わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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ミルアージュ達が帰国してしばらくし、レンラグスからブランが到着した。

国王とクリストファーに会った後、ミルアージュのところに寄ったのだ。
マリアとムランドも同席していた。
どうしてもとマリアが頼み込んでいたためだったが、ミルアージュは許可を出した事を後悔していた。

「ミルアージュ、なんと言って良いのか…本当に申し訳なかった。」
ブランは苦痛に満ちた表情を浮かべながらミルアージュに頭を下げた。
顔には疲れがありありと出ている。

「あなたが謝ることではないわ。第一王子が全て悪いもの。王族でありながら自国を心中に巻き込むなんてね。」

ミルアージュは第一王子を心の底から軽蔑をし、その後処理に追われるブランに同情するしかなかった。

「いや、私が第一王子を追放にしたのだから責任はある。きちんと監視をつけておくべきだった。」
ブランは苦虫を噛み殺したような表情をし、ギリギリと歯を食いしばっている。

「この件が表沙汰にならないわ。レンラグスもルーマンも何もなかったの。」
ミルアージュはブランを慰めるように言ったが、そんなのなんの慰めにならない事はミルアージュ自身よくわかっていた。

「ルーマン国王にもそう言われた…感謝しかない。今レンラグスはその醜聞に耐えうるだけの力がないのだから。あなたがルーマン国王を無事に救出してくれたからだと聞いている。ありがとう。」

ブランはもう一度頭を下げた。
レンラグス王であり、兄であるブランが頭を下げる姿をマリアがどういう思いでみていたのかが気になりミルアージュはマリアをチラッと見た。
そのマリアが真っ青になっているのが見える。

「マリア王女?大丈夫?」

ガタガタと震えているマリアにミルアージュが近づいて手を握った。

「はい。大丈夫です。大切なお話をされていたのに邪魔をして申し訳ありません。」

「そんな事より体調が悪いなら侍医を呼びましょうか。」
ミルアージュは部屋の外に出していた侍女アンの元に向かおうとした。
そのミルアージュの手を両手でガシッとマリアは掴んだ。

「ミルアージュ様、呼ばなくても大丈夫です。兄を…第一王子の事を考え気持ちが悪くなっただけです。」

「そうね、あなたにとってはお兄様よね。配慮せず申し訳なかったわ。」

「違います!」
ミルアージュの言葉を聞き、マリアは大きな声を出した。
普段マリアはそんな声を出す事がなかったのだろう。その声にブランもムランドも驚きを隠せない様子だった。

「違います…私にランケットを飲むように命令したのは第一王子でした。その兄が起こした事…私との約束など守るつもりはなかったのだとわかりました。」

その言葉にブランとムランドがすぐに反応した。

「どういう事だ!なぜその様な命令に従った?」
ブランはマリアに詰め寄った。

「ブラン、落ち着いて。そんなに攻め立てたら何も話せないわ。マリア王女、ゆっくりでいいから話して。」

ミルアージュの言葉にマリアはコクっと頷いた。

「あれは前から渡されていたものでございます。私が死ねば全てが丸くおさまると。」

「丸くおさまる?」

「私が死ねば王女として後継者争いに巻き込まれることも売られるように嫁がされることもなくなると…そしてブランお兄様やムランドの安全は保証すると言われました。もう誰も失いたくなかったのです。」

ブランの命を狙っていた当人がそれを脅しにつかうなんて…

「マリア、どうしてそんな戯言に耳を傾けた!そんな訳でないだろう!」
ブランはマリアを抱きしめた。

「今ならわかります。ですが、あの時は私が毒で体調を崩すより死んだ方がレンラグスの為になると思ったのです。」

マリア王女はポタリと涙をこぼした。
確かに王女の体調不良よりは毒殺の方が交渉は有利になる。
どんな言い訳をしようとも留学で預かっている王女が暗殺されたのだから。

「私があんな事を頼んだのが悪かったんだ。ルーマンをいや、ミルアージュの協力をどうしても得たかった。浅はかだった。すまない。死ななくてよかった…」

ブランはマリアを力強く抱きしめた。
ブラン肩が震えているのが見える。
抱きしめられているマリア王女もそのブランの震えに気づいている。

マリアへ涙をポロポロこぼしながらの手を出した。

「お兄様、ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
マリアもブランを抱きしめ返した。
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