【完結】身体の入れ替わり先は聖女様で第二王子の婚約者⁉︎

みやちゃん

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アーリア姫と夜会

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「アイーダ、どうしてここに‥」
ルイードは前にいた私に気付いた。
その瞬間‥
ルイードの顔が焦りに焦り、オロオロと目が泳いでいた。
さっきまでの完璧王子はどこに?
と言いたくなるくらい全くの別人のように感じる。

私から話しかけた方が良いのかわからないけど‥チラッとルイードをみてどうしたらいいか目で聞いた。
ルイードは明らかに動揺しており、それどころではない様子‥

タキシードやドレスを着た人達がヒソヒソとこっちを見ながら話しているのが見える。

はぁ。
この沈黙の時間はきつい‥
先にしびれを切らしたのは私。
「外務大臣さんにお呼ばれしたから。忙しいというのはこういう事だったのね‥心配して損しちゃった。」
軽く流そうとルイードに笑った。
それを見たルイードは完全に固まった。
そんなルイードの様子を見て、隣にいる外務大臣は明らかに顔を青ざめている。

「聖女アイーダ様、お初にお目にかかります。フランライグ王国第一王女アーリア・バァン・ロイグマイナー・フランライグでございます。」
ふんわりとドレスを持ち頭を下げる彼女は完璧なお姫様だった。
めちゃくちゃ美人。
顔小さい。
この人もテレビの中でしか見れないアイドルみたい。
ボーと見つめて反応が遅れる。

「あぁ、私はアイーダです。よろしくお願いします。」
ペコリと頭を下げた。
あいさつといえばそれしか出てこなかった。この世界のあいさつのマナーすらろくにできない私は恥ずかしくてその場に立っているのが辛った。

「アイーダ様は庶民的なマナーのお方なのですね。」
王女にクスクス笑われ、顔がカァーと熱くなる。
周りの貴族たちからのクスクスと抑えた笑いが聞こえる。

「アーリア姫!」

ルイードがアーリア姫と私の間に立ち、抗議しようとした。
私を庇ってくれたのは嬉しいけど、これ以上目立ちたくない。
ここにはいたくない。

「ルイード、やめて。私はこれで失礼します。」
一礼をして離れようとするとルイードが手首を掴んだ。
「待て、アイーダ。」
何で止めるのよ!
早くここから離れたいのに。

「はなしてルイード。」
ルイードを睨む。
空気読んでよ!
私はここにいてはいけない。
この国の聖女としてもルイードの婚約者としても恥をかかせる事になる。

ルイード自身、空気を読むどころではないくらい焦っていた。

「嫌だ、話を聞いてくれ。これは、アーリア姫の護衛の任務だ。勘違いしないでくれ。俺の婚約者はアイーダだ。」
その言葉に私も切れた。
もう言い訳なんかいらないのに。
何が勘違い?
浮気彼氏の言い訳そのまま。

「私は何も聞いていないよ。やましい事があるからペラペラと言い訳が出るんじゃないの?私を宮の外に出るなと言ったのはそういう事だったんだね。」

「いや、それは‥護衛が減ったのは本当だ。‥後はアイーダに勘違いされたくなかったから‥。」
ルイードは完全に黒に決定だ。
この話し方でわかる。
動揺しすぎだ。
やましい事があるのだ。

ルイードが言い訳をすればするほど私の心は冷えていく。
「はなしてルイード。こんな所でみっともない。」
これ以上、自分の醜態を晒したくない。
こんな完璧なお姫様の前で‥

ルイードの手に力が入る。
掴まれている手首が痛い。
「嫌だ、はなしたくない。」
何言ってるの?
顔がいいと何でも許されると思っているのか。
腹立たしさがこみ上げる。

「はなしてルイード。これ以上、私を怒らせないで?」
冷たい声が出た。
ビクッと反応し青い顔をしてルイードは渋々手首を離した。

「アイーダ、話が‥」
まだ諦めていないらしい。
本当に浮気男の典型だ。

そもそも私はルイードの婚約者でもなんでもない。
アイーダの婚約者だ。
私も何でこんなにイライラしているのだろう。

「ルイードはアーリア姫のエスコートがあるんだよね?」

「あぁ、だが‥このままでは」

「アーリア姫様、では失礼します。」
ルイードを無視をし、アーリア姫に微笑みかけた。

「えっ、えぇ。」
アーリア姫はルイードの様子をみて呆気にとられていたようだ。

早くここを離れたい。
この二人はお似合いだ。
王子とお姫様だもん。

アーリア姫が言った通りあいさつのマナーすらできない。
貴族の人たちにも笑われた。
王子の側になんかふさわしくないのは私が一番わかっている。

できるだけ早く離れたくて急ぎ足で人々の間をすり抜けた。
人通りが減ったところで一気に走り出した。

この時点で気づいていなかった。
人混みで完全に護衛騎士を振り切ってしまっていたことを。
夜会会場では基本的に周囲を守られており、護衛が夜会会場まで入ることはあまりない。
そもそも急に護衛対象が走っていなくなるなんて普通はないため、アイーダの動きに完全に護衛騎士達は対応できていなかったのだ。

しばらく走った所で後ろから叫び声がきこえた。
「聖女様!お待ちください。」
一人の護衛さんが追いついた。
息が切れている。
私を探し回ったのだろう。
もう夜会会場から離れ、人通りがない薄暗い廊下だ。

泣き顔は見られたくない。
「このまま帰ります。」
「ですが、他の護衛達がまだ‥」
若い護衛さんは私を探し回っている他の護衛を待ちたいのだ。

「今すぐ帰ります。」
ベットに入って泣きたい。
こんな所で泣きたくない。
私の涙を堪える厳しい顔に若い護衛さんは渋々了承する。

「わかりました。私の側を離れないでください。」
護衛さんが前を立ち、人通りのない廊下をすすむ。


この二人の選択が大きく間違っていたことに気づくまでそう時間はかからなかった‥
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