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第1章

空気が澄んでいる(神様視点)

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命の泉‥神々が存在する場所。
その場所に私はいる。

神は穢れを嫌う。
それなのに、神は人がうみ出す穢れをどうしても吸収してしまう。
だからこそ、聖女と結ばれ穢れを浄化してもらう必要があるのだ。

だが、私はそれができない。
聖女といえ人だ。
穢れはなくても負の感情は誰しも持つ。
その負すら私は受け付けないからだ。

私には聖女はいない。

他の神のように聖女と結ばれる事もなく、人の穢れを増やし続ける。

人など愚かな生き物だ。
欲に限りがない。
間違いを犯し、繰り返す。
いつまでも学ぶ事をしない。
そんな人につくづく愛想は尽きている。

そろそろ限界か‥
私の中の穢れが増えすぎている。
私が穢れにのまれれば、この世界は消滅する。

人のせいで人だけではなく、神も動物も植物も全て滅びる事は許されない。
そうなる前に人を減らし、穢れが溜まるのを抑えていた。

何度も何度も‥
穢れの森も作り、視覚的にもわからせているのに。

命の泉に入り浄化しているが、全く間に合わない。
ここから動く事も息を吸う事もできないくらいに穢れが溜まっている。

また、人を減らさねばならない。
もう人を滅ぼしてしまおうか。
そうすれば、もう穢れが溜まることはない。

そう、考えていた時、私に何かが触れた。
泉がパァと光った瞬間、周囲の空気から穢れが消えた。
空気が澄んでいる。

息が吸える‥

チャプンッ
泉の中で手を動かして手のひらを見る。

さっき、私に触れたものが人の手であるとわかるまでに少し時間がかかった。

私に初めて触れた人の手。
人に近づく事すらできなかったのに。

皆が言っていた聖女。
私はそう直感した。

神々を浄化する唯一の存在。

私にはその存在がいなかったため、代わりに命の泉に入っていた。
聖女の浄化よりだいぶ劣る‥
そのため、人への裁きを遅らせる事しかできていなかった。

私に触れた手は人だが、負の感情がない。
ありえない‥

泉を通じてその子と繋がる。
繋がってわかった。
負の感情がないのではなく、浄化の力で自分の負の感情も全て浄化しているのだ。

心が強く澄んでいる‥
人でありながら人ではない。

私に少し触れただけで周囲の穢れが減った。
あの子と結ばれる事ができたのなら‥

「私のかわいい子‥」
すぐに繋がりは切れてしまう。

人との繋がりが切れただけで心はこんなに苦しいのか?

あの子の神になりたい。
私を受け入れて欲しい。
結ばれたい。
穢れを浄化してくれただけではない。
その子の出す強く優しい光は私の心に広がり、人の穢れ以外のあたたかな感情を私に教えてくれる。

人への裁きはもう少し様子を見よう‥

初めて欲ができた。
誰かを欲しいと思った。
人の持つ欲と変わらないのかもしれない。
この私があり得ない‥

「マークバルダはいるか!」
人との交渉を任せている守りの神を呼ぶ。
人の世界に行くために。
穢れが多く、私が出向く事はなかった。
人と会う事はなかった。

だが、今は違う。
少しくらい無理をしても、あの子のいるところに行きたい。
空気が浄化された今ならいけるはずだ。

私のかわいい子‥
早く会いたい。

まだ見ぬ聖女を思い浮かべて胸が高鳴るのを感じた。








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