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第1章
リーナに忍び寄る罠2
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朝の祈りが終わってラハールが部屋に戻ると聖女候補の勉強時間であるリーナが扉の前で立っていた。
「リーナ様?」
リーナの真っ青な顔をして、震えていた。
昨日までは普通だった。何があったのだ?ラハールには思い当たる事がなかった。
「どうされたのですか?顔色が真っ青ですよ。医者を呼びましょうか?」
ラハールは心配そうに覗き込んだ。
リーナは震えながら言葉を発する。
「ラハールさん、実家まで‥いえ、私の村まで連れていってください。」
リーナの低い声にラハールは驚いた。
「何があったのですか?」
「言えない、言ったら本当だと認めてしまう‥きっとうそだ。そうに決まってる‥」
リーナはガタガタと震えるだけで理由を言わず、自分に言い聞かせるように小さな声を発していた。
リーナは何かに怯えている、そんな様子だった。
今問い詰めているのは無理だと悟ったラハールはリーナの望みを叶えることにした。
担当神官は聖女の心の安寧を保つ事も役目の一つだ。
この状態はホームシックなんてものではない。
原因がわからない。村に行けばこうなった原因がわかるはずだとラハールは考えた。
「神殿の許可を取らなければなりません。少しお待ちください。」
ラハールは何も聞かず、神殿の許可を取りに行く。
ラハールの部屋で椅子に腰かけたリーナは顔色を失い、ただガタガタと震えていた。
神殿をでる許可をとるのには時間がかかるのにリーナ様の都合というと許可はすぐにおりた。
いつもあるはずの馬車は出払っていたが、ラハールは乗馬もできたため、馬を走らせることにした。馬車よりもずっと早く着くので好都合だった。
神もラリーンもいないタイミングで村に帰る事になる。
護衛もすぐに見つかった。守りの神マークバルダよりは劣るが、リーナを守れる準備が整う。
そう、ラハールはスムーズに事が運びすぎている事に気づかねばいけなかった。普段と違う違和感に。
それが公爵が張り巡らせた罠であり、知らず知らずにラハールはリーナを連れ出してしまう。
リーナは神に好かれただけの聖女候補ではない。
ヴォルティスという最高神の穢れを浄化できる唯一の聖女候補だ。
ラリーン達と十分に信頼関係を築けていなかったラハールにそれらの説明はされていなかった。
ラハールはただ神殿の悪意からリーナを護ろうとしていただけだったため、疑わなかったのだ。
リーナを護り抜かねばならなかった、神殿から出してはいけなかった。人々のためにも。
レフーガン公爵が囁いた言葉‥
「お前のようなクズかこんなところにいるからお前の家族も村人も全て死んだんだ。恨むなら自分を恨め。アリーティナを追い詰めた自分をな。」
冷たい視線がリーナに向けられる。
なぜ、アリーティナが出てくるの?この人はだれ?
皆が死んだってどういう事?
そんな訳ない、無事だよね‥お母さんもルートもネマも村の人たちも。
全てたまたま起こったのではない。
レフーガン公爵に仕掛けられた巧妙な罠だった。
ヴォルティスの不在時にマークバルダ、ラリーンが離れなくてはならなかった事も、ラハールがいない時を狙いリーナに近づいたのも、神殿の許可がすぐに取れたのも馬車がなかったのも、護衛がすぐに見つかったのも。
異変に気付いた神が対応する前にリーナは村に到着する必要があった。
そこには聖女の希望を優先する神官の行動パターンやラハールの乗馬経験、リーナの家族との関係性なども全て含まれ計画されていた。
この半年かけ徹底的に調べ上げ、ここまでの計画を立てた公爵の執念はすごかった。
「これから何が起こるのか楽しみだ。」
声高らかに笑う公爵は今晩はお祝いをしようと決めていた。
「リーナ様?」
リーナの真っ青な顔をして、震えていた。
昨日までは普通だった。何があったのだ?ラハールには思い当たる事がなかった。
「どうされたのですか?顔色が真っ青ですよ。医者を呼びましょうか?」
ラハールは心配そうに覗き込んだ。
リーナは震えながら言葉を発する。
「ラハールさん、実家まで‥いえ、私の村まで連れていってください。」
リーナの低い声にラハールは驚いた。
「何があったのですか?」
「言えない、言ったら本当だと認めてしまう‥きっとうそだ。そうに決まってる‥」
リーナはガタガタと震えるだけで理由を言わず、自分に言い聞かせるように小さな声を発していた。
リーナは何かに怯えている、そんな様子だった。
今問い詰めているのは無理だと悟ったラハールはリーナの望みを叶えることにした。
担当神官は聖女の心の安寧を保つ事も役目の一つだ。
この状態はホームシックなんてものではない。
原因がわからない。村に行けばこうなった原因がわかるはずだとラハールは考えた。
「神殿の許可を取らなければなりません。少しお待ちください。」
ラハールは何も聞かず、神殿の許可を取りに行く。
ラハールの部屋で椅子に腰かけたリーナは顔色を失い、ただガタガタと震えていた。
神殿をでる許可をとるのには時間がかかるのにリーナ様の都合というと許可はすぐにおりた。
いつもあるはずの馬車は出払っていたが、ラハールは乗馬もできたため、馬を走らせることにした。馬車よりもずっと早く着くので好都合だった。
神もラリーンもいないタイミングで村に帰る事になる。
護衛もすぐに見つかった。守りの神マークバルダよりは劣るが、リーナを守れる準備が整う。
そう、ラハールはスムーズに事が運びすぎている事に気づかねばいけなかった。普段と違う違和感に。
それが公爵が張り巡らせた罠であり、知らず知らずにラハールはリーナを連れ出してしまう。
リーナは神に好かれただけの聖女候補ではない。
ヴォルティスという最高神の穢れを浄化できる唯一の聖女候補だ。
ラリーン達と十分に信頼関係を築けていなかったラハールにそれらの説明はされていなかった。
ラハールはただ神殿の悪意からリーナを護ろうとしていただけだったため、疑わなかったのだ。
リーナを護り抜かねばならなかった、神殿から出してはいけなかった。人々のためにも。
レフーガン公爵が囁いた言葉‥
「お前のようなクズかこんなところにいるからお前の家族も村人も全て死んだんだ。恨むなら自分を恨め。アリーティナを追い詰めた自分をな。」
冷たい視線がリーナに向けられる。
なぜ、アリーティナが出てくるの?この人はだれ?
皆が死んだってどういう事?
そんな訳ない、無事だよね‥お母さんもルートもネマも村の人たちも。
全てたまたま起こったのではない。
レフーガン公爵に仕掛けられた巧妙な罠だった。
ヴォルティスの不在時にマークバルダ、ラリーンが離れなくてはならなかった事も、ラハールがいない時を狙いリーナに近づいたのも、神殿の許可がすぐに取れたのも馬車がなかったのも、護衛がすぐに見つかったのも。
異変に気付いた神が対応する前にリーナは村に到着する必要があった。
そこには聖女の希望を優先する神官の行動パターンやラハールの乗馬経験、リーナの家族との関係性なども全て含まれ計画されていた。
この半年かけ徹底的に調べ上げ、ここまでの計画を立てた公爵の執念はすごかった。
「これから何が起こるのか楽しみだ。」
声高らかに笑う公爵は今晩はお祝いをしようと決めていた。
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