【完結】聖騎士を死なせた聖女は平民として生きる?

みやちゃん

文字の大きさ
6 / 49

6

しおりを挟む
ノルディはレピアより二つ上の第二王子である。
レピアとは幼馴染でこうやって定期的にお茶会をし親睦を深めていた。
神殿と皇室の交流という建前によって。

だがノルディにとって聖女レピアとのお茶会は待ちに待ったものだった。

会いたくて会いたくてたまらない他には代え難い大切な時間。
忙しいノルディだが、お茶会は待ちきれなくていつもレピアよりだいぶ早く来ていた。

そこで見たものは…
レピアが同い年くらいの聖騎士の制服を着た男と楽しそうに笑いながらこちらに向かっている姿だった。

なんだ…あんな楽しそうなレピア様を見たことがない。

ノルディは嫌な予感がしたが、精一杯の引きつった笑顔でレピアを迎えた。
レピアの大好きなお茶とお菓子を用意して。

「ってことがありました!」
お茶会でレピアはアールと出会った惚気話をノルディにしていた。

護衛であるアールは少し離れたところからその様子を見ていた。

ノルディは剣士としても優秀であり、護衛を離れたところに置くのはいつものことだった。
お茶会の日はレピアと二人で会話を楽しみたかったから。

だが、レピアはアールが離れると早口でアールとの出会いについて話しまくった。

その話を聞いたノルディは完全に固まっていた。

「レピア様…それは…」

「ノルディに借りた本の通りなの!これが一目惚れというものなのね。」
レピアは興奮していてノルディの表情を全く見ていなかった。

「一目惚れ…」
ノルディは呆然と呟いた。

ノルディはレピアに何冊か恋愛小説をプレゼントしていた。

それは誰かに一目惚れをさせるためではない。

ずっと神殿で育ってきたレピアには恋愛感情という感覚が疎かった。
そのためノルディがいくら頑張ってアプローチしてもいい雰囲気になることがなかった。

だからこそ、恋愛小説を参考にして自分の気持ちにも気付いて欲しいと考えた。
自分を見て欲しかった。

レピアとの関係に進展を望んでいたのだ。

それなのに…

「本当に素敵なの。はぁ、ドキドキして顔がちゃんと見れない。」
レピアは顔を赤らめながらウットリと思い出すように話した。

こんな風に誰かを想い幸せそうな笑顔のレピアをノルディは見たことがなかった。

「こんな風に笑うのだな…」
自分がこの笑顔を引き出したかった。

ノルディはレピアの存在を物心つく頃には知っていた。
この国を救ってくれる聖女。
誰よりも大切な存在。

皇帝の代わりはいても聖女の代わりはいない。

皇族であるノルディですらレピアに求婚どころか面会すら頻回にはできなかった。

小さな頃、自分の父である皇帝よりも立場が上である聖女見たさにノルディは神殿に潜り込んだ。

人々の前に凛とした姿で立ち微笑む自分より小さな聖女レピアを見てしまった。

レピアの魅力に一気に引き込まれた。

自分の存在を知ってほしい。
近づきたい。
話がしたい。
あの笑顔を自分に向けて欲しい。

ノルディの望みは大きくなっていった。
優秀な皇子としてレピアの相手として認められなければレピアに近づくことも許されない。
それに何年もかかった。

そうしてやっとレピアに近づくことが許され、こうやって会う機会を得て名前を呼ぶ許可までもらった。
やっとここまでの関係になったのに…

「レピア様、そろそろお時間です。」
アールが近づいてきた。

ノルディは自分の耳を疑った。
今この男はレピア様の名を呼んだのか?
今日出会ったばかりではなかったか?

「ええ、アール。じゃあ、ノルディまたね。」
レピアはノルディに手を振りアールにとびきりの笑顔を向けた。
レピアの反応を見れば名を呼ぶ事も許したのだとわかる。

今日会ったばかりの聖騎士に全ての面で負けた…そう認めるしかなかった。
ノルディはしばらくその場から動く事もできなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...