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第1章
リーナはついていけない
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「リーナさん午後からも時間がありますか?」
「はい。」
「ではここに来てください。」
無表情のまま、ラリーン先生は私に言う。
ラリーン先生は高齢であるはずだが、背筋は伸び、白髪交じりの髪はきつくまとめられていてピリッとした空気を持つ。
元聖女で聖女教育を任されており、厳しいと令嬢達は噂していた。
部屋の中では令嬢達のクスクスと笑う声が私の耳にも届いて顔がカァーと熱くなる。
リーナは読み書きや一般教養を令嬢達と別の授業を受けていた。
今日、初めて一緒に聖女の勉強を行い、聖女の聖典を読むことができない事が判明した。
街の平民は一応読み書きは習うため、平民の聖女候補達もでてきており、ラリーンも読み書きは皆できるのが当たり前に思っていた。
ラリーンは聖女に関する教育のみに関わるため、リーナの教育の程度を知らなかったのだ。
だが、リーナが育ったのは貧しい小さな村だ。
読み書きができなくても困らなかったので、あまり必要性を感じていなかった。
読み書きを習い、神様と文通はしていたが、専門的な言葉が多い聖典を読む事は難しかった。
「字の読み書きもできないなんて恥ずかしくないのかしら?」
「同じ部屋にいるのも嫌だわ。」
令嬢がコソコソと話しているのが聞こえる。
ラリーン先生がそんな令嬢の方をキッと睨むと慌てて口をつぐんだ。
「リーナさん、午後も一緒に勉強をすすめます。今は話を聞くだけでよいわ。」
「はい、お願いします。」
私は頭を下げる。
アリーティナはその様子をクスクス笑って眺めていた。
アリーティナは自分より目立つ者を許さない。
この世界の中心は自分だ。
この国の宝だ。
そう言われて育った。
何も持たないみすぼらしい平民が自分より目立つのは許せない。
リーナの存在自体にアリーティナは嫌悪感を持っていた。
周囲の令嬢はアリーティナをたてていた。
それが貴族社会で生き延びる方法だから。
だが、リーナにはその暗黙のルールがわからない。
貴族の空気を読まないリーナにアリーティナは苛つきが大きくなっていく。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
ラリーン先生の午後からの補習の際に頭を下げて謝った。
「気にしなくても構いません。あなた方を立派な聖女にするのが私の役目です。」
ラリーン先生は言う。
「‥聖女になるのは無理かもしれません。すいません。」
私はラリーン先生の時間を無駄にしてしまうような気がして謝った。
ラリーン先生は表情を変えない。
「聖女にとって一番大切なのは読み書きができる事ではありません。聖典を読んでもらいたいので教えますが。」
「はい。」
「心を強く持ちなさい。神は穢れを嫌います。あなたのその劣等感が大きくなれば、穢れにつながる。」
「はい。」
ラリーン先生の顔を見れず、私は下を向いたまま、返事を繰り返していた。
私がラリーン先生に迷惑かけている事が申し訳なかった。
「リーナさん、あなたはあなたらしくいなさい。他の令嬢の言うことなど気にしなくてもいい。どちらか言えば彼女達の方が心配よ。」
フーというため息が聞こえる。
「えっ?」
ラリーン先生の方を見た。
「あなたは気にしなくてもいい。始めましょう。」
ラリーン先生はキリッとした口調で授業を始めた。
「はい。」
「ではここに来てください。」
無表情のまま、ラリーン先生は私に言う。
ラリーン先生は高齢であるはずだが、背筋は伸び、白髪交じりの髪はきつくまとめられていてピリッとした空気を持つ。
元聖女で聖女教育を任されており、厳しいと令嬢達は噂していた。
部屋の中では令嬢達のクスクスと笑う声が私の耳にも届いて顔がカァーと熱くなる。
リーナは読み書きや一般教養を令嬢達と別の授業を受けていた。
今日、初めて一緒に聖女の勉強を行い、聖女の聖典を読むことができない事が判明した。
街の平民は一応読み書きは習うため、平民の聖女候補達もでてきており、ラリーンも読み書きは皆できるのが当たり前に思っていた。
ラリーンは聖女に関する教育のみに関わるため、リーナの教育の程度を知らなかったのだ。
だが、リーナが育ったのは貧しい小さな村だ。
読み書きができなくても困らなかったので、あまり必要性を感じていなかった。
読み書きを習い、神様と文通はしていたが、専門的な言葉が多い聖典を読む事は難しかった。
「字の読み書きもできないなんて恥ずかしくないのかしら?」
「同じ部屋にいるのも嫌だわ。」
令嬢がコソコソと話しているのが聞こえる。
ラリーン先生がそんな令嬢の方をキッと睨むと慌てて口をつぐんだ。
「リーナさん、午後も一緒に勉強をすすめます。今は話を聞くだけでよいわ。」
「はい、お願いします。」
私は頭を下げる。
アリーティナはその様子をクスクス笑って眺めていた。
アリーティナは自分より目立つ者を許さない。
この世界の中心は自分だ。
この国の宝だ。
そう言われて育った。
何も持たないみすぼらしい平民が自分より目立つのは許せない。
リーナの存在自体にアリーティナは嫌悪感を持っていた。
周囲の令嬢はアリーティナをたてていた。
それが貴族社会で生き延びる方法だから。
だが、リーナにはその暗黙のルールがわからない。
貴族の空気を読まないリーナにアリーティナは苛つきが大きくなっていく。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
ラリーン先生の午後からの補習の際に頭を下げて謝った。
「気にしなくても構いません。あなた方を立派な聖女にするのが私の役目です。」
ラリーン先生は言う。
「‥聖女になるのは無理かもしれません。すいません。」
私はラリーン先生の時間を無駄にしてしまうような気がして謝った。
ラリーン先生は表情を変えない。
「聖女にとって一番大切なのは読み書きができる事ではありません。聖典を読んでもらいたいので教えますが。」
「はい。」
「心を強く持ちなさい。神は穢れを嫌います。あなたのその劣等感が大きくなれば、穢れにつながる。」
「はい。」
ラリーン先生の顔を見れず、私は下を向いたまま、返事を繰り返していた。
私がラリーン先生に迷惑かけている事が申し訳なかった。
「リーナさん、あなたはあなたらしくいなさい。他の令嬢の言うことなど気にしなくてもいい。どちらか言えば彼女達の方が心配よ。」
フーというため息が聞こえる。
「えっ?」
ラリーン先生の方を見た。
「あなたは気にしなくてもいい。始めましょう。」
ラリーン先生はキリッとした口調で授業を始めた。
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