わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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国王の執務室にはクリストファーや大臣達が皆集まっていた。
皆、長い時間協議していたのだろう。
疲れが顔に出ていた。

そこにミルアージュが現れた。

「ミア!なぜここに…」
クリストファーが焦るのが見える。
普段焦ることなどないクリストファーの様子にミルアージュは嫌な予感が当たっていた事がわかる。
 
「私が許可を出した。このままでは話が進まないからな。」
ミルアージュの代わりに国王が答えた。

ミルアージュからの伝言を受け取った国王は北の塔からミルアージュが出られるように許可を出していた。

人が通らない通路を使ったところを見るとミルアージュはまだ出てはいけない存在なのだとわかる。

「なぜ、そんな勝手なことをした!」
クリストファーは国王に向かい怒鳴った。

ミルアージュはそれを遮り、クリストファーに向かい話しかける。

「何があったの?」

「…」

クリストファーから話し出す気配はない。
ミルアージュに話したくない内容なのはわかるが、沈黙するなんてクリストファーらしくもない。

周りを見渡すが、国王も大臣達もミルアージュから視線を外している。クリストファーが言うべきだというように…

「アビーナル報告して。」
ミルアージュはクリストファーの補佐官アビーナルを指名した。

「えっ?私?」
指名されたアビーナルは驚いて目を大きく開けた。

アビーナルはなぜ自分がと心の中で叫びながら口を開く。

「レンラグスから来たのは使者ではなく第二王子でした。」

「第二王子…」
ミルアージュが小さく呟く。

ミルアージュは不敵に笑うレンラグス第二王子の顔が浮かんだ。

「クリストファー様の差し入れである事やミルアージュ様の部屋で起こった事を知っていました。内通者がいるのだと思われます。」

チラッとアビーナルはクリストファーを見た。
ミルアージュに関する話だ。
しかもクリストファーか言いたくない話…

言葉の選び方次第では後からまずい事になるのをアビーナル自身はよくわかっていた。

「第二王子は王太子が関わっている可能性が否定できないため、王太子妃の取り調べをルーマンでするべきでないと主張しています。そして…」

アビーナルに言わせない為かミルアージュが口を開く。

「つまり、私の引き渡しを要求したと。」

アビーナルはうなずく。

なるほどとミルアージュは全体を見渡す。

大義名分を掲げている以上ないがしろにはできない。
こんな事が知れ渡れば国内外からルーマン王家への不信感につながる。

ミルアージュの尋問をレンラグスに任せようという大臣とそれに反対するクリストファー。

きっと、全体像はそんな感じなのだろう。

「どうするべきだと思う?」
国王はミルアージュに聞いた。

なぜ当の本人に聞くのだと大臣は驚いた。
自分の不利になるような返答などしないだろう。

「レンラグスに私を引き渡すのはやめた方が良いと思われます。」
ミルアージュは口を開く。

ほれ見ろと言わんばかりに大臣達の視線は国王に向く。

国王はミルアージュを見つめたまま、動かない。

ミルアージュは一瞬視線をクリストファーに向けた。
昨日あんな話をしたばかりだ。
悲しそうな目でこちらを見るクリストファーに胸が痛まないわけではないけど…無視をした。

クリストファーは嫌な予感がしていた。
こんな話をミルアージュが知ったら絶対に自分を守る選択をしない。

クリストファーにとって最悪な状況になるのは目に見えている。

そんなミルアージュから一瞬向けられた申し訳なさそうな視線でさらにクリストファーの考えが間違っていないと確信する。

「引き渡す前にルーマンで私を処刑しましょう。死体の引き渡しは求めてこないでしょうから。」
ミルアージュは国王をまっすぐに見据えていった。

「はっ?処刑?」
大臣達の驚きを超えて唖然としている。

処刑?
引き渡しといっても尋問だけだ。
マリア王女を本当に毒殺に関与しているかもわからないのになぜこんな段階で処刑が必要になる?

「ミア!何を言っているのだ!」
クリストファーはミルアージュに駆け寄り、抱きついた。
背中に回している手が震えているのがミルアージュにはわかった。

「ごめんね、クリス。こんな結論しか出せなくて…」
クリストファーの耳元でささやくミルアージュの声は言い聞かせるように優しいものだった。
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