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「レピアすまない。私はまた何かしてしまったようだ…」
ノルディはレピアの思いが知りたかった。そしてレピアの喜ぶ顔が見たかった。
レピアから別れを切り出されるのも想定していたし、それを受け入れる覚悟もしているつもりだった。
だが、泣かせるつもりなど全くなかったのだ。
レピアを泣かせてしまった事にオロオロとハンカチを出すことしかできない自分が悔しい。
だが、レピアがもし嫌悪感を持っているのならそばにいるのも嫌かもしれないと思うと近づけずにいた。
「いいえ、違うの…」
レピアは涙を流しながら首を横に振った。
「アールを失った時、私は自分がアールを殺してしまったと思った。あの時、自分の血を使おうなんて思わなければ少なくともアールは死ななかったかもしれない。」
レピアは涙をポロポロとこぼしている。
「…そんな話を思い出させるために呼んだんじゃないんだ。私の落ち度だ、すまない…」
ノルディはレピアを泣かせている原因は自分だとわかった。
無理やり会いに来て、あの事件を思い出させるようなお茶を入れた自分の馬鹿さ加減を後悔することしかできない。
「いいえ、ノルディ聞いて。」
ノルディが謝罪するのをレピアは遮った。
自分の言葉すら聞きたくないのかもしれないと思うとノルディは胸が締め付けられた。
レピアの一言ひと言に動揺してしまう。
だが、しっかりとレピアの言葉を受け止めなければ…
ノルディはレピアの次の言葉が出るのを待った。
「あの時聖女の役割を考えず私利私欲に負けた失態に絶望したのよ。そんな私を救い出してくれたのはあのお茶じゃない。あなたなの。暗闇の中に独りでいた私に優しい声と温もりをくれてこの世界に引っ張り出してくれたのはノルディだって気づいたの。」
「レピア…」
レピアにとって迷惑な存在ではなかったと聞くと胸を撫で下ろした。
「気づくのに遅れてごめんなさい。本当にありがとう。あなたのお陰で私は今こうやってここにいるの。」
「抱きしめてもいいか?」
レピアはポロポロと涙を流しながらもコクリと頷いた。
ノルディはレピアにハンカチを渡してそのままギュッと抱きしめた。
「アールの代わりにはなれないが、私も役に立つ事があって良かった。」
ノルディはレピアの耳元で囁いた。
「代わりだなんて…」
「いや、わかっている。レピアがアールを選んだ時、何で私を選ばないのだろうと思って会いに行ったんだ。だが、アールと一緒にいたレピアは聖女ではなく普通の少女だった。」
レピアの嬉しそうな顔もアールに甘えている姿もノルディでは引き出せないものだった。
「だからアールに負けたと思った。私も含めレピアは皆の前では聖女でいなければならなかったのだから。」
だからこそ、身を引いた。
皆の期待というプレッシャーに常にさらされるレピアが素に戻って安心できる場が必要だと知っていた。
その場を作るのが自分ならどれだけよかったかなど今更言っても仕方がない。
聖女としてレピアを敬っていた自分にはアールのような対応はできなかったのだから。
アールは幼馴染の為に神殿に来た。
聖騎士として聖女をいやレピアを敬う気持ちがそもそもあまりなかったのかもしれないと思うとそんなアールに負けた自分が情けなくてたまらなかった。
そんなノルディの表情を読み取ったようにレピアは言葉を続ける。
「確かにアールの前で素直になれたし、楽しかった。でも私が愛しているのは…」
「愛している者が他にいるのか?」
アールの他にいる。
レピアはそう言おうとしているのか?
誰だ?私の知っている者か?
