【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第2章

ヴォルティス様の望み(マークバルダ視点)

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命の泉にヴォルティスは浮かんでいた。
ボンヤリと空を見上げる様子は生気がなく、神々は遠くからその様子を見守るしかなかった。

神々の関心はヴォルティスの裁きがいつあるのかだった。
「もうすぐ人への裁きを行うのだろうか‥」
人への裁きがあれば、神々へも影響が出る。人の世界や死に関わる神は裁きの後、しばらくは多忙を極める為、準備が必要だが‥
いつも前もってヴォルティスから指示があるのに今回はない。
まだ、裁きはないのだろうか‥だが、ヴォルティス様の様子を見る限り限界は近づいているのは間違いない。
神々は裁きが気になってはいたが、ヴォルティスが神気を爆発させた事もあり誰も近づく事ができなかった。


もう、どのくらいかわいい子に会っていないだろう。
ヴォルティスはチャプンと水音を立てて両手を挙げてみる。
まだ、手は動かせるし、息は吸える。
まだ、待てる‥
かわいい子がここに来てくれる。会いに来てくれる。それまでは何とか頑張らなければ‥

ヴォルティスは賭けの事もリーナを自ら処刑すると言った事も忘れ去っていた。
ただ、かわいい子に会いたいという想いだけに囚われ、人への裁きなど考えられる状況ではなかった。
完全にリーナ欠乏症に陥ったヴォルティスはリーナの闇落ちなど大した問題ではなくなり、それどころか自分の役割や責任、この世が滅びる事すらどうでもよくなっていた。



マークバルダは命の泉にリーナ達を入れるよう準備に来ていてヴォルティスの状況を知った。
時間があればヴォルティス様が現実を少しずつでも受け入れられると思ったのは甘かった。

「どうしたらいいのだ?」

普段独り言など言わないマークバルダだが、誰かに助けてもらいたくて無意識に声を出してしまった。

今ここに聖女候補が来たらまずい。穢れをもつ聖女候補が命の泉に来るだけでもこの世界が穢れるリスクはあるのに、ヴォルティス様が我慢しきれず聖女候補に触れたりなんかしたら‥
だが、聖女候補が来なければこのまま、このヴォルティス様と共に世界は終わる。きっと聖女候補を待つ事を優先し、人への裁きなどしないのだから‥

マークバルダは頭を抱える。
どの道を選んでもいい未来は見えてこない。

そこまで考えてマークバルダはふと立ち止まる。
いい未来?それは誰にとってだ?

聖女候補の処刑場でのヴォルティス様の言葉‥
「もう全て終わった事だ。私がかわいい子を望む事はそんなに難しい事だったか?唯一の望みすら私は叶えられないのか?」

ヴォルティス様はもう終わったと言った。唯一の望みすら叶えられないと苦しそうに漏らした。
ずっと望みを我慢して生きてきたのだろうか。
自分達が生き残るのがいい未来というのならヴォルティス様をないがしろにしすぎている。最高神と崇めながら自分達の為にヴォルティス様を犠牲にする‥人がやっている事と何が違う?

もう聖女候補が来てしまう。早くどうするべきか結論を出さなければ‥
焦る気持ちと相反する二つの考えで頭の中は混乱して考えがまとまらない。

「マークバルダ、だから言っただろう。全ては守れない、何かを選ばなければいけないと。」

先ほどのマークバルダの独り言に答えるように後ろから声が聞こえた。
とても懐かしい優しい声‥もう聞くことはないと思っていたその声が聞こえてきた方に慌てて向いた。

「久しぶりだな、マークバルダ。」

そこに立って微笑んでいたのはかつての親友。
優しく皆を照らし希望を与える存在。
ここにはもういるはずのない希望の神だった。

「キース‥」

どうしてここに‥今まで何をしていた‥
聞きたい事はたくさんあるのに声にならなかった。

キースは真っ直ぐにマークバルダを見据え真剣な顔で問う。

「お前は誰を優先して守る?」

すぐに答えられない。
その返答次第では守れないものが出てくる。
ヴォルティス様、聖女候補、ラリーン、神々に人々‥
全て大切な守りたい者達だ。
だが‥

「ヴォルティス様だ。」

ヴォルティス様が生きたいと自ら思わなければ、全ての道は滅びに向かう。それはヴォルティス様のせいではないし、今まで私達が甘え続けた結果だ。
ヴォルティス様に少しの間だけでも望みを叶えて欲しい。その想いを守りたい。

キースは少し驚いたようにこちらを見た。

「そうか。お前がそう答えるとは思わなかった。」
少し嬉しそうにキースは笑った。

「意地悪な質問だったな。だが、全てを守りたいなど綺麗事だ。全ての者に希望を与えるのが無理なようにな。」

誰かの希望は他の者にとってはそうでない事もある。
キースも希望の神として人々に希望を与え幸せに導くと崇められてはいたが、全ての人の望みを叶えられる訳ではなかった。

キースが最終的に選んだのは聖女マリーの望みだった。
当時、神を捨ててまで聖女の希望を叶えようたのを理解できなかったが、今なら少しわかる気がする。

「マークバルダ、お前が心配している事にはならない。大丈夫だ。」
キースは力強く笑う。
皆を安心させ希望を与える昔のままの笑顔のままで‥
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