【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

文字の大きさ
82 / 87
第3章

ルキアの提案

しおりを挟む
リーナとヴォルティスはルキアに呼び出されていた。
ヴォルティスはもちろん、ヴォルティスからルキアとのやりとりを聞いていたリーナはこの呼び出しがどんな意味の持つものかわかっていた。

ヴォルティス様と一緒にいられる時間は終わりかもしれない。リーナは覚悟を決めていた。
 


自分が死ねば、ヴォルティス様が死ぬ。
ヴォルティス様の想いを知ったリーナは何とか考えを変えようとした。他の聖女と絆を結ばなくてよくなるが、それ以上に自分のせいで死ぬなんて嫌だった。

だけど、ヴォルティス様の決意は固かった。

「リーナのいない世界では生きていけない。一緒に眠りたい。」
手を震わしながら私を抱きしめるヴォルティス様を私は拒否する事はできなかった。




ルキアが私を睨みつける。主である以上、力をぶつけられる事はないが、もし絆がなければ消し去りたいといった目をしている。
私もそれを受け入れている。
ルキアにヴォルティス様を渡せないが、ルキアの気持ちもよくわかるからだ。

ルキアが口を開く。
「結論から言おう。ヴォルティスが死ぬのは認められない。永遠に生きてもらおう。」
ルキアのその言葉を受け、ヴォルティス様の中で絶望感が広がったのがわかった。

顔が青ざめ、立っているのもやっとのヴォルティス様を必死で支える。

「ルキア、許してくれ。私はリーナのいなくなるのは耐えられないのだ。」
ヴォルティス様は必死にルキアに懇願した。
最高神としての威厳など感じられないヴォルティス様の姿にルキアが苛立ちを感じているのがわかる。

「‥だから、リーナがいなくならなければ良いのだろう。」

「‥どういう事だ?」
ヴォルティス様はルキアの言葉に反応した。

私がいなくならなければいい?そんなのは物理的に不可能だ。

ルキアは詳しく説明するつもりなどないらしい。ヴォルティス様の前でもイライラしている様子を隠すこともしない。
ヴォルティス様と話をし、吹っ切れたのかもしれない。
「言葉の通りだ。リーナが永遠にお前とともに生きる。それならば良いだろう。」
嫌々といったようにルキアは言いすてる。

「何をいう。そんな事はできない。ひとの命は有限だ。」
何をバカなと言わんばかりにヴォルティス様は反論した。

そんなヴォルティス様を無視してルキアは話を進める。

「できるとしたら望むか?」

ヴォルティス様は少し考えてから口を開く。
「‥ああ。だが‥」

ヴォルティス様が話しているのにルキアは私の方を向き、話し出す。
「お前はどうだ?といってもヴォルティスが生きるのが優先だからお前に拒否権などはないがな。」

「私は‥」
なんて答えたらいいのだろう。
永遠を生きるなど考えた事もない。
ヴォルティス様の側にずっといられるのは嬉しいが、そんな長い年月を生きるなんてイメージすらできない。

「お前の望みはなんだ?」
ヴォルティス様は私の永遠の命と何を引き換えにするのかをルキアに問いかける。
もう私が永遠に生きるのが前提で話は進んでいく。

「私とずっといてほしい。」
ルキアの言葉にヴォルティス様は固まった。

「それは‥」
ヴォルティス様はすぐに返答する事ができない。私が生きていても永遠に会えないなら永遠を生きる意味がどこにあるのか。
死ぬ事もなければ一緒に転生もできず、永遠に離れ離れとなってしまう。

そんなヴォルティス様の様子を見てルキアはため息をつく。

「言ってみただけだ、気にするな。私ではヴォルティスを本当の意味では生かせない。ヴォルティスがただ息をしているだけの状態も見たくないしな。」
ルキアは辛そうに眉間にシワを寄せる。

「ルキア‥」
ルキアの気持ちも十分に知りながら、その気持ちに答えられないヴォルティス様はルキアの言葉になんて返して良いのかわからないようだ。

辛そうに悲しそうに、それでも笑おうとするルキア。
「一年、いや十年に一度でもいい。私に会いにきて欲しい。ヴォルティスが私の事だけを考える時間を私にくれ。」
ルキアの言葉に胸が締め付けられる。

こんなにもヴォルティス様を想っているルキアから奪ってしまう。想いは負けないとしても長さでいうとルキアの方がずっと長いのだ。
私が想像もできないくらい長い間、ヴォルティス様だけを想ってきたルキア。
どんな想いでその言葉を言ったのか。

「何があろうと一日一度は会いに行く。約束だ。」
ヴォルティス様はすぐに返答した。

「ははっ。一日一度は多いのではないか?」
ルキアは笑っているが、目から涙がこぼれた。

「私からルキアへ返す恩には全く足りないがな。」

「いや、十分だ。ありがとう。」


私の知らないヴォルティス様とルキアの絆。
自分勝手かもしれないが、ずっと切らさないでほしい。



「リーナを永久保存とする。ラリーンで安全は確認されているから心配はするな。」

ラリーン先生がその行為を受け入れた理由を知り、私は青ざめる。
自分が知らないところで私の為にラリーンに命の危機があったなんて‥

「女神達も呼んである。人は時間をおけばしょうもない事を考えるだろう。さっさと終わらせるぞ。」

ルキアはその場を仕切り、有無を言わさず私は永遠の命を得る運びとなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

元・聖女ですが、旦那様の言動が謎すぎて毎日が試練です

おてんば松尾
恋愛
かつて“奇跡の聖女”と呼ばれたステファニー・シュタインは、光の魔力で人々を癒す使命を背負い、王命によって公爵レイモンドと政略結婚を果たす。だが、奉仕の日々に心はすり減り、愛なき結婚生活はすれ違いの連続だった。 彼女は忘れられた灯台で不思議な灯台守と出会う。彼の魔法によって、ステファニーは聖女としての力と記憶を失うことを選ぶ。過去も夫も忘れた彼女は、まるで別人のように新しい人生を歩み始めるが―― 他サイトで完結している作品を上げます。 よろしければお読みください。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...