ノルディの顔がこわばった。
だから避けられていたのか…
避けられていたのか理由がわかったが、ノルディはこれ以上レピアの言葉を聞きたくはなかった。
ノルディはレピアから顔を背け目を逸らそうとしたが、レピアがそれを許さなかった。
レピアが両手でノルディの顔を押さえ自分から目を背けられないように固定した。
「あなたよ、ノルディ。」
レピアはそれでも目を逸らすノルディを真っ直ぐに見つめて言った。
ノルディはレピアの思いが知りたかった。そしてレピアの喜ぶ顔が見たかった。
レピアから別れを切り出されるのも想定していたし、それを受け入れる覚悟もしているつもりだった。
だが、泣かせるつもりなど全くなかったのだ。
レピアを泣かせてしまった事にオロオロとハンカチを出すことしかできない自分が悔しい。
だが、レピアがもし嫌悪感を持っているのならそばにいるのも嫌かもしれないと思うと近づけずにいた。
「いいえ、違うの…」
レピアは涙を流しながら首を横に振った。
「アールを失った時、私は自分がアールを殺してしまったと思った。あの時、自分の血を使おうなんて思わなければ少なくともアールは死ななかったかもしれない。」
レピアは涙をポロポロとこぼしている。
「…そんな話を思い出させるために呼んだんじゃないんだ。私の落ち度だ、すまない…」
ノルディはレピアを泣かせている原因は自分だとわかった。
無理やり会いに来て、あの事件を思い出させるようなお茶を入れた自分の馬鹿さ加減を後悔することしかできない。
「いいえ、ノルディ聞いて。」
ノルディが謝罪するのをレピアは遮った。
自分の言葉すら聞きたくないのかもしれないと思うとノルディは胸が締め付けられた。
レピアの一言ひと言に動揺してしまう。
だが、しっかりとレピアの言葉を受け止めなければ…
ノルディはレピアの次の言葉が出るのを待った。
「あの時聖女の役割を考えず私利私欲に負けた失態に絶望したのよ。そんな私を救い出してくれたのはあのお茶じゃない。あなたなの。暗闇の中に独りでいた私に優しい声と温もりをくれてこの世界に引っ張り出してくれたのはノルディだって気づいたの。」
「レピア…」
レピアにとって迷惑な存在ではなかったと聞くと胸を撫で下ろした。
「気づくのに遅れてごめんなさい。本当にありがとう。あなたのお陰で私は今こうやってここにいるの。」
「抱きしめてもいいか?」
レピアはポロポロと涙を流しながらもコクリと頷いた。
ノルディはレピアにハンカチを渡してそのままギュッと抱きしめた。
「アールの代わりにはなれないが、私も役に立つ事があって良かった。」
ノルディはレピアの耳元で囁いた。
「代わりだなんて…」
「いや、わかっている。レピアがアールを選んだ時、何で私を選ばないのだろうと思って会いに行ったんだ。だが、アールと一緒にいたレピアは聖女ではなく普通の少女だった。」
レピアの嬉しそうな顔もアールに甘えている姿もノルディでは引き出せないものだった。
「だからアールに負けたと思った。私も含めレピアは皆の前では聖女でいなければならなかったのだから。」
だからこそ、身を引いた。
皆の期待というプレッシャーに常にさらされるレピアが素に戻って安心できる場が必要だと知っていた。
その場を作るのが自分ならどれだけよかったかなど今更言っても仕方がない。
聖女としてレピアを敬っていた自分にはアールのような対応はできなかったのだから。
アールは幼馴染の為に神殿に来た。
聖騎士として聖女をいやレピアを敬う気持ちがそもそもあまりなかったのかもしれないと思うとそんなアールに負けた自分が情けなくてたまらなかった。
そんなノルディの表情を読み取ったようにレピアは言葉を続ける。
「確かにアールの前で素直になれたし、楽しかった。でも私が愛しているのは…」
「愛している者が他にいるのか?」
アールの他にいる。
レピアはそう言おうとしているのか?
誰だ?私の知っている者か?
ノルディの顔がこわばった。
だから避けられていたのか…
避けられていたのか理由がわかったが、ノルディはこれ以上レピアの言葉を聞きたくはなかった。
ノルディはレピアから顔を背け目を逸らそうとしたが、レピアがそれを許さなかった。
レピアが両手でノルディの顔を押さえ自分から目を背けられないように固定した。
「あなたよ、ノルディ。」
レピアはそれでも目を逸らすノルディを真っ直ぐに見つめて言った。
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