に付けたのはルイードの相手は聖女様以外には考えられないというのを見せつけるためだ。
聖女様に惚れきっているのは誰が見ても明らか‥
国レベルのめんどくさい話になる前に王女にルイードを諦めてもらいたい。
きっと、それをルイードに言ったところで理解しないし、演技などできないだろう。
素のルイードを見せつけるのが一番良いと王太子は思ったのだ。
前にルイードが殴り飛ばしそうになったのはこの王女だったのだから王太子は不安がこみ上げてくる。
「国益のある国の王女だ。何があろうと手を出すな、この国にとって何が重要か考えろ。」
念押しをルイードにしておく。
「だから何だ?一番はアイーダだ。アイーダがいる国を守る。それが俺だ。」
弟は真っ直ぐで融通がきかないと思っていたが‥
これは流石にまずい。
遅くに来た初恋が弾け飛んでいる。
いや、爆発、暴発レベルでまずい。
あんなに令嬢を避けまって荒れていたのが、やっと落ち着いてきた‥と思ったら。
聖女様に全てを捧げる為に今まで積み上げてきたものを捨てるだと。
私が許す訳がない。
ルイードはこう見えて人を惹きつける力と仕事の能力はあるのだ。
だからこそ、令嬢に絡まれまくっていたが。
うまく使えば私の仕事の効率は格段に上がる。
何が何でも残さねば。
ルイードがいなくなれば確実に私は過労死する。
聖女様に面会を申し込みをしよう。
これ以上、この馬鹿弟がおかしな方向に向かわないように。
「どういう事か説明しろ。」
王太子に不敬だと驚く人間もいるが、この二人は昔から基本的にこのスタイルだ。
慣れた側近は大げんかすらサラッと無視をする。
それほどいつもの事なのだ。
王太子に楯突く者はそうはいない。
王太子自身、弟が可愛いのだろう。
弟の不敬など全く気にしない。
「どうもこうもない。そのままだ。その書類は読んだんだろう?」
ルイードのにらみを王太子は軽く無視する。
「読んだ上で聞いている。どうして俺がアーリア姫の相手をしなければならない?」
王太子のその態度にルイードのイライラは増す。
書類は、フランライグ王国第一王女アーリア姫の護衛、夜会のエスコートについてのスケジュールが書かれた計画書だった。
「それが姫のご希望だ。聖女様といい、お前はモテるな。」
ニコニコと笑いながらいう王太子。
「ふざけるな。俺にはアイーダという婚約者がいる。護衛を兼ねているとはいえ、姫の夜会のエスコートなどできるか。バレてアイーダに嫌われたらどうする。」
不貞腐れるルイード。
問題はそこかと王太子は首を傾げたくなる。
そんなの何とでもいい訳できるだろう‥
浮気する訳じゃあるまいし。
「姫もお前に婚約者がいる事は知っている。これはお願いではなく命令だ。嫌ならお前を国境の任務に回すぞ。しばらく聖女様に会えなくなるがよいか?」
王太子は脅しをかける。
これもいつもの事。
だが、今回は痛いところをついている。
今はルイードの進退も任務先も笑みを浮かべて脅す目の前の王太子の思いのままだから。
ちょっと前の荒れていた時のルイードなら軍も第二王子もやめてやる!くらいは言ったかもしれない。
だが、今そうなればアイーダの婚約者から外される。
王太子は知っているのだ。
ルイードがアイーダから離されるのを一番恐れている事を。
ルイードは無言で睨みつける。
「何か言いたい事がある様だな。」
ニコニコと話しかける王太子を見てルイードのイラつきはピークとなる。
「何もない。だが、覚えていろよ‥。」
子どもの様な捨て台詞しか言えないルイードの完全敗訴だ。
「お前は本当に馬鹿だな。いつもなら交渉ももっとうまくやれるだろう?どうして聖女様が絡むとそんなに崩れる?感情的に動きすぎだ。お前の弱みになるぞ。」
呆れながら王太子はいう。
「‥忠告はありがたくもらっておく。だが、アイーダのためなら全てを失っても構わない。命だって惜しくない。」
堂々と宣言するルイード。
「はっ、お前そこまで入れ込んでいるのか‥」
「悪いか。」
「悪いに決まっている!お前はこの国の第二王子だ。私に何かあればお前がこの国を治めていかなければならない。」
王太子も感情が出ている。
そんな王太子をルイードは鼻で笑う。
「第二王子などアイーダを手に入れるために必要な肩書きであるだけだ。この国は兄上が治めていくのだから問題ない。何かなど俺が起こさせない。だからアイーダと結婚さえすれば、王子など必要ない肩書きだ。」
ルイードはドヤ顔だ。
一度結婚すれば余程の理由がない限り離縁は許されない。
ルイードが廃嫡して貴族になっても聖女が異議を申し立てなければ婚姻はそのまま継続される。
「お前本気なのか‥聖女様の為に全てを捨てるつもりなのか?」
王太子から完全に微笑みは消えた。
「それをアイーダが望むならば。今回の件は受けるが、アイーダに何かあればアーリア姫だって容赦はしない。」
ルイードはアーリアが何かすれば手加減しないと言う。
昔からルイードに執着しているアーリア姫は確かに何かを企むかもしれない。
今回、ルイードをアーリア王女に付けたのはルイードの相手は聖女様以外には考えられないというのを見せつけるためだ。
聖女様に惚れきっているのは誰が見ても明らか‥
国レベルのめんどくさい話になる前に王女にルイードを諦めてもらいたい。
きっと、それをルイードに言ったところで理解しないし、演技などできないだろう。
素のルイードを見せつけるのが一番良いと王太子は思ったのだ。
前にルイードが殴り飛ばしそうになったのはこの王女だったのだから王太子は不安がこみ上げてくる。
「国益のある国の王女だ。何があろうと手を出すな、この国にとって何が重要か考えろ。」
念押しをルイードにしておく。
「だから何だ?一番はアイーダだ。アイーダがいる国を守る。それが俺だ。」
弟は真っ直ぐで融通がきかないと思っていたが‥
これは流石にまずい。
遅くに来た初恋が弾け飛んでいる。
いや、爆発、暴発レベルでまずい。
あんなに令嬢を避けまって荒れていたのが、やっと落ち着いてきた‥と思ったら。
聖女様に全てを捧げる為に今まで積み上げてきたものを捨てるだと。
私が許す訳がない。
ルイードはこう見えて人を惹きつける力と仕事の能力はあるのだ。
だからこそ、令嬢に絡まれまくっていたが。
うまく使えば私の仕事の効率は格段に上がる。
何が何でも残さねば。
ルイードがいなくなれば確実に私は過労死する。
聖女様に面会を申し込みをしよう。
これ以上、この馬鹿弟がおかしな方向に向かわないように。
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