【完結】聖騎士を死なせた聖女は平民として生きる?

みやちゃん

文字の大きさ
38 / 49

38

しおりを挟む
「聖女様が戻ってくる。」
皇都ではいち早くその情報が流れた。

聖女の行いを批判していた者たちもいざ聖女がいなくなれば魔の扉の出現に不安を抱えた。

今までは聖女がいたから皇都は魔物の侵入から守られていた。
そして聖女がいたからこそ皇都では病気なども少なかったのだと知った。

聖女不在により魔物は侵入し、病気で苦しむ皇都民も増えた。

「ノルディ第二皇子の妃となるらしいし、ずっとここにいるんだな。本当に良かった。」

そう言われレピアは皇都民から歓迎を受けていた。

だが、年頃の娘を持つ貴族達にとっては面白くなかった。
ノルディ第二皇子という優良物件がレピアという悪評のある聖女に持っていかれる事になったのだから。

レピアは皇都民の歓迎も貴族やその令嬢達の妬みもどうでも良かった。
自分がノルディの妃であるのは聖女としての役割を果たす為、自分がまた馬鹿な事をしないように見張る為。
皆が羨むような関係ではないのだから。

「レピア様、一緒に庭に出ないか?今、レピア様の好きな花々が満開だ。」
ノルディはレピアが自分と同じ想いでない事を知っている。
それでも横にいてくれるだけで嬉しかった。

「ノルディ様、私の事はレピアとお呼びください。私は聖女である前にあなたの妃なのですから。」
レピアがノルディに頭を下げる。

ノルディはゴクリと唾を飲んだ。
「レピアと呼んでもいいのか?」

「もちろんです。私達は夫婦です。」
レピアは無表情ままそう答えた。
レピアがノルディを愛さないと言った。
だから形ばかりの夫婦となるつもりだったのに、いつか名前を呼びたいというノルディの夢が一つ叶った。

「レピア、あなたも私の事はノルディと呼んでくれ。敬語もいらない。今まで通りでいい。」

「そういう訳には…」
レピアは皇子妃としての教育も受けており、夫となる皇子に対し敬意を示す為の言動を学んでいた。

聖女ならば敬語を使わなくてもいい。
ノルディよりも身分は高いのだから。
だが、形ばかりの妃といえ、ずっと自分を支えてくれたノルディだからこそ、その立場を尊重したいと考えていた。

「頼む。聖女のあなたは私に敬称も敬語も使わなかっただろう?」
アールと出会う前、一緒にお茶会でたわいもない話をしていたあの頃にノルディは戻りたかった。
だからこんなふうに敬称と敬語を使われると距離を取られているようで寂しかった。

「そうね、あなたが望んでいるのは聖女だものね。」
レピアは頷き、ノルディの言葉に従う事にした。
自分に妃としての役割は求めないと言っていたのを思い出したからだ。

レピアは勘違いをしている。
聖女だから求めているのではない。

ノルディはそう言いたかった。
だが、その言葉を言った瞬間レピアに拒絶されるのが怖くて言えなかった。

求めてすぎてはいけない。
今レピアがここにいる。
それだけでいい。
ノルディはそう言い聞かせた。

「ノルディ?」
黙っているノルディをレピアが覗き込んだ。

「ああ、すまない。少し考え事をしていた。きっと気にいるはずだ、行こう。」
ノルディはレピアに微笑みかけた。

花が大好きなレピアの好みを知り尽くしているノルディが何年もかけて作った庭。
その庭を見たレピアが少しでも癒されることを願った。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...