わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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ルーマン王都に戻ったミルアージュは待ち構えていたクリストファーに捕まり、1週間は部屋から出られなかった。

やっと1週間ぶりに部屋から出ることができたミルアージュは国王のところに遠征の報告に向かった。

「アレンベールの件の報告は受けている。この1週間も含めてお疲れ様。」
国王は1週間も報告が遅れた事を怒りもせず、ミルアージュの労をねぎらった。

クリストファーに閉じ込められていたのが国王の耳にも入っていたのかと思うと恥ずかしさが込み上げてくる。

国王は全く気にしていないように話を続けた。

「アンロックへも感謝の書状を送っている。アレンベールは一応ルーマン王国の所有の領土という事になっているからな。」

アムーラ教国を捨てて造られたアレンベールへの介入はルーマンもアンロックもできない。
各王家とアレンベールの間に不可侵と保護に関して条約が結ばれている。
それが王家の契約なのだ。
だからこそ、ここまで介入が遅れる結果になってしまったのも否めない。

「アレンベールへの介入は続けていきますか?」
ミルアージュは国王に聞いた。

アムーラ教の教祖のいる領地だ。
その存在が知られれば争いの種になる。
これ以上アレンベールへの支援は皆に疑いの目を向けてしまう。

「だから、アンロックにも助けを求めたのだろう?この国で一領地でしかないアレンベールだけを特別視するわけにはいかないから。」

現アンロック王である義弟レンドランドは王家の契約を知っているため応じたが、アンロックの貴族達はミルアージュの懇願を聞いたふりをし、ルーマンに恩を売ったと思っている。

それを理解した上で国王も感謝の書状をアンロックに出してくれたのだ。

「勝手な事をして申し訳ありません。」
ミルアージュは頭を下げた。

「構わない。アレンベールに関してミルアージュ妃に任せていたからな。私が感謝を伝えるくらい何でもない。」

国王はそう言って笑ってくれたが、自領の支援を他国に頼むなど、同盟国という立場が崩れかねないやりとりだった。
レンドランドがそんな事をさせないと思うからこそ、ミルアージュはアンロックに依頼する事にしたのだ。

「今回、ミルアージュ妃の手腕はなかなかであったと聞いている。」
ミルアージュは顔をしかめる。

手腕…私は何もしていない。
ミルアージュは皆から散々陰口を叩かれていたのを知っているし、弁解するつもりもなく放置した。

隊長やアルト、第三部隊の隊員、そしてアンロックの皆が頑張った結果だ。
それをミルアージュは見ていただけだ。

誰がミルアージュの手腕だと言ったのだろう。

「皆そう言っていたぞ。特にアルトは真実を知っているのだろう。ミルアージュ妃を讃える発言を繰り返していた。マカラック様からもミルアージュ妃に救われたとの書状を受けている。」
国王はミルアージュに優しく微笑みかける。

「ミルアージュ妃に頼みがある。国王からの命令の方が良いかもしれない。」

「何でしょうか?」

「このままだとこの国はもう長くは持たないとわかっているだろう?」
いきなり国王はこの国の行く先について話し出した。

「…はい。」
ミルアージュは素直に答えた。
嘘を言ったところで現実は変わらない。

「ハハッ、正直だな。クリストファーが変革しようとしているのは知っているな?」

ミルアージュはうなずいた。

「どう変革していくかクリストファーは決めかねている。あいつは優秀なくせにミルアージュ妃が絡むと崩れる。どうするべきかわかっているのに、それでもミルアージュ妃を優先させたい奴だ。」

国王は苦笑いをした。
国王が何を言いたいのかミルアージュもわかってきた。
クリストファーの変革の邪魔をしているのがミルアージュだと言いたいのだ。

「勘違いをするな。身を引けと言っているわけではない。あいつはミルアージュ妃がいなければ、何の役にも立たない。だが、ミルアージュ妃が絡まなければ優秀なんだ…」

国王はミルアージュが絡まなければと2回も言った。

「そんな事は…」
流石にクリストファーも王太子だ。そんな事はあるはずはない…とミルアージュも思いたいが、そう思えない場面も多々見てきた。

「私はあれの父親だ。性格だって知り尽くしているつもりだ。」
国王からため息が漏れる。

まぁ、散々迷惑をかけられてきた国王だからこそ言える発言だろう。

「ミルアージュ妃にも変革の一部を担ってもらいたい。ルーマンの為に尽くしてはくれないか?貴族達の反発は受けるだろうがな。」

クリストファーを抜きにしてもミルアージュはアンロックの元王女だ。
他国の人間を国の中枢に入れるというのはかなり無理があると知っている。
それでもそれが必要だとルーマン国王は思っている…そういう真剣な目をしていた。

それほどにルーマンの内部は腐敗しているのだ。
平和過ぎた社会の危機感のなさや甘え…身分や貧富の差…

外の新しい風を入れたいという事なのだろう。

「かなり大変ですよ?」
改革ではなく変革…国を根本から変えるという事がどれほど困難なのか国王が一番よくわかっているはずだ。

「わかっているつもりだ。私が防波堤を担うからミルアージュ妃は思いっきり動いてくれて構わない。一番厄介なのはクリストファーだがな。」
クククッと国王は笑う。

そう言いながらも全てを自分がかぶるつもりだ。クリストファーならその後、よい国に変えてくれると信じて。

「気にするな。私は早く引退して王妃と二人隠居するのが夢なんだ。」

ニッコリと笑う国王に迷いはなかった。


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