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ルイード以外の訪問者
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忙しくなるとルイードは言った翌日から全く顔を出さなくなった。
王城内でいるらしくミルダさんは時々すれ違う事があるようだ。
どんな様子か聞こうとしても「元気そうでした」といって誤魔化される。
そんなに私に話せない重要機密なんだろうか。
王子様だもん、今までが構われすぎてすぎてたんだよ。
きっと無理してたんだ。
体調が心配だ‥
ちゃんと寝てるのかな?
ちゃんとご飯は食べてるのかな?
毎日会ってた人と急に会えなくなって胸にポッカリと穴が空いた感じ。
でも頑張って仕事している人に寂しいなんてワガママは言えない。
我慢、我慢。
部屋も出るなと言われているし、本を読んで、部屋で教師からマナーやこの世界の事を教わるだけの日々‥
そうそう、先生は私の記憶喪失に驚いていたが、何より驚いていたのが‥
以前に教えた時よりも覚えはかなり悪いらしい‥
同一の存在なのに頭の出来は違うの?
そう思ったけど、勉強に対する姿勢が違うそうだ。
今の私は何故それが必要なのかを聞く。
この世界の当たり前の事を当たり前として捉える事ができない。
日本にいた時の価値観が邪魔をして必要性が全く感じられないのだ。
だから、勉強にもマナーにも身が入っていないんだと思う。
って言い訳なのかな?
まだこっちの世界で生きていく覚悟がないのかもしれない‥
「聖女様‥外務大臣様がお越しですが、どう致しましょうか?前触れもないので断りましょうか?」
ミルダさんに声をかけられる。
外務大臣?
初めての人だ。
護衛さんとメイドさんを除けば、ここに来てルイードとしか会っていない。
私の世界って本当に狭いなぁ。
「いいよ、暇だし。用件だけでも聞こうよ。」
どうせ暇人だし、外務大臣ってどんな人かも興味あるし。
ちょっと会うだけ。
「‥承知しました。」
ミルダさんは頭を下げ、部屋を出ると一人の男性を連れて戻ってきた。
ぽっちゃり体型のおじ様がニコニコと笑いながら会釈をする。
着ているものはキラキラ、フリフリ眩しい。
この世界のファッションセンスも私の価値観と合わない。
こんな人が街歩いてたら不審者で警察に職務質問されてるよ。
怪しさ満載‥
面会して5秒で会うんじゃなかったと後悔した。
「聖女様にはご機嫌麗しく‥」
服が気になって外務大臣のあいさつなんか上の空。
あっ、立たせたままだ。
「どうぞ、お座りください。」
一瞬怪訝そうな顔をした外務大臣。
えっ?
なんか粗相した?
座ってっていっただけだよ?
面会した時の対応マナーあった?
苦情でも来るのかと思い構えたが、
「お気遣いありがとうございます。」
と頭を下げ、外務大臣は椅子に腰をかけた。
外務大臣の話は夜会への参加だった。
「聖女様が体調を崩されてから公の場に出ておりません。ルイード様はまだ早いと仰いますが、皆、心配しておりますし、一度公の場に出席を頂きたいのです。」
お茶を入れているミルダさんを見る。
「前は参加してたの?」
と聞いた。
ミルダさんは遠慮気味に
「はい。」
と答えた。
そっかぁ、アイーダもずっとこの部屋に閉じこもっていた訳じゃないんだ。
ただ、この王城にいれば良いっていうのはルイードが私に気を使っていただけ。
それに私は甘えてたんだ‥。
「お元気な姿を少しだけで良いのでお見せくださいませんか?本日の夜会はフランライグ王国第一王女アーリア姫の歓迎の宴です。アーリア王女も聖女様にお会いしたいと仰っておいでです。」
頭を下げる外務大臣。
「アーリア姫‥」
ミルダさんがつぶやく。
知っている人なんだろうか。
まぁ、王女というくらいだから有名人なんだろうけど。
「聖女様、このお話はルイード様の許可を取りましょう。」
ミルダさんは言う。
「ルイードは忙しそうだし、許可取らなくていいよ。ちょっと顔出すだけでしょう?」
「はい、ほんの数分でも構いません。」
外務大臣はニコニコ答える。
うん、ちょっと顔だしてニッコリ笑って引っ込む。
うん、それで聖女様の役目が終わる。
ここで何もする訳でもない私に課せられた役目。
しっかり果たさないと!
私からの許可を取るとお茶も飲まずに足早に外務大臣は去った。
「聖女様、やはりルイード様に確認致しましょう。」
私はお菓子をつまみながらお茶を飲んでいる。
元々紅茶なんか飲む習慣はなかったけど、ここに来てから毎日飲んでいる。
「気になることがあるの?」
ミルダさんに聞く。
ミルダさんは遠慮気味にいう。
「アーリア姫は確かルイード様をお慕いしていたお方だったと記憶してます。今回、何やら裏がありそうな気がします。」
お慕い?
「ルイードを好きだったってこと?」
「はい。」
「付き合っていたの?」
「それはないと思いますが、よくこの国に来てはルイード様の横におられました。」
ルイードの元カノなんだろうか?
アーリア姫という人の片思い?
あれだけカッコいいんだし、元カノの一人や二人、いや三人、四人いたっておかしくない。
アイーダと婚約したのはいつなんだろう。
そこからはアイーダ一筋なんだろうか‥
それとも‥
急に来なくなったルイード‥
アーリア姫がこの国に来ている‥
偶然?それとも?
