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ノルディは神殿から急ぎの遣いが来ていると知り嫌な予感がした。
だからこそ最優先で面会した。
レピアとの件であれほどノルディを避けていた神殿がこんな無理やり面会の希望をすることなど今までなかった。
余程の緊急事態なのだとわかっていた。
だが、それはノルディの予想をはるかに超えた内容だった。
レピアが生命の危機に瀕しており治療師が戻るまでの治癒力を貸してほしいとの願いだったのだから。
ノルディはその後の事をまともに覚えていない。
その場の政務も全て置いて馬にかけ乗り、そのまま神殿に走った。
何があった?
神殿がレピア様を危険に晒すようなマネはしない。
暗殺?いや聖女に手を出すやつなどいない。
レピア様…
もう少しだけ頑張ってくれ…
ノルディは今日ほど治癒について学んでいて良かったと思った事はなかった。
皇族が治癒の力を覚えることはない。
治癒の力を使えるようになるにはかなりの時間を費やす。
しかも勉強したからといって必ず使えるとも限らないのだ。
だからこそ、数少ない治癒師は皆から尊敬される立場となり生活も保証される。
皇族としてそんな使えるようになるかもわからない力をつけるための時間などない。
学ぶのなら別のものを。
それが通常だった。
だが、ノルディは違った。
レピアと繋がりたい。
共通の話題が欲しい。
そしてうまくいけばレピアから色々と教えてもらう時間があるかもしれない。
そんな下心だけだったが、他の勉強を疎かにしないという条件で治癒の力を学んだ。
それこそ、寝る間も惜しむ生活だった。
それでもレピアから才能があると言われて嬉しかった。
誰よりも努力し国でも有数の治癒師としての力を得た時
「あなたが皇族でいるのがもったいないわね。治癒師に向いているのに。」
レピアにそう言われ、自分が誇らしくて仕方なかった。
皇帝に向いていると言われるよりレピアに治癒師に向いていると言われた方が何倍も嬉しい。それがノルディの本音だった。
ノルディはレピアの部屋に初めて入る。
何度もお茶会の後に部屋まで送っていた。
だから場所はわかっている。
いつか入ってみたいと思っていた。
だが、こんな状況で入りたいわけではなかった。
笑顔で部屋にも通されるそんな関係になりたかった。
ノルディは部屋を見た瞬間、呆然とした。
壁やカーテンにも飛び散っている大量の血。
「何でこんなことが…」
「ノルディ様!お願いします!もう治癒師達は限界です!」
大神官の声でノルディは我に返った。
治癒師達数人はもう倒れそうになっている。
治癒師の一人からレピアの手を受け取り力を注いだ。
いくらいつもより少ないといえど、これほどの治癒師が癒しきれないほどの怪我。
どうしたらこんな事になる?
俺の力でもつのか…
ノルディは全てを治癒するのを早々に諦めた。
折れた骨の修復はせず命に直結するものから治癒を促す。
後は治療班が戻るまで命をつなぐ。
それがレピアにどれだけの苦痛を与えるのかわかりながら他に方法はなかった。
「レピア様の意識が戻ったら全身骨折のせいで痛みがひどいだろう。痛み止めと舌を噛まないように口に噛ませるものを準備しろ!後、骨折を固定するものもだ。」
ノルディの声で周りの人間がバタバタと動き出す。
だからこそ最優先で面会した。
レピアとの件であれほどノルディを避けていた神殿がこんな無理やり面会の希望をすることなど今までなかった。
余程の緊急事態なのだとわかっていた。
だが、それはノルディの予想をはるかに超えた内容だった。
レピアが生命の危機に瀕しており治療師が戻るまでの治癒力を貸してほしいとの願いだったのだから。
ノルディはその後の事をまともに覚えていない。
その場の政務も全て置いて馬にかけ乗り、そのまま神殿に走った。
何があった?
神殿がレピア様を危険に晒すようなマネはしない。
暗殺?いや聖女に手を出すやつなどいない。
レピア様…
もう少しだけ頑張ってくれ…
ノルディは今日ほど治癒について学んでいて良かったと思った事はなかった。
皇族が治癒の力を覚えることはない。
治癒の力を使えるようになるにはかなりの時間を費やす。
しかも勉強したからといって必ず使えるとも限らないのだ。
だからこそ、数少ない治癒師は皆から尊敬される立場となり生活も保証される。
皇族としてそんな使えるようになるかもわからない力をつけるための時間などない。
学ぶのなら別のものを。
それが通常だった。
だが、ノルディは違った。
レピアと繋がりたい。
共通の話題が欲しい。
そしてうまくいけばレピアから色々と教えてもらう時間があるかもしれない。
そんな下心だけだったが、他の勉強を疎かにしないという条件で治癒の力を学んだ。
それこそ、寝る間も惜しむ生活だった。
それでもレピアから才能があると言われて嬉しかった。
誰よりも努力し国でも有数の治癒師としての力を得た時
「あなたが皇族でいるのがもったいないわね。治癒師に向いているのに。」
レピアにそう言われ、自分が誇らしくて仕方なかった。
皇帝に向いていると言われるよりレピアに治癒師に向いていると言われた方が何倍も嬉しい。それがノルディの本音だった。
ノルディはレピアの部屋に初めて入る。
何度もお茶会の後に部屋まで送っていた。
だから場所はわかっている。
いつか入ってみたいと思っていた。
だが、こんな状況で入りたいわけではなかった。
笑顔で部屋にも通されるそんな関係になりたかった。
ノルディは部屋を見た瞬間、呆然とした。
壁やカーテンにも飛び散っている大量の血。
「何でこんなことが…」
「ノルディ様!お願いします!もう治癒師達は限界です!」
大神官の声でノルディは我に返った。
治癒師達数人はもう倒れそうになっている。
治癒師の一人からレピアの手を受け取り力を注いだ。
いくらいつもより少ないといえど、これほどの治癒師が癒しきれないほどの怪我。
どうしたらこんな事になる?
俺の力でもつのか…
ノルディは全てを治癒するのを早々に諦めた。
折れた骨の修復はせず命に直結するものから治癒を促す。
後は治療班が戻るまで命をつなぐ。
それがレピアにどれだけの苦痛を与えるのかわかりながら他に方法はなかった。
「レピア様の意識が戻ったら全身骨折のせいで痛みがひどいだろう。痛み止めと舌を噛まないように口に噛ませるものを準備しろ!後、骨折を固定するものもだ。」
ノルディの声で周りの人間がバタバタと動き出す。
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