【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第1章

リーナに忍び寄る罠

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「本当に大丈夫ですか?」
ラリーン先生は心配そうに聞く。もうその言葉をリーナは何度も聞いていた。

「大丈夫ですよ。心配せずに行ってください。もう、あれから半年も過ぎてるんですよ。みんな心配しすぎです。」
リーナは苦笑する。

アリーティナは療養のため、実家に戻っていたし、過去最高の聖女になるというリーナの噂が神殿内で浸透していたため、リーナに嫌がらせをする令嬢はいなくなった。
いや、完全に関わってもらえなくなったと言った方がいいかもしれない。
マークバルダや他の神が関わっていたと他の聖女候補達にも伝わっており、触らぬ神に祟りなし状態になったのだ。
そこから半年も経っているのだ、何か起こるとは思えなかった。

ヴォルティスは相変わらず過保護だったが、そのヴォルティスですらリーナを優先できない日があった。
満月の前後3日は命の泉から離れられなくなるらしい。
詳しい理由はわからないが、会えなくなる前の日、なかなか帰らない神様はマークバルダ様に引きずられるように渋々戻っていくのでよほど重要な事なのだろうとリーナもわかっていた。

そんな、神様がいない日は必ずマークバルダ様がいてくれたのだが、それができない状況となりラリーン先生は心配していた。
聖女の儀まで後半年に迫り、マークバルダ様とラリーン先生は事前準備の為に数日リーナの元に来れなくなるのだ。

私が無茶をしすぎたから信用がないのはわかっている。
だが、皆が忙しいのを知っているので申し訳ない思いでいっぱいだった。

「それが私の役目だ。」というマークバルダ様と「あなたが聖女になってくれればいい。」と笑うラリーン先生、そして「私が担当神官ですから、当たり前ですよ。」とニコニコ笑うラハールさん‥神様に至っては「私のかわいい子が最優先だ!」と言い切る。
皆、優しすぎる。だからこそ、申し訳ないのだ。

だが、実際に神様やマークバルダ様、ラリーン先生と一日会えなくなるだけで胸の中にポッカリ穴があいたようで寂しくなった。
神様やラリーン先生達がどれだけ大切な存在となっているのかわかった。

毎日ずっと一緒にいたのだから、急にいないと寂しいのは当たり前、皆忙しいのだと自分に言い聞かせる。
散々迷惑をかけたリーナがわがままを言う訳にはいかなかった。

「私のかわいい子、会いたかった。」そう言い、優しい視線を向ける神様に今度あった時に感謝を言おう。
いつも助けてくれるマークバルダさまとラリーン先生にも。




そんな神様もラリーン先生もいない日にリーナに話しかける人物がいた。廊下ですれ違った貴族が声をかけてきたのだ。

人と関わる際にはラハールを必ず呼ぶ様に言われていたが、ラハールは朝の祈りで不在であり、雑談程度なら呼ぶ必要はないとリーナは判断した。
過去最高の聖女候補という噂は貴族の間でも流れているらしく、こうして話しかけてくる貴族も少なくなかったため、リーナも警戒していなかった。

リーナは話しかけてきた貴族がレフーガン公爵でアリーティナの父であると知らなかった。平民がそもそも公爵と関わる機会がないので当たり前なのだが。

実際にリーナとレフーガン公爵が話したのは挨拶と神殿での様子についてだけだった。

「それでは聖女候補様、また今度ゆっくり話しましょう。」
そう言ったレフーガン公爵はニヤッとした笑った。微笑みとも違う嫌な笑いで、リーナはゾクリとした。

そして、レフーガン公爵はすれ違いざまにリーナの耳元で囁いた。

その囁きを聞いたリーナは目を見開き、その場から動けなくなった。リーナの顔は真っ青となり、全身が震えていた。

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