「ルイードの許可はいらない。私は行く。構わないよね?」
ミルダさんは驚いたように私をみて
「‥承知しました。」
とだけ返事をし、夜会準備に取り掛かった。
王城内でいるらしくミルダさんは時々すれ違う事があるようだ。
どんな様子か聞こうとしても「元気そうでした」といって誤魔化される。
そんなに私に話せない重要機密なんだろうか。
王子様だもん、今までが構われすぎてすぎてたんだよ。
きっと無理してたんだ。
体調が心配だ‥
ちゃんと寝てるのかな?
ちゃんとご飯は食べてるのかな?
毎日会ってた人と急に会えなくなって胸にポッカリと穴が空いた感じ。
でも頑張って仕事している人に寂しいなんてワガママは言えない。
我慢、我慢。
部屋も出るなと言われているし、本を読んで、部屋で教師からマナーやこの世界の事を教わるだけの日々‥
そうそう、先生は私の記憶喪失に驚いていたが、何より驚いていたのが‥
以前に教えた時よりも覚えはかなり悪いらしい‥
同一の存在なのに頭の出来は違うの?
そう思ったけど、勉強に対する姿勢が違うそうだ。
今の私は何故それが必要なのかを聞く。
この世界の当たり前の事を当たり前として捉える事ができない。
日本にいた時の価値観が邪魔をして必要性が全く感じられないのだ。
だから、勉強にもマナーにも身が入っていないんだと思う。
って言い訳なのかな?
まだこっちの世界で生きていく覚悟がないのかもしれない‥
「聖女様‥外務大臣様がお越しですが、どう致しましょうか?前触れもないので断りましょうか?」
ミルダさんに声をかけられる。
外務大臣?
初めての人だ。
護衛さんとメイドさんを除けば、ここに来てルイードとしか会っていない。
私の世界って本当に狭いなぁ。
「いいよ、暇だし。用件だけでも聞こうよ。」
どうせ暇人だし、外務大臣ってどんな人かも興味あるし。
ちょっと会うだけ。
「‥承知しました。」
ミルダさんは頭を下げ、部屋を出ると一人の男性を連れて戻ってきた。
ぽっちゃり体型のおじ様がニコニコと笑いながら会釈をする。
着ているものはキラキラ、フリフリ眩しい。
この世界のファッションセンスも私の価値観と合わない。
こんな人が街歩いてたら不審者で警察に職務質問されてるよ。
怪しさ満載‥
面会して5秒で会うんじゃなかったと後悔した。
「聖女様にはご機嫌麗しく‥」
服が気になって外務大臣のあいさつなんか上の空。
あっ、立たせたままだ。
「どうぞ、お座りください。」
一瞬怪訝そうな顔をした外務大臣。
えっ?
なんか粗相した?
座ってっていっただけだよ?
面会した時の対応マナーあった?
苦情でも来るのかと思い構えたが、
「お気遣いありがとうございます。」
と頭を下げ、外務大臣は椅子に腰をかけた。
外務大臣の話は夜会への参加だった。
「聖女様が体調を崩されてから公の場に出ておりません。ルイード様はまだ早いと仰いますが、皆、心配しておりますし、一度公の場に出席を頂きたいのです。」
お茶を入れているミルダさんを見る。
「前は参加してたの?」
と聞いた。
ミルダさんは遠慮気味に
「はい。」
と答えた。
そっかぁ、アイーダもずっとこの部屋に閉じこもっていた訳じゃないんだ。
ただ、この王城にいれば良いっていうのはルイードが私に気を使っていただけ。
それに私は甘えてたんだ‥。
「お元気な姿を少しだけで良いのでお見せくださいませんか?本日の夜会はフランライグ王国第一王女アーリア姫の歓迎の宴です。アーリア王女も聖女様にお会いしたいと仰っておいでです。」
頭を下げる外務大臣。
「アーリア姫‥」
ミルダさんがつぶやく。
知っている人なんだろうか。
まぁ、王女というくらいだから有名人なんだろうけど。
「聖女様、このお話はルイード様の許可を取りましょう。」
ミルダさんは言う。
「ルイードは忙しそうだし、許可取らなくていいよ。ちょっと顔出すだけでしょう?」
「はい、ほんの数分でも構いません。」
外務大臣はニコニコ答える。
うん、ちょっと顔だしてニッコリ笑って引っ込む。
うん、それで聖女様の役目が終わる。
ここで何もする訳でもない私に課せられた役目。
しっかり果たさないと!
私からの許可を取るとお茶も飲まずに足早に外務大臣は去った。
「聖女様、やはりルイード様に確認致しましょう。」
私はお菓子をつまみながらお茶を飲んでいる。
元々紅茶なんか飲む習慣はなかったけど、ここに来てから毎日飲んでいる。
「気になることがあるの?」
ミルダさんに聞く。
ミルダさんは遠慮気味にいう。
「アーリア姫は確かルイード様をお慕いしていたお方だったと記憶してます。今回、何やら裏がありそうな気がします。」
お慕い?
「ルイードを好きだったってこと?」
「はい。」
「付き合っていたの?」
「それはないと思いますが、よくこの国に来てはルイード様の横におられました。」
ルイードの元カノなんだろうか?
アーリア姫という人の片思い?
あれだけカッコいいんだし、元カノの一人や二人、いや三人、四人いたっておかしくない。
アイーダと婚約したのはいつなんだろう。
そこからはアイーダ一筋なんだろうか‥
それとも‥
急に来なくなったルイード‥
アーリア姫がこの国に来ている‥
偶然?それとも?
「ルイードの許可はいらない。私は行く。構わないよね?」
ミルダさんは驚いたように私をみて
「‥承知しました。」
とだけ返事をし、夜会準備に取り掛かった。